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つかの間の休養

 街道を進むと昨晩できた泥濘跡に騎士風の団体さんが調査に入っていた。街からこちらに向かっていた者が見つけて報告したのか、襲撃者のお仲間なのかは判断が付かないけれど関わらないように素通りする。多少は距離も開いていることもあり、こちらに関心を示した様子もなくホッとした。

 中継都市に位置づけられるこの街は、ミラバスと同じくらいには栄えているように見受けられ、街に入る際にはお嬢様方とは別の門に並んでギルドカードを提示して対応した。お嬢様たちは貴族用の門から街に入り、後ほど冒険者ギルドで落ち合う事になっている。


「来る途中に騎士様が多く居られる場所がありましたが、何かあったのでしょうか」

「それが良くわからんのだよ。早朝に街を出た哨戒隊が見つけたんだが、武装した集団が殺されていたようだ。あんたがたも気を付けた方が良いな。いくら冒険者だろうが女二人じゃ心許ないだろう」

「そうですね、気を付けるようにします」


 定期的に哨戒に当たっている騎士が発見して騒いでいるようなら、私達に疑惑が向くことも無いだろう。


 冒険者ギルドに幌馬車(キャンピングカー)で乗り付け、教えられた通りに建物裏で職員に(ルビー)ごと預けて建物に入ると、ベルントさんが受付の近くで待っていてくれた。部屋を借りられたようで、他のメンバーは部屋に居るからと案内してくれる。

 部屋には見た事のない男も居て、これまでの清算と後追い依頼の処理をしてくれるとの事だった。

 依頼は道中の護衛と樽の修理。必要経費の中に水代や食事代などを含み、総額で銀貨30枚と破格の報酬となっていた。名目に入ってはいないが、昨晩の戦闘手当も含まれているのだろう。そして、推薦を頂けたことでアリスのランクがDへと上がった。PT(パーティー)や私のランクは変わらなかったけれど、公にできない内容である以上は致し方ないだろうし、無理に上がる必要も感じていないので良しとする。


 王都まではここから更に4日掛かるそうだけれど、護衛の到着に2日は必要との事で、到着までは此処に滞在するのだと言う。私達も疲れを取るのにしばらく滞在する予定だったので、予定通りに護衛が到着したなら王都まで一緒に移動することになった。さすがに宿は別だが、ギルドの紹介を受けて程度の良い所に格安で泊まることが出来たので、2日後にまたここで落ち合う約束をして別れた。

 その日はさすがに疲れていたので、宿に入るとすぐに風呂を使ってゆっくり休んだ。

 翌日は朝から観光目的で散策に出た。


「見た事のない物がチラホラ目につきますね」

「衣料品とアクセサリーが豊富だね。私達にはあまり縁がないけど、デザインの参考になるな」

「小物も豊富ですよ。あそこの魔道ランタンなんて、ホヤの透かしが綺麗じゃないですか。馬車に吊るしても良い感じになりそうですよ」

「確かに。実用性重視でいたけれど、少しはお洒落に振っても良いかもしれないね。気に入った物が有ったら買って行こう」

「それなら食材の方も見て回りましょう。食器も少し多めに用意しておけば、今回の様な突然の依頼でも慌てる事もありませんしね」

「それなら陶器の器が欲しいな。割れない様にって木製で揃えたけど、幌馬車(キャンピングカー)だったら陶器でも割れそうもないもんね」

「陶器ですか? あまり陶器の食器ってみませんが、ユーミさんの育ったところでは一般的な物なんですか?」

「そっか、こっちでは陶器の食器って無いのか。花瓶とかを子爵邸で見た事があったから、てっきり食器にもなっているものかと思ってた」

「貴族屋敷であれば、食器は銀製品が多くなると思いますよ。昔から毒が混じると黒くなると言われていますから、信頼を得るために多くの銀食器を保有していると聞いた事があるんです」

「それは私も聞いた事があるかも。でもそれってヒ素に含まれる硫黄に反応するだけだったはずで、手入れを考えたら非効率だよね。錬金したらステンレスやアルミって出来るのかな? 黒錆加工ってのもあったような」


 現代社会においても金属の錆は厄介者で、錆びさせないための加工技術はいろいろと有る。一番ピンとくるのはステンレスで、鉄にクロムやニッケルなんかを混ぜる事で錆びにくくしている。アルミに良く成されるアルマイト加工は、均一の酸化被膜を作って白く浮き出る特有の錆を抑制する効果がある。そして古くからあるのが黒錆加工で、その技術はこの世界にもあった。

 こちらで戦闘に用いられる武器と言えば剣が一般的なもので、Dランクくらいまでは炭素鋼が多く用いられた剣くらいしか選べない。この素材は錆びやすいために、黒錆加工が施されているのが当たり前となっている。鏡の様に磨かれた剣など、ミスリルやアダマントなどの希少金属性のものくらいだ。


 結局は食器の買い替えを諦め、ランタンを少しと程度の良いチェストを購入して買い物を終えた。いろいろと食べ歩いてみたものの、いつもの料理に勝るものは無くって少し残念だった。食材は急いで買い足す物も無いので市場までは足を運ばずに終わった。




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