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友人の手伝い

 基本的にはソロでの狩りを続けていて、(ルビー)に乗って森の奥にまで分け入っては、上位種であるホブゴブリンやシルバーウルフ、ポイズントードなどを主な標的として狩っている。

 ウルフ系は毛皮を剥ぐ。毛皮は寒い地方で換金率が高いので、他国で売りさばく予定でいる。

 トード系の唾液腺はいろいろな薬剤の材料となり、特にポイズントードの物は万能毒消しの材料には欠かせないものなので、出会えば確実に仕留めるようにしている。

 ゴブリン系は出会ってしまった個体だけを仕留めている。取り出した魔石がかなり嵩んでしまっていて困っているので、小出しに換金をして取り繕っている。もっとも、避けて遠回りするのも億劫なので溜まる一方なのだけれど。


「ユーミさん、今日はよろしくお願いします」

「アルテさん、モーリンさん、よろしくです」


 図らずもオークロードの討伐実績があったがため、有無を言わさずCランクにされてしまった私は、アドバイザーのカティアさんに頼まれて週に1度は2人を連れて森に来ていた。彼女らの狩りを見守る側としての付き添い、荷運び兼任として同行している。

 そもそも、馬車を持つ冒険者なんて居ないそうだ。荷が多い様ならギルドで馬車を借りることが出来るので、わざわざ管理費を払ってまで馬車なんて買わないらしい。それなのに私は馬車を所有していて若いのに高ランクなものだから、年の近い彼女らを任されているというわけ。

 彼女らの最近の得物はゴブリンとスモールボア。スモールボアは小型のイノシシだけれど、小型とは言っても100Kgは優に超えるサイズなので、当たりどころが悪ければ大怪我を負ってしまう。それでも肉が高値で取引されているものだから、孤児院への寄付に大きく貢献する獲物でもあった。随分と食事内容が改善され、大変喜ばれているとか。


 森の縁には数ヶ所、馬車や馬を預かってくれるところがある。

 冒険者クランの中には食肉専門とか薬草専門に調達してくる組合があって、そういった所が走らせる馬車を預かってくれる商売も有ったりするのだ。馬車に1人残して行くよりも駄賃を払った方が安上がりだし、馬も遊ばせておけるのでストレスもかからなくて重宝されているそうだ。


 私を先頭に森に入れば、気配を探りながら最短ルートで移動してゆく。アルテも気配は察知できるのだけれど、私ほど広くはないので任せてしまうとロスが多くなる。戦闘の場数を多く踏むためにも、私のチート探索をフル活用して魔物を探して一直線だ。

 ある程度近付けばアルテにも察知できるので、そうなれば2人に戦闘を任せて周囲に気を配るだけの簡単なお仕事。彼女たちの戦闘スタイルは至極単純で、アルテに身体強化をかけてもらったモーリンが単独で戦闘を行う。アルテは戦況把握と周囲警戒を行っていて、モーリンがダメージを受けると即座に回復魔法をかけていく。欠点は長剣(ロングソード)での突貫主体なので、手数が足りずに集団には対応しきれない事。


「あ、見つけた。ボアだよね」

「正解。ではよろしく」

「了解だよ。さあ、魔法をちょうだい」


 アルテの魔法を受けたモーリンを先頭に、音を出さないぎりぎりの速度で近づいて行く。

 大きさはそれほどでもないけれど牙の大きなオスの個体が、こちらに気付くことなく土を掘り起こしては芋を貪っている。

 これ以上は感づかれるギリギリの位置にアルテと私は残り、モーリンがボアに向かって走りこんでゆくと、いきなり振り向いたボアが躊躇いなく突進してくるものの、モーリンのスピードが勝ってボアに勢いが付く前に間合いに入り込む。

 両手で下段に構えていた剣を、牙が引っ掛かる直前で右に避けつつ切り上げてボアの首をきれいに跳ね飛ばす。


「お疲れ様。一刀両断だったね」

「だからコツは掴んだって言ったじゃん。ちゃんと動きも見えているんだし、1対1なら平気だよ」

「スモールボアだったら、私も安心して見ていられるね。籠手(ガントレット)を着けるようになってからはゴブリンも2体くらいまでなら対応できるし、盾持ち(タンク職)か前衛がもう1人いたら更に成果が上げられそう」

「それなぁ。探してもらっているんだけど、なかなか巡り合えないんだよね」

「広範囲の攻撃魔法が出来る人でもいいかな。威力は無くても牽制ができれば私を気にしないで戦えるでしょ」

「それだとユーミでも良いかなって思っちゃうけどー。そしたら私ら、剥ぎ取り専門になっちゃうんだろうね」


 よっぽど狭いダンジョンみたいなところでない限りは、一般的な前衛職(アタッカー)の間合いに入る前には殲滅できるだろうから、モーリンの言もあながち間違いではないだろう。だからこそ、こうして行動を共にしていても戦闘には混ざらないようにしている。

 私のレベルアップやギルドランクアップに支障があるわけだけれど、今は上げたくもないので願ったりの状況でもある。なにしろ付き添うだけで、馬車の利用代とサポート代が友人価格とは言え得られているし、解体の手伝いができて手際も良くなってきているのだから。

 モーリン達はもう少しでEランクに上がれるくらいには狩りの成果が上がっているし、ボア狩りの収入効果で、武具メンテを欠かさずやるようになった今でも孤児院への寄付を増やせている。順風に乗れ始めてきているので、このまま無事に伸びていってほしいと思う。危険を伴う仕事なのは承知しているけれど、仲良くなった友人との永遠の別れなんて経験したくは無いのだから。




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