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ダンジョンで小手調べ

 早朝から乗合馬車で迷宮(ダンジョン)まで来た。

 日が昇って間もないと言うのに、迷宮(ダンジョン)の入口は入る人も出てくる人も大勢いて、「もしかして中は芋洗い状態?」なんて思ってしまうほどだった。さすがに入場に際して1時間待ちとかって事は無かったけれど、私たちが入るころには次の乗合馬車が到着していた。


「ここの迷宮(ダンジョン)は初めてですか?」

「はい。昨日ミラバスに入ったばかりなので」

「装備をお持ちではないようですが?」

「武器は持っていますよ。こう見えて服も防刃機能付きですから、程度の低い鎧より防御力は有ります。残りは容量拡張鞄(マジックバッグ)に入れてあるので問題は無いですし、今日は様子見ですから」

「了解しました。ただ、くれぐれも無理はなさらないように」


 女2人が鎧も着けずに並んでいたせいか、呼び止められて問いただされてしまった。冒険者なんてヤクザな商売で、こういった事で心配されるなんて思わなかったものだから、周りからどう見られているかなんて考えもしなかった。1年前にも要らぬ猜疑を掛けられたと言うのにね。


 迷宮(ダンジョン)に入って直ぐは広場になっていて、下りの階段と魔法陣が複数ある。魔法陣は任意の階まで転送出来るそうだけれど片道切符なのだとか。戻ってくるための魔法陣は無いので、歩いて帰ってこられるだけの実力がないと死に直結しそうだ。

 私たちは素直に階段を下りて行く。


 降り立った地下1階は洞窟のようで、所々に魔法具のランタンがあるくらいで仄暗い。見通しは悪いけれど、戦闘をするのには問題が無い視界は確保されている。マップを見る限りは大広間を通路で結んだ形だけれど、通路が思ったよりも広い事から想像以上に縮小されて描かれているようだ。

 階下に向かう通路は人が多かったので、無駄足になるのは承知で脇道へと入っていく。しばらく歩くと大広間に出て、そこでやっと魔物に遭遇した。


「ゴブリンですね。前衛後衛でアタックしますか?」

「1匹は射殺すから、2匹を相手にしてちょうだい」

「ハイです」


 アリスは三日月斧(バルディッシュ)を構えて先行するのを確認して、その間合いに入る直前に中央のゴブリンに矢を放つと、眉間に吸い込まれるようにして矢が貫通したとたんに消滅した。アリスも三日月斧(バルディッシュ)を振り抜き先頭のゴブリンの首をきれいに切り飛ばして消滅させ、怯んだ残りに向かって2歩踏み出しながら胸に突きを放って仕留めた。

 転がった魔石と矢を拾ったアリスは、物足らなそうな表情で戻ってきた。


「地上のゴブリンと大差ないですね。あれなら私1人でも大丈夫でした」

「そうだね。この階の魔物はゴブリンの他にオークとグレイハウンドが出るらしいよ。グレイハウンドは火の魔法を吐くようだけど、単体で徘徊しているようだから脅威は少ないかもね」

「ユーミさんは試し切り、しなくても良いんですか?」

「グレイハウンドが出たら相対してみようかな。それ以外はアリスのサポートに回るからよろしくね」


 私たちの服には火耐性を付与していない。水魔法が使えるので燃え上がるのは防げるだろうけど、火傷くらいは負いそうなので回避速度の低いアリスは下げようと思った。

 それにしても魔石を残して消滅してくれるのは、解体の手間も無いし汚れないのでとても助かる。噴き出した血でさえ地面に散った物はきれいさっぱり無くなっていて、刃に残った血だけが戦闘が有った事を語るだけだ。

 回収した魔石のひとつに傷があるので、おそらくはアリスが胸を突いた際に胸に収まっていた魔石を傷つけたのだろうと思う。


 それからも地下1階を歩き回ってアリスの腕試しを続けた。練習で見ていた槍や槌よりも自在に操る姿に、よほど性に合っているのだと見て取れる。これなら早い段階で中層辺りまで潜れそうな手ごたえを感じた。

 グレイハウンドとは三度邂逅したが、使ってくる火魔法はファイヤーボール程度で拍子抜けした。避けつつ接近して居合で首を落とすだけで終了だもの、最後の1匹はアリスが難なく仕留めてしまったのだから、その討伐レベルの低さが分かるというものだ。


 もう1層下ることも考えはしたけれど、魔石の数がちょうど50個なので区切りをつける事にした。時間にして四時間ほどの迷宮(ダンジョン)攻略のため、街に戻ればちょうど遅お昼くらいになるだろう。

 上がってくれば入る際に声を掛けてくれた係員がまだ仕事中だった。


「ご苦労様です。今日はこれで街に戻ります」

「やはり装備を揃える方が良いでしょう。侮って怪我を負う前に引き上げるのは賢明な判断ですよ」

「いえ。魔石が50個溜まったので、切りも良いから戻ろうと。明日はもう少し深くに潜ろうと思いますが、大丈夫ですよ。あの程度の魔物討伐は慣れていますから」

「はい? この短時間で50匹も倒してきたと?」

「えぇ。これでもCランクですからね。それではこれで」


 まだ何か言いたそうだったけれど、仕事の邪魔も気が引けるので立ち去ることにした。ちょうど乗合馬車も来たことだしね。




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