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近接戦闘用のスキル

 アリスが購入の手続きを進めている間、私は短剣のコーナーを物色することにした。

 手持ちの短剣はガンツ武具店で買ったマンゴーシュで、品質的にも不満に感じ始めていたからだしダンジョンに潜るには心許ない。

 ダガーにスティレット、マンゴーシュ、ソードブレーカー。いろいろな形や長さの短剣が並ぶ中でピンとくるものが有ったのだけれど、どこからどう見ても守り刀だった。時代劇で身分の高い女性が帯に挿していたりする、袋に入ったアレである。

 手に取って鑑定すると、武器としての品質は値段相応の中ランクだけれど、護符として『状態異常軽減』の効果を持つことが分かった。


「これって珍しい作りですが、工房はどちらになるのですか?」

「あぁ、それね。海の向こうから入ってきたものだよ。綺麗なんだけどね、柄も鞘も木だし鍔も無い。刀身は薄くて片刃で、ハッキリ言って戦闘用じゃぁないね。仕入れて失敗したよ。似たようなものなら向こうにもう少し長いものが有るから、良かったらそっちも見ていって」


 長剣や大剣が並ぶ一角に抜き身の打刀が飾ってあった。

 刃渡りは65cm強くらいだろうか、もしかする中学の体育で剣道をやった時の竹刀より短いかもしれない。揃いで置いてある鞘に佩くための金具が無いので、おそらくは刃を上にして帯刀する打刀だと見当をつけた。これくらいの長さだったら私でも使えるかもしれない。

 アセルラで一般的な長剣(ショートソード)は刃渡りが80cm以上あり、1mを超える刃渡りの長剣(ロングソード)も当たり前のように並んでいる。150cmの私にはとてもではないけど即座に抜けるものではなかった。

 刀を鞘に納めて左手で握り、握った左拳を腰にあてがう。左足を後ろに引いて腰を軽く落として右手で柄を握りゆっくりと抜いて行くと、慣れ親しんだ型をなぞっているような不思議な感覚になる。おそらくは、ジョブがまた増えたのだろう。


「これと、さっきの短剣(守り刀)。合わせていくらになります?」

「そうだね。短くて売れなかったものだし、連れの子も買ってくれたから大銀貨6枚でどうだろう。他と比べて割高だろうけど、仕入れ値は大銀貨7枚ほどしたんだよ」

「それなら大銀貨7枚で良いですから、これを作った国の商品を扱っているお店を紹介してくれませんか? 衣類とか小物の店が良いです」

「ほんとっ! ぜんぜん構わないし、むしろ助かる。店の名前をリストアップするから、詳しい場所はギルドで聞いて来てよ。店の方には値引くよう、僕の方から機会(おり)を見て話しておくからさ」

「ありがとうございます。しばらくこっちで稼いだらアセルラに戻る予定で、その時にお世話になった貴族様への土産に良さげなので助かります」


 研ぎのサービスをしてくれるそうなので、作業をしてもらっている間に空間収納(ストレージ)内で作業に入る。厚手の木綿生地を使って角帯を作ってゆく。打刀なので佩くことは出来ないから、帯刀するためには挟み込む帯が必要なのだ。

 出来上がった帯を取り出し、腰骨の上にきつく巻いて行く。あっちで近所に住んでいたおじいさんの中には和服の人が数人いて、帯の締め方はなんとなく知っていたので手間取ることは無かった。

 刀を持って戻ってきた店員さんは、私が腰に帯を締めているのを不思議そうに眺めていたのだけれど、受け取った守り刀と打刀を帯に指せばニッコリ笑った。


「そうやって持ち歩くものなんだね。いやぁ、お嬢ちゃんは物知りなんだね」

「以前、こうして持ち歩いているのを見た事があったんですよ。私、弓専門で剣のスキルが無いんですけど、こうしていればそれっぽく見えるでしょ」


 こっそりとスキルを確認したら、案の定武芸(マーシャル)(アーティスト)のジョブが発現していて、坐合や抜合、初撃などの居合道に通ずるようなスキルや、峰打や寸止なんて試合でもするのかってスキルも生えていた。思わずチートすぎる自分にちょっと引いてしまった。


 腰から外しておいた長剣(ショートソード)はマジックバッグに入れてしまったけれど、長さの違いに思わず苦笑いが漏れてしまう。こっちの人達はよくこんな長いものを振り回せるものだ。

 アリスは刃に革のカバーを被せた三日月斧(バルディッシュ)を肩に担ぎ、私は脇差を帯刀して店を後にすると、冒険者ギルドへと向かった。


 ギルドの建物は何処も変わらないようで、入ってすぐの壁際には掲示板が有り、奥にはカウンターが並んでいる。開け放ったままの内扉の向こうは酒場になっているようで、待ち合わせなのか仕事上がりなのか、複数のグループがワイワイやっていた。

 カウンターに近づくと、受付の女性が笑顔で声を掛けてくれた。


「本日は冒険者登録でしょうか?」

「いえ、アセルラで冒険者登録は済んでいます。今日からしばらくダッカラで仕事をしようかと思って、その挨拶と情報を仕入れようと思って」

「ギルドカードをご提示いただけますか」


 カウンターに設置されている読み取り端末にカードを乗せれば、受付のお姉さん側だけに情報が標示される。もっとも、登録時の情報すべてが表示されているわけではなく、ランクとか昇格に関連する討伐記録などが見られるにとどまる。それでも「え!」って驚かれるのはお約束だろう。ここは苦笑いひとつで収めておく。


《ユーフェミア》

 【ランク】 C

 【PT名】 スパークリング(PTリーダー)

 【種 族】 人族

 【守 備】 前衛職:剣  後衛職:弓

 【預り金】 

 【討伐歴】 盗賊討伐参戦

       オークロード単独撃破

       オーガキング単独撃破




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