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見送りと旅立ちの宴

 無事に目的の村に到着したのは昼少し前で、1晩の宿を手配してから【ワルキューレ】メンバーを除いた4人で出会いの場所に移動した。

 アスターシャさんはナタリーさんの家に一緒に行くので、転移魔法を行う場所まで私とアリスとでお見送りだ。


「少し落ち着いたら、ちゃんと手紙を書きますね。ユートレッドの森だと、冒険者ギルドのサンザ支部宛で良かったんですよね」

「そうよ。手紙が届けば連絡が来るようになっているから、楽しみに待っているわね。アリスも、元気で。ユーミが無理しそうだったら、ちゃんと止めてね」

「はい、頑張ります」

「アスターシャさんも、いろいろとありがとうございました。一緒に依頼が熟せる様なレベルになれるよう頑張りますので、その時を楽しみにしておいてください」

「そうだねえ。なら結婚も引退もせずに待っているから、行き遅れる前に戻っておいでね」

「「それでは、お気をつけて。また会いましょう」」

「「あなた達も、達者でね」」


 そう言ってそれぞれが手を振る中、ナタリーさんたちの姿がスーッと消えていった。


 記念の場所と言えなくもないけれど、感傷に浸るほどの思い入れが有るわけでもなく、アリスと2人で直ぐに村へと戻った。

 1軒しかない宿は私たちの貸し切り状態で、こそこそ後をつけていた監視は森で夜を明かす様だ。あちらはバレていないと思っているのだろうが、私には何処に居るのかバレバレである。


 早めの夕食を宿で取り、早めに大部屋へと移動して酒盛りを始めた。翌日の移動を考慮して、早めに始めて早めに切り上げる予定でいる。

 もっとも、今回の作戦報酬としてワインの炭酸割を好きなだけ振舞う約束なので、結構な飲み量には成りそうな感じがする。その他にお持ち帰りとして極上のワインもあるので、適当なところでご勘弁いただきたい。


 属性魔法って、よっぽど強いイメージが無いとある物質だけを取り出すことって出来ないそうだ。私は空気の成分を知識として知っているので、そこから炭酸ガスとなる二酸化炭素だけを取り出すことが出来る。こちらの人はそのイメージが掴めないからか、炭酸水を作ろうとしても出来ないようで、私の固有魔法の様に思われている。

 知識と言えば私にも足らない部分もあって、炭酸ガスを加圧圧縮しても液体にならなくて困っている。ドライアイスを作りたかったのだけれど、何か追加要素が必要なのか工程が足らないのか、あの白い塊にならないのだ。できればアイスとか簡単に作れそうなので残念でならない。

 同じようにミネラルウォーターはカリウム、カルシウム、マグネシウム等が微量だけれど含まれているので、魔術で作った純水に混ぜてあげれば美味しい水だって作ることが出来るけれど、その知識を持たなければ味気ない水しか出すことが出来ない。


 成分の全ては錬金術師(アルケミスト)のジョブを持つ故に把握できるのかもしれないから、魔法が使える人に教えるのも難しいところもある。良くも悪くも数値化が出来ない領域なのだ。

 攻撃とか洗い物に使うならそれでもいいのだけれど、飲むなら少しでも美味しい水が好ましくて、どうしても自分で用意したもの以外口にしなくなった。これも固有魔法だと思われていて、私が居ると補充させてくれと請われることが多い。


「ユーミってさ、魔法の特性はいくつ持っているの?」

「水・土・火・風・無だよ。だけど、まともに使えるのは水だけなの。あとは火種を出すくらい?」

「無が有るって事は身体強化とかが使えるんじゃないの?」

「スキルが結構ついているから、あえて強化していないな。そのあたりは今後の修練かな」

「身体強化を使っていなくてあの飛距離と威力か。ほんと規格外だよね。いったどれ位の期間修練してきたのか」

「スキルが強力だったってだけなんだろうけど、スキルの付与って特別な基準みたいなものでもあるのかな」

「どうだろう。スキルって増えるらしいけど、皆んなそこまで意識しないよね。だから確認だって殆どしないし」


 私はスキルが自分で確認できるので、増えたスキルに関しては使ってみるようにはしているのだけれど、普通の人はお金を払ってまで確認はしないようだし、冒険者はこじつけの理由で見てもらうことはあっても、ギルドが頻繁な確認には消極的なので多くは望めない。

 どちらかと言えば、この国ではジョブが重要視されていて就職に影響があるくらいで、その後はどれだけの努力を積んだかが評価の基準になるそうだ。魔術師のジョブを得てそれなりのスキルを持っていたって、修練とか鍛錬を怠ればスキルの少ない者にあっという間に置いていかれてしまうし、使える魔法の質や威力はスキルには左右されない。もっとも取っ掛かりの才能がなければ、鍛錬なんて焼け石に水なんだろう。実際、私が放つ魔法は物から離れた途端に消えて無くなってしまうのだもの。


 そんな感じで和気藹々と話しながらの酒盛りは続き、9人で楽しい一時を過ごして気持ちよく酔っ払ったところで就寝となった。大部屋でほぼ雑魚寝状態なのは、いくら冒険者とは言え女性しかいないから許される行為だろう。

 さあ、明日は作戦の大詰めだ。

 慎重に事を運ぼう。 




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