表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/10

3-4

「今日はここまでかな、みんなおつかれさま」


お日さまがかたむき始めたころ、レイさんが手をたたいてみんなの気を引いて言った。


「「ありがとうございました!!」」


 えらいなあ、みんなちゃんとはきはきあいさつができてる。あらら、ロクトくんだけはむっつり顔のままでミレイちゃんにこづかれちゃってるけど。あ、まどの外に村の人たちが何人か集まってきてる。そっか、この子たちのおむかえか。


「サナさん、少しは気分がはれましたか?」

「気分がはれたっていうか、なんていうか・・・いろいろといい機会になりました」


 子どもたちを外に連れ出しながら、レイさんはわたしにむかってふふっと笑った。

「お力になれたならよかった」


「レイちゃん、今日もおつかれさまねえ!!よかったら、このあとお茶によってかない?」

 あ、朝ここに来るときにレイさんに話しかけてくれたおばちゃん。

「レイちゃんのお客さんだったかしら?せっかくだしいっしょにどう?」

「あ、わたしは・・・」


 わたしがふりむいて、目があったそのとたん。話しかけてきたおばさんのにこにこと笑った顔から、その笑みが一瞬でひいた。まるで、水が一瞬で氷になって、はりつめるみたいに。


「あなた、その目の色は・・・」


 ・・・しまった!!日よけがさ・・・!!建物の中をふりかえると、日よけがさは座敷のさっきまですわってたところに転がったまま。


 体が地面から生えた木みたいだった。心臓はむねの中でこわいくらいにあばれてるのに、指一本さえしばりつけられたように動かない。まばたきもできないまま、驚いている女の人の顔を見る。


「レイちゃん、どういうこと?朝はお客だっていってたけど、この子は・・・」


 こっちに足をふみだした女の人からにげるみたいに、うつむいて必死に一歩後ずさろうとした、そのとき。


  

 バチーン!!



「なっ!?」


 顔を上げると、女の人は後ろによろけて、しりもちをつきそうになっているところだった。なんとかふみとどまったけど、その顔には、さっきにもましておどろきの色がうかんでいて。


 ――しまった!!と思ったときには、もうおそかった。


 ミレイちゃん、ロクトくんに他のこどもたちも、目を見開いたり、体をこわばらせたり。


 ――魔法で、指をふれずに人をつきとばしちゃった。人間の前で、魔法を見せてしまった。そのことに気づいたとたん、かくかくとかたがふるえていることにも気づく。


 サナさん、とレイさんの声が聞こえた気がしたけれど、考えるよりも先に体が動いた。


 それ以上女の人や子どもたちの顔を見ることはないまま、わたしの足が、地面をけって。気がつくとわたしは、夕ぐれの村をひたすらひとけのないほうに走りつづけていた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ