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第十一話

「とにかく、あなた方は罪人です。このまま、大人しく捕まってください」


 厳重に結界術で拘束したロバートとアイリーン様に私は捕まるように声をかけました。

 この人たちに構っている暇はないのです。

 私は私で、この国から出なくてはならないのですから。


「罪人ってよく言いますわ。あなただって、お父様に黙ってアナスタシアを育てた罪人じゃないですか。ロバートの拘束を解きなさい。今度こそ()()()逃げようではありませんか」


 アイリーン様は私も罪人だとして、共犯だと主張します。  

 確かに私も罪を犯していますし、正しいことをしているとも思っていません。

 しかしながら、彼女らとは相容れないに決まっています。

 この人たちのせいで私は人生を暗いところにまで追い詰められたのですから。


 それに――


()()()? やはりあなた方はアナの命に関わることをしようとしているのですね……」


「あら、口が滑ってしまいましたわね。ご安心ください。子はまた生しますから。お育てになりたいのなら譲ってあげてもよろしくてよ」


「私を、アナの命を侮辱するな! アイリーン!」

「ぎゃっ――」


 気付けば私は光の矢でアイリーンの腹を射抜いていました。

 ヘラヘラとアナスタシアが死んでも代わりを作れば良いと言った彼女がどうしても許せなかったのです。


「痛い、痛い、痛いですわ……。し、信じら……ない。あの女、王族の……わ、わたくしを、」


「もうすぐ、王家に対する義理も無くなります。あなたのことは敬愛すべき対象だと我慢していましたが……今は何とも思っておりません」


 さて、早くジョセフに追いつきませんと。

 私はアナスタシアの元へと足を向けました。




「エリス! 貴様、よくも! 僕の愛するアイリーンを! があああああああッッッッ!!」


 走って娘のもとに近付こうとしたとき、後ろから叫び声が上がり、地響きがしました。

 振り返ると、全身が赤紫色になった異形の男が光の鎖を引きちぎって私を睨んでいます。


「……ろ、ロバート。その姿は――」


 ――ば、化物。

 恐ろしい姿の化物がそこに存在していました。

 元夫は得体の知れない“勇者の血”とやらを飲んでいます。

 それがあの姿になった要因だということは疑う余地がありません。


 早く娘を連れて逃げませんと……。


「え、エリス様。あ、あれは一体……」

「ジョセフ、話は後です。アナを彼らに渡すわけにはいきません。早く逃げますよ」


 私はジョセフにそのまま逃げるように伝えました。

 ロバートの命はそう長くない。アイリーンはそれを匂わすようなことを言っていました。

 つまりあの異形の姿もまた最期の悪あがきの可能性があります。

 逃げ続ければ自滅する――その可能性に賭けた方が賢いでしょう。


「逃げられると、思うなあああああッ!」

「きゃっ……!」


「お母様!」

「エリス様!」


 私は髪を掴まれて、そのまま強く殴られて地面に体を打ちつけました。

 は、速すぎます。それに魔力で全身を鉄よりも硬くなるように防御術を展開しているのにも拘らず、全身がバラバラになりそうなくらい痛みを感じます……。


「アイリーンを傷付けたお前は四肢を裂いて、グチャグチャにして殺してやる!」


 ロバートは目を血走らせながら、ゆっくりと近付き私を殺そうと腕を振り上げました。

 まさか元夫に殺される最期を迎えるとは……。

  

 アナスタシア、アルフォンス様……お許しください――


 私は目を瞑り、覚悟を決めました。


「ぎゃああああああっ」


 ――突然上がったロバートの叫び声。

 目を開くと、何と……。


「お、お母様を……い、イジメないで……!」


 全身に黄金の光を纏ったアナスタシアがロバートに体当たりして彼を吹き飛ばしてしまっていたのです。


 娘はなぜ、こんな力を――

 あまりの展開に声が出ませんでした――

 

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