ダンジョンの攻略説明
情報に紐づいて、PTの情報も表示されたようだ。こちらはカードがあるわけではなく、実力が認められたパーティーはギルドの情報網に国の境なく登録されている。おそらく、ギルマスの権限で登録は成されているだろう。
《PT:スパークリング》
【ランク】 D
【構成員】 ユーフェミア
アリス
【備 品】 馬
幌馬車
【預り金】 アセルラ金貨 38枚 アセルラ銀貨 0枚
PT名は私が作り出す炭酸水から命名した。アセルラではギルドの3名しか知らない事で、ソロ同士が一緒に行動していると思わせていた。それでも経験値とかは分配されるのだから不思議だ。ギルドに預けているお金は共用の資金だけで、個々人でそれなりのお金は持ち歩いている。
受付のお姉さんからの視線を感じて、アリスも情報端末にカードを乗せた。
《アリス》
【ランク】 E
【PT名】 スパークリング
【種 族】 ハーフドワーフ
【守 備】 前衛職:槌 後衛職:聖魔法
【預り金】
【討伐歴】 魔法回復による教会奉仕活動に貢献
「ダッカラにはメンバーの補充を兼ねてお越しなのでしょうか」
普通に考えたら、CとE二人だけのPTが国を跨いで閲覧できる情報網に乗るわけがない。離脱などでメンバーが減ったのだと考えたのは常識的だろう。
「しばらくは2人で活動します。いずれはアセルラに戻りますし。ただ、有用なメンバーが居れば誘うでしょう。当然、仮採用の期間は設けますが」
「それでしたら、あちらで詳しいお話をさせていただければと思います」
カウンターでする話でもなければ、ここで長話をしていれば迷惑にもなるだろう。案内されるまま小部屋に3人で入ると、間を置かずに資料を持った女性が入ってきた。
小振りなダイニングテーブルセットに勧められるまま着くと、資料を持ってきた女性から自己紹介が始まった。
「ようこそダッカラへ。ミラバス支部でアドバイザーをしていますモレノと申します」
「改めまして、エディトと申します」
「【スパークリング】のリーダー、ユーフェミアと言います。隣はメンバーのアリスで、アセルラ聖王国から来ました。経験を積むのにダンジョン攻略を軸にしようと、こちらに来た次第です」
「アリスです。よろしくお願いします」
挨拶が済んだら直ぐに実務に移る。
ここミラバスは国境の街として発展しているだけでなく、迷宮攻略の拠点としても利用されている。街から半日も歩けば複数の迷宮が点在し、その難易度も中程度でDランク以上の冒険者に好まれているそうだ。駆け出しのEやFランクの冒険者も荷物持ちとして、上位の冒険者と一緒に潜って経験を積むらしい。
迷宮は地下迷宮タイプで、下層に行くほど魔物の強さが上がってゆく。地上の魔物と違い、迷宮のそれは絶命すると魔石を残して消え去るのだとか。その際まれにアイテムを残して行くと聞いて、ゲーム世界と同じだなどと思ってしまった。やり直しの効かない現実なのだと、頭を振って気持ちを引き締める。
「ドロップするのはどういった物なのですか」
「魔物の種類ごとに決まっているようですけれど、大半は素材に分類されるものになります。例えばポイズンラットであれば毒袋がドロップされ、毒消し薬の材料となります。稀にその魔物が使っていた武具が残されることが有りますが、呪われている場合もありますので注意してください」
「魔物の装備品も、本体と一緒に消滅するんですね。残された場合はトラップにも注意すべきだと。魔石や素材はギルドで買取してもらえますよね」
「カウンターにお持ちいただければ買い取らせていただきます。他には商業ギルドでも買い取りが可能ですが、あちらは時価なので注意してください」
迷宮のマップは、上層階ならばギルドで販売しているそうなので迷わず購入した。購入したのは街から一番近い迷宮の物で、中層くらいならばCランクがソロで潜れるレベルだそうだ。
しばらくは上層階を日帰りで攻略し、戦力不足でなければ中層まで足を延ばす方針でいる。不足時はメンバーの臨時採用などを考えれば良いし、そういった冒険者が意外に多くいると教えてもらった。
「確かに前衛と後衛でも経験値は得られるのですが、前衛職は早熟傾向で後衛職は晩成傾向が強く出ます。魔法の効力もそうですが、多用できる下地である魔力の量が影響しているのでしょう。そういった関係からか、ある程度活躍していると実力差に不満が募り解散、といった流れが有ります」
「相対的に、若手の前衛と経験豊富な後衛のパーティーが多くなると」
「そうですね。もちろん、登録から入れ替え無しのベテランパーティーもあれば、経験を積んで再結成した人たちもいなくは無いです」
「機会が有ったら掲示板をチェックしてみるようにします。迷宮攻略に必要な用品とかも教えてもらえますか」
「一般的には野営の準備と同等ですが、雨が無いのでテントは不要かと。初心者用のセットも数パターンありますので、用品店で尋ねられるのが良いかと思います」
一通り教わったので、ギルドおすすめ店舗マップを無料でもらって通りへと出た。掲示板は明日以降確認すればよいし、先に宿と馬のアルバイト先を決めてしまいたかった。
迷宮に潜っている間の馬の預け先がないかと相談したところ、荷馬車が引ける馬なら働き先があると教えてもらった。国の玄関口となる街なので荷の往来が多く輸送業が発展しているそうで、預かった馬を近距離輸送に雇ってくれるのだそうだ。所有する馬は遠距離輸送に回すことでリスク回避とコスト削減を両立しているのかもしれない。




