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初ランクアップ

 ナタリーさんは今日のクエストの進み具合に満足したと言って、北門支店を出たところで王城に向かうからと別れた。今晩は宿で会えるとは思うけれど、明日からしばらくは難しいかもしれない。

 本店に入るとカティアさんは接客中だったので、空いていたカウンターでクエストの完了を報告した。リュックから出した薬草類を並べれば、手際よく品質を確認しながら束ねていって、メモを付けて奥に持って行った。そのまましばらく待つと、接客を終えたカティアさんが来てくれた。


「初めてなのに程度が良いものばかりだと、査定担当が喜んでいましたよ。クエスト4回分のクリアとなりますので、カードの提示をお願いします」

「あの、ここに来る前に北門支店でホーンラビットの買取をしてもらっていて」

「あら、もう6回クリア済みなのね。それではカードの作り直しもしてしまいましょう」


 提出したカードの記録を確認したカティアさんは、これでFランクに昇格できるからと奥に引っ込んでしまった。ほどなく新しいカードを持って現れ、薬草の買取代金である大銅貨8枚と合わせてカウンターに並べた。

 新しいFランクのカードは若草色の金属製で、血を1滴たらすことで本人承認を完了させるものだった。Gランクのそれがただの金属板だったのに比べれば、Fランクからが本採用となったのだと実感した。


「カードを失くすと再発行に銀貨1枚必要ですので、十分気を付けてくださいね」

「明日からFランクの依頼を受けようと思うのですけど、おすすめとかってありますか」

「まだソロで活動するのですよね。なら初めの頃は薬草集めや、グレイドッグ等の低ランクの魔物狩りが主体となります。ただ魔物狩りであれば、解体を覚えておかないと効率が悪いですよ」

「往復が増えるからですよね。魔石だけだと如何ですか」

「ゴブリンは魔石くらいしか売れるものが無いですけど、ウルフ種やラビット種は肉も売れるので。ゴブリンは群れている事の方が多いので、いくら遠距離攻撃ができると言ってもソロだと厳しいと思いますよ」


 空間魔法で収納してしまえば、日帰り分くらいなら問題なさそうだ。もっとも、人前では出し入れしないとなるとそれも難しい。明日改めて掲示板を確認して選ぶことにして、今日はこのまま街を散策して宿に戻ることにした。


 冒険者ギルドの本店周辺は冒険者向けの店も多く、中でも装備などを扱う店が集中している。消耗品等や装備の手入れ等を扱うお店は支店周辺に集中していて、出がけにチョット的に寄る事を想定しているようだ。

 私の装備はナタリーさんと買い物で回った最初の村で揃えたものがほとんどで、ここで買ったものはリュックくらいなものだった。正直、解体用のナイフでさえ持ってはいない。今の所は攻撃系の魔法を使えないので、護身用に短刀でも用意した方が良いかもしれないと思い立っての物色だった。

 大きなお店は品数も豊富で品質も安定しているけれど、それだけお高いので中々手が出せない。幸い私には真贋という目利きの上位スキルが有るので、お買い得品を選ぶことが出来たりするので常時発動させてみる。


 工房に店舗が併設されているお店が良いかと、ブラブラしながら気になるお店に入っては軽く物色して回ると、品質がピンキリのお店を見つけた。ガンツ武具店と看板を掲げたそこは、二十歳前後のお姉さんが店番をしていて、丸見えの工房では二十代半ばの男性がだらしなく椅子に座っていた。

 大剣や片手剣、短刀、ナイフと刃物ばかり扱うお店で、お安い価格帯なのにチラホラ高品質が混じっていた。特に各一振りの短剣(マンゴーシュ)長剣(ロングソード)に高品質があって、それが低品質に混じって飾ってあたった。


「すみません。この短剣(マンゴーシュ)、手に取ってみて良いですか?」

「あら、新人さん? どうぞ、ゆっくり見ていって。大店(おおだな)には品質で劣るけれど、その分お安く提供させていただきますよ」

「奥の工房で打っているんですか?」

「そうよ。やっと独り立ちできた兄と二人で、父が残してくれたこのお店を再開したの」

「あぁ、それで。あっ、こっちの長剣(ロングソード)も……」

「……」


 職人さんでもベテランさんではないと品質にバラツキが大きくなってしまうらしく、それでも才能の片鱗を見せる事もあるのだろう。懐具合は少し寂しいものの、大店なら倍近い価格の2振りはお買い得だろうと、使いもしない長剣(ロングソード)も一緒に買うことにした。


「コレとコレ、ください。あと、弓を扱っているおすすめのお店ってありますか」

「合わせて銀貨19枚です。兄が修行していたお店でも扱いがあるので、そこで良ければ前の通りを正門側に歩いて行った先、ドレイス工房をご贔屓ください」


 レベルが上がっても剣に対する適性が無いからなのか、片手剣とは言え片手で振るうほどの腕力が無く、矢筒を吊っているベルトの腰部分に短剣(マンゴーシュ)を鞘ごと固定し、抱えるように長剣(ロングソード)も持って店を出た。少し先の路地にチョット入ると、視線を遮れたので空間収納(ストレージ)長剣(ロングソード)をしまってしまう。

 紹介されたドレイス工房は中規模のお店で、武器だけでなく武具も扱っていた。もっとも今の所、革鎧だけでも十分なので矢を補充するに留めた。扱っているものは高品質だけれども、その分値段が高すぎて手なんか出なかったのだ。




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