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第七話

「……はぁ、どうして私はこんなことをしているのでしょう」


 自分の選択に後悔はありません。

 後悔するくらいなら、子供を育てるなど無責任極まりないですから。

 ですが、その結果……アイリーン様とロバートを増長させるのでは、という懸念は残ります。

 私はアナスタシアを他人の家に放置するような真似をした二人を許しませんし、この子を渡す気もありません。

 あの二人がどういう手段でこの子を引き取りに来るのか、それとも来ないのか、ずっと警戒しているので滅入ってしまうのです。


 まぁ、警戒し続けて二年以上経っても来ないところを見ると本当にアナスタシアは捨てられてしまったと考えるのが普通でしょうが……。


 あれからロバートもアイリーン様も目撃情報はありません。

 この国で姿を現した理由は本当にアナスタシアが逃亡の邪魔になっただけなのかもしれないです。




「お母様、あのね……アルフォンス様が絵本を読んでくれたの……」


「あ、アルフォンス様……、申し訳ありません。お気を遣わせてしまったみたいで」


 今日はアルフォンス様がこちらに遊びに来られていました。

 彼はアナスタシアへの土産に絵本を持ってきて下さり、彼女に読み聞かせをして下さったのです。


「いえいえ、私も楽しかったので。アナは大きくなりましたね。もうそろそろ対策を考えた方が良いですよ」


「――っ!? た、対策ですか?」


「さすがにこんなに似ていれば私でも察しは付きます。誰のお子様なのか分かります」


 アナスタシアが誰の子なのかアルフォンス様は察しがついている?

 いや、それなら何故このようにこの子と接していられるのです? 許せないのが普通ではないでしょうか。


「私がアナと接していることが不思議ですか?」


「い、いえ、そういうわけでは……」


「多分、同じ理由ですよ。この子には何の罪もありません。それに……エリスさんが育てた子ですから」


 そうですね。アナスタシアには何も罪は無いのです。

 この子は素直で良い子です。本当に真っ直ぐに育ってくれました。


「エリスさん、いずれはアナスタシアの出自を誤魔化せなくなる日が来るはずです。デルバニア国王がアナの存在を許さない可能性があるのなら――」


 アルフォンス様はそこまで口にすると、ちょっと考える素振りをされました。

 一体、何を言おうとされてるのでしょうか。


「アルフォンス様……?」


「もしよろしければ、アナと一緒にベゼルーク王国に来ませんか? 私の婚約者として……」


「えっ……?」


 聞き間違いでしょうか。

 アルフォンス様が今、私と婚約したいと仰ったような……。


「私の妻になってくれませんか? エリスさんと同じ道を歩みたいのです」


「……少しだけ考えさせて下さい。すぐには決められませんから」


「失礼しました。もちろん、構いません。返事はどうあれ、私もアナのことは守りたいと思っていますから、何でも相談してください」


 この2年でアナスタシアへの愛情は膨らむばかりです。

 隣国へ行ったとしても、アイリーンやロバートは裏切り者でしょうし……。

 

 いきなり人生の岐路に立たされたような、そんな気がしました――。

 

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