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初めてのクエスト

 翌日は宿でしっかり朝食を取り、装備を整えて王都を出る。

 革の胸当てを着けて弓を持ち、矢筒を腰に下げれば一端(いっぱし)の冒険者に見えるのは不思議なことだけれど、その全てが真新しく中程度のリュックを背負っているのだから、見る人が見れば駆け出しだと一目で判るだろう。

 付き添ってくれるナタリーさんは、ローブにマント姿はいつもと変わらず。右手に宝石の嵌ったワンドを持っているだけの、装備と言えないほどの軽装だ。


 しばらく歩いて川にぶつかったところで周りを見回す。

 腰高の草が生えている場所では、風以外の力で揺れている場所も見えることから、野生動物や魔物が潜んでいるようだ。できるだけ見通しの良い場所を歩きつつ採取依頼の薬草を探せば、薬草だけが違和感のように意識に端に引っかかる。


「ユーミは薬草が持つ魔力を敏感に感じ取れているようね。無意識なんだろうけど、すごい事よ。魔法を使う者の中には鍛錬で出来るようになる人もいるけれど、大半の人はその域に達しないの。魔獣は敵意に魔力が籠るから、それを感じ取れる冒険者は多いけど、植物となると本当に稀だわ」

「それだけジョブの効果が有るってことですよね。弓の腕前もそうですけど、自分が強くなったんじゃないかって錯覚してしまいます」

「実際、強くなっているはずよ。ジョブを授かった者は、あらゆることが経験値となって蓄積され、ある域に達すると身体能力が目に見えて上がるの。階段を一段上がるっていう感じだと言えば、分かりやすいかもしれないわね」


 ステータスには現れない経験値があると言われ、それが見えればもっと自分を客観的に評価できるのかもしれないと考えたとたん、ステータスが視界に浮かび上がった。


 《仙波真由美》(仮名:ユーミ) Lv1(13/100)

 【種 族】 人族(渡り人)

 【ジョブ】 錬金術師(アルケミスト) Lv1

       狙撃名手(シャープシューター) Lv2

 【ギフト】 能力隠遁(ステータス・フェイク)

 【スキル】 真贋、創製、収納、整理

       遠見、速射、必中、探知

 【魔特性】 火・水・土・無


 うん、なんかレベルが見えるようになった。私にレベルがある他にジョブにもレベルが付いている。スキルも何気に増えていたりして、ちょっと楽しい。

 その後も薬草の採取を続けていると、レベルが2に上がった。特にファンファーレが頭の中に響くとかはなかったけれど、明らかに疲労の溜まった足の疲れが緩和された。疲れが取れたというよりも、疲れにくくなった分だけ余裕ができた感じに近いと思う。


 薬草探しに集中しすぎなくて良いからか周りにも気を配れるようになっていて、草陰に隠れている魔物も感じ取れるようになっていた。

 一番近い魔物は多分ホーンラビットだろう。こちらに向けられる殺気は感じられず、隠れてやり過ごそうとしているようだし、単体でいることからグレイドッグではないと判断した。距離は200mをチョット超えているくらいで、狙えば外さないだろうと漠然と思える。

 ナタリーさんに確認すると素材の買取りもしてくれるし、なにより常時依頼のひとつだと言うので狙わないわけにはいかなくなった。採取に邪魔だからとリュックに括っていた弓を外して持ち、矢を番えて強く引き放つと「キュッ」と微かな鳴き声が聞こえた。

 草を分け入ってみれば、首筋に矢が貫通したウサギが倒れている。額に角があるのでホーンラビットに間違いない。

 魔物も赤い血が流れているんだ、なんて思うくらいで、死骸に忌諱を抱くこともなく冒険者としてやっていけそうだ。獲物によっては解体するらしいけれど、そのまま持ち込んでも買取はしてくれるそうで、解体はそのうち覚えることにして狩りと採取に時間を費やすことにした。


 半日歩き回って薬草採取を済ませ、途中で現れたホーンラビットを6羽仕留めたので、経験値が随分とたまってレベルがさらに上がっていた。


 《仙波真由美》(仮名:ユーミ) Lv3(273/338)

 【種 族】 人族(渡り人)

 【ジョブ】 錬金術師(アルケミスト) Lv2

       狙撃名手(シャープシューター) Lv2

 【ギフト】 能力隠遁(ステータス・フェイク)

 【スキル】 真贋、創製、収納、整理、保存

       遠見、速射、必中、探知

 【魔特性】 火・水・土・無


 王都北門が見える辺りで空間収納(ストレージ)からホーンラビットを取り出す。流れ出ていた血もまとめて吐き出されたので、収納中の時間が止まるわけではなさそうだ。ブーツに少しかかってしまって、水魔法で軽く洗い流す羽目になったのはご愛敬だ。

 空間収納(ストレージ)を持っていることは、初心者の間はあまり知られない方が良いと言うアドバイスをナタリーさんから受けていた。大きさにもよるけれど、悪徳パーティーに使い捨てポーターとして扱き使われる可能性も否定できないのだとか。奴隷契約魔法で縛ってしまうなんて方法もあると聞いては、おいそれと人目に晒せないと恐怖を感じた。

 ちゃんと血抜きをしたわけではないので、縄で首を縛ってまとめて持ち、北門近くの冒険者ギルドで買い取りとクエスト完了を願い出る。買い取り込みの報酬が銀貨4枚と大銅貨2枚。日当としては高い方だと思ったけれど、そもそもこれだけ仕留められる初心者はまずいないそうだ。

 これでGランクのクエストが6回クリアとなった。




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