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VSトロール

 上層でドロップする魔石はたいした価値は無い。魔石を燃料とした魔道具が一般的にも使われるようになっているので、屑のようなゴブリンの魔石でさえ値は付くには付くのだけれど、Eランクの冒険者あたりが躍起になって集めるくらいのものだ。

 当然ながら私達には拾う価値さえ無い程なのだけれど、そのまま放置するわけにもいかずに集めてはいる。空間収納(ストレージ)に余裕があるからできる事なのだろうけれど、拾ったものの売りもせずに収納したままにしてある。なので、ギルドに顔を出したのは2度しかない。


 第5層までキッチリとした迷宮地図(マップ)が完成したので、道具屋に売る前にギルドで確認しておこうと久しぶりに受付に来た。見渡せばモレノさんが見えたので、彼女の列に並んで順番を待つ。


「1週間ぶりのご無沙汰です」

「はい、ご無事で何よりです。本日は依頼の受付でしょうか」

「実は迷宮地図(マップ)を作成していまして、5階層まで完成したので見ていただこうと思いまして。問題なければ道具屋にでも買い取ってもらおうかと」

「それでしたら確認させていただきますので、明日までお預かりさせていただけますでしょうか」

「かまいませんよ。明日の夕方にでもまた来ますので、それまでに売り物になるのか見ておいてください」


 容量拡張鞄(マジックバッグ)から紙の束を取り出して受付に置くと、その量に驚かれてしまった。ここで買った物とは比べ物にならない精度だから、枚数も増えてしまうのは致し方ないだろう。

 見やすさで言えば、日本(あちら)で見た地図に倣って描いてあるので、見方さえ覚えれば扱いやすいだろう。大きな紙に描かれた物を折り畳んで使うのも良いのだけれど、縮尺率を揃えた分、私の方が見やすいと思うのだけれどどうだろうか。


 話も終わったので受付を離れて依頼書の貼ってある掲示板を見に行けば、DランクのPT(パーティー)で行方不明が出ているようだった。階層は書かれてはいないけれど、中層へもぐりこんで出てこられなかったのかもしれない。中層の依頼を見れば硬さに定評のあるゴーレムや、状態異常の攻撃を持つコカトリスとかバジリスクなども出るようだ。

 6層以下は広間も端が見えないほど広くなり、天井もかなり高いと聞いている。階層間の階段は魔物が湧かない(居ないわけでは無いらしい)ので、中層まで潜るのだったら階段(そこ)での泊まり(レスト)も考慮しなければならないだろう。


 時間が中途半端になってしまったので、5層に居るFB(フロアボス)にチャレンジすることにした。ルートは熟知しているので、最短ルートを接敵しないように降りて行く。

 事前情報ではFB(フロアボス)はトロール。稀に亜種の場合もあるようだけれど、私たちにかかればてこずる相手ではない。


 ボス部屋の前で装備の確認をする。

 前衛をアリスに任せ、私はサポートに徹するために短弓(ベアボウ)に通常矢を準備する。魔法を付与した矢を使ったら一撃で終わってしまいそうだ。

 念のためにとアリスに軽鎧を着けさせる。胸当てと腰当はミスリル製で、ヘグィンバームさんが持たせてくれたものだ。回復魔法を唱えるのに必要な聖魔法書(バイブル)は腰に巻いた容量拡張鞄(マジックバッグ)に入れてあって、前衛と後衛を入れ替わっ(スイッチし)てあげれば直ぐに取り出して唱えられる。


 扉を2人で押し開け、学校の体育館ほどの部屋に足を踏み入れる。

 それまでの通路とは違い、壁も天井もレンガを組み上げたような模様があって床もタイル張りだ。奥に蹲るのはFB(フロアボス)のトロールらしいけれど、見える肌の色が聞いていた緑ではなく紫色だ。


「亜種だよ、アリス。ポイズントロールだ!」

「先に状態異常耐性の魔法を唱える時間をください。終わり次第スイッチします」


 弓を空間収納(ストレージ)に戻して前に出ると、アリスは三日月斧(バルディッシュ)を担いだまま聖魔法書(バイブル)を取り出して詠唱に入った。

 打刀の柄を右手で軽く握りながら、体制を低くして一気にトロールへと接近する。ボス部屋の中ほどまで接近したところでトロールは立ち上がって、ぬめり気のある棘を生やした棍棒を振りかぶった。

 私は構わず接近し、振り下ろされる棍棒をフェイントで躱すと居合の一太刀を浴びせ、スピードを落とさず走り抜けた。打刀のランクが低いからかトロールが固いのか、右太ももを切り裂いた刃は骨まで達せず膝を折らすに留まった。振り返ってもう一太刀袈裟懸けに背中を切りつけ、距離を取って短弓(ベアボウ)を取り出す。


 こちらに気を取られたトロールの首に、アリスの三日月斧(バルディッシュ)の刃が叩き付けられる。アリス渾身の一撃にトロールは横向きに倒れこんだ。刃は首の半ばまで達していて骨にもダメージが入ったようで、立ち上がろうとするトロールの首は右に傾き傷口を大きく開いている。


「足を止めるから、そのまま仕留めちゃって!」


 一声かけて氷魔法(ブリザード)を付与した矢を番え、トロールの足と部屋の入口に向けて放った。

 トロールに放った矢は狙い通りにトロールの下半身を氷漬けにし、入口に放った矢は入口手前に氷の壁を築き上げた。

 中腰状態で下半身を凍らされたトロールの死角からアリスが三日月斧(バルディッシュ)を振り続け、左腕を切り落とすと、間をおかずに首を斬り飛ばして魔石に変えた。


「お疲れ様」

「はい。楽勝でした」


 ドロップ品はアリスに任せ、彼奴らをシバキに行こうか。




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