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ギルドカードの申請

 王都は石造りの高い城壁に囲まれていて大きな門を潜って入ることになるが、開きっぱなしの門の所では関所よろしく確認の列ができていた。人はここで降ろされ、列に並ぶことになる。荷馬車たちは入場門が別にあるらしくて、そろって右手方に去ってゆく。


「ナタリーさん。私身分を証明するものなんてないですけど、本当に大丈夫なんでしょうか」

「大丈夫。私こう見えても冒険者ギルドのC級ライセンス持ちよ。更には魔術協会の主任研究員の肩書もあるしね。それもあって今回の召喚があったわけで、そんな身分確かな私が見出した新人なんだから大丈夫なのよ」

「わかりました。安心して受け応えが出来そうです」


 列は1本だけれど門の所では複数のグループで確認がされているようで、列はどんどんはけて行き私たちの番になった。当然ながら身分証の提示を求められ、持っていない旨を告げれば王都での用事を問いただされる。


「旅の途中で知り合った連れのすすめで、王都の冒険者ギルドで登録をと思いまして」

「それならば預かり金として大銀貨1枚を収め、この書面に必要事項を書くように。預かり金はギルドカードを提示してもらえれば返金を行う」

「えっと、はい」


 渡された紙には、名前の他に出身地や都入りの理由などを書くようになっている。で、問題となるのが字を書けないことなのだけれど、そもそも識字率はそれほど高くはないらしいので代筆を頼むことができるのだ。

 既にチェックを終えていたナタリーさんに紙を渡してお願いすると、スラスラと記入欄を埋めてくれた。ほとんどが嘘の記載だけれど、だれも確認なんてしないから大丈夫と言っていたのでお任せだった。

 記入してもらった書面に大銀貨を添えて門兵さんに渡すと、連れの身分がしっかりしているので大丈夫とお金は返してもらえた。書類と引き換えに渡されたのはタグの付いたネックレスで、ギルドでの登録が完了したらカードと引き換えにギルドに渡して貰えれば良いとのことだった。


「お金を預けなくてよかったのは助かりました」

「二度手間だものね。さて、早速ギルドに行って登録を済ませましょうか。それが終わったら宿の手配を済ませて観光よ」


 王都の通りは石が敷き詰められていて広く、馬車が行き来しても歩行者の邪魔にはならないほどだ。建物はレンガ作りで3階建てまでの高さがあり、店先にはガラスが嵌っていて店内が見て取れる。もっともガラスの透明度は低いし、歪みがあるのかはっきりと向こうが見えるわけではない。

 大通りを進むと一際大きなレンガ作りの建物があって、西部劇にでも出てくるような木製のスイングドアが嵌っていた。扉の上の看板には盾の前に剣と杖が交差するマークが彫ってある、此処が冒険者ギルドのアルセラ聖王国の王都支部本店だそうだ。王都には3つも店舗が存在していて、残りの支店は王都の門に近いところに店を構えているらしい。


 扉を押し開いて中に入ると、思いのほか清潔感があって明るい店内に驚いた。もっとこう、薄汚れて男臭い感じの長居したくない場所かと思っていたからだけど、本店だからなのかもしれない。

 いくつか並んでいる受付カウンターのひとつに独りで行って、ベテラン風のお姉さん(アラサー?)に声を掛ける。ナタリーさんは掲示物が貼ってある方に行ってしまった。


「すみません。冒険者に成りたくて村を出て来たのですが、登録はこちらで宜しいでしょうか」

「えぇ、随分丁寧なお嬢さんね。それでは個室に行きましょうか。そこでスキルの確認と登録を行いますね」


 案内されるままロビー横に五つほど並んだ扉のひとつを潜ると、8畳くらいのテーブルセットが置いてある部屋だった。

 お姉さんの向かいに座ると、テーブルの上に水晶玉のような装置が用意された。


「登録前に、まずはスキルの確認をさせてね。新人さんはウェルカムなんだけど、適性がなくって廃業とか任務中の死亡とかって昔は多かったらしくてね、今はこうして確認するのよ。もっとも、守秘義務がギルド職員にはあるから安心してね。それじゃ、水晶に手をかざして」


 水晶に右手を乗せると、しばらく光った後に文字が浮かび上がった。ちゃんと偽装した方のスキルだけが浮かび上がっている。

 その内容を容姿に書き写し終わったところで、手を下すように言われた。


「適性は大丈夫ね。ジョブが狩人(ハンター)ではなくて弓名人(アーチャー)なんて、辺境伯の所に行けば兵士としてもやっていけそうだわね。遠見と必中も得難いスキルよ。経験を積めば斥候もできるし、後方支援もできそうね」


 少し待っていてと言い残して退室し、15分ほどして戻ってきたお姉さんが装置を脇によけ、持ってきたカードをテーブルに置いた。


「改めまして、ギルド職員のカティアです。ユーミさんのアドバイザーになりますので、分からない事とか遠慮なく聞きに来てください。そしてこちらがユーミさんのギルドカードになります。ランクはGですが、これは所謂お試し採用期間的なもので、採取等の依頼を10回こなせばFランクに上がることができます。ぜひ頑張って冒険者として一旗揚げてください」

「はい。いろいろ分からない事だらけです、よろしくお願いします。早速ですが、採取の依頼を受けようと思います。ここで受けられますか?」

「常時依頼のクエストですから、大丈夫よ。採取してくるのは薬草類で、この紙に描かれている絵を見れば判る筈よ。北門から出た草原を森に向けて歩くと小川があってね、その土手沿いに生えているから片道で1時間もかからないはずよ。ホーンラビットとグレイドッグが出ることがあるから、警戒だけはすること。難しいようならPT(パーティー)を組むのが理想かしら」


 常時依頼は完了時に受付するだけでよいそうなので、今日はこのまま帰ることにした。ナタリーさんを待たせているし、この後に宿も取らなければいけない。

 カードを貰っただけなのに、ここに居て良いんだと言ってもらったようで、何だかホッとした。




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