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心配をかけたようで

 迷宮(ダンジョン)の中では太陽が昇ることも無いけれど、こちらの世界にも時計があるので日付も時間も把握することは可能だ。

 あの日から2ヵ月経っているのだから、既に騒ぐ者は居ないと思っていたのだけれど、どうやらそうでも無かったらしい。


「あ、あの。今までどちらに?」


 目当てのドロップ品が必要数集まったので、最短距離で出入り口までやって来たところで職員にそう質問されてしまった。


迷宮(ダンジョン)の中ですけど? しばらく上がって来ていませんでしたから、入った記録が無いですか?」

「いえ、記録は残っていますが……。2ヵ月も前から出た記録が無く、その間の目撃情報も無かったものですから。それに、失礼ですが装備が大変綺麗でいらっしゃるので……」

「29層に拠点を設けて30層と行き来していたからですかね、そう言えば誰にも会った記憶が無いですね」

「申し訳ありませんが、出来るだけ早いタイミングでギルドに御出で頂けないでしょうか」

「では、この後すぐに伺わせていただきます」


 特に呼び出される覚えは無いのだけれど、魔石を売る必要もあるので顔くらいは出すつもりでいたのだから、先に顔を出しても問題は無いだろう。最悪、宿が取れなかったとしても街を出てしまえば自前で用意もできる。


 歩き詰めだったので乗合馬車に乗って街に入り、どこにも寄り道せずに冒険者ギルドへと向かった。なぜか入口前にはモレノさんが立っていて、私達が近づくと泣きそうな顔で手を握られた。


「し、心配しました。迷宮(ダンジョン)内で襲われたりしたんじゃないかと、怪我とか負われて出てこられなくなっているんじゃないかと」

「襲われていた人は居ましたけれど、私達は大丈夫でしたよ。ちょっとドロップ品が揃わなくって思いのほか潜ったままでしたけど、そんなの普通にある事でしょ?」

「無いです! 最下層まで潜ったとしたって1ヵ月ほどですし、それだって遠征隊を率いていくのですからギルドも把握しています。でも! でも、あなた達はいつもの軽装で潜ったのですから、長くたって3日くらいだと思うじゃないですか! 宿だって空っぽで、犯罪に巻き込まれたんじゃないかと……」

「私たちは其々で容量拡張鞄(マジックバッグ)を持っていますからね、そもそも宿に荷は置かないんですよ。それより呼び出されたようですけど、生存確認の為ですか?」

「いえ。一連の顛末をお話しする必要があるだろうと、新たに着任したギルドマスターが申していまして」


 いつまでもギルドの表、往来の多い所で目立つことをしているのは嫌なので、早々にギルマスのところに案内してもらった。

 通されたのはギルマスの執務室。応接セットに着いていた高齢の男が立ち上がって出迎えてくれる。


「ようこそ【スパークリング】の方々。儂が新たに着任したマスターでジョバンニと申す。前任者が大変な迷惑をかけてしまい、誠に申し訳なかった」

「顔を上げてください。かかる火の粉は振り払いましたが、特にギルドに対して思う所があるわけでは無いですし、謝罪をなさるならば、その内容を明確にしていただかないと、返事のしようも無いですから」

「ご尤もな意見じゃな。ひとつは前ギルマスを含む犯罪組織による、君らに対する数々の仕打ちに対するもの。次は迷宮(ダンジョン)内での他PT(パーティー)襲撃犯を撃退してくれたこと。最後は汚染されていたギルド浄化のきっかけを作ってくれたことじゃな」

「それでしたら謝罪は受け入れましょう。ただ、私達の国に属する貴族も絡んでいることから、これ以上の謝罪やそれに類する行為は受け付けませんことをご承知おきください」


 お祖母ちゃん子であり高齢で心優しい人たちに囲まれて育った私は、どうもそういった年齢の方に深々と頭を下げられているのが心苦しい。ましてや彼が何かをしてしまったが故の謝罪ではないのだから、余計に心苦しく感じてしまう。

 報奨金が出るくらいならば受け取っても良いのだろうけれど、この国に使われるような立場なんて欲しくも無いので、申し訳ないのだけれど先手を打たせてもらった。


「そうかい。ならば礼の件を話さなければならないかのう」

「お二人への感謝は私からも。3人を救って頂きありがとうございます。残念ながら3人ともに冒険者を辞める事になりましたが、命を救った頂いたお礼として幾ばくかのお金を預かっております。差し支えなければ、PT(パーティー)の口座に入金させていただきますが如何でしょうか」

「そうですね。お断りするのも失礼に当たるでしょうから、入金しておいてください。ところで、彼らの今後は何か聞いていますか?」

「ピーターの実家が商家だそうで、3人共に王都の本店で修行だそうです」


 どちらかと言えば、冒険者を辞めた彼らの方がお金を必要としているだろうけれど、ここで断ったとしても返す方法も無いので有難く頂いておくことにする。片腕を失ったピーターは致し方ないとして、女性二人も同業者に襲われて仲間を失ったのだから続けるのも辛いのだろう。いつの日にか、幸せになって欲しいと思う。




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