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不安がいっぱい

 ナタリーさんとは、宿で別れてから2週間後に1度食事をしている。やはり日本人が召喚されていたようで、その中に気になる名前を見つけていた。

 稲葉妙子(いなばたえこ)新庄裕也(しんじょうゆうや)はおそらく、私の知っている人だろう。

 2人は中学が同じだったので最寄り駅も同じはずだ。突っ込んできたバスに乗っていてもおかしくはなく、そういった面でも同姓同名の他人ではないはずだ。


 稲葉妙子は中学の同級生で、見た目は真面目そうで優しい感じだけれど、私に対する虐めに積極的に参加していたメンバーだった。立花(たちばな)さつきと言う子の取り巻きで、言われるがまま先陣切って陰険な仕打ちに加担していたのだ。

 新庄裕也は1学年上。生徒会の会長を任されるほど優秀な人らしいけれど、私が虐められている現場を1度目撃して逃げ出してからは、ことさら避けて通るようになった事なかれ主義者だ。それで与えられたジョブが聖騎士(ホーリーナイト)だなんて、とんだお笑い草だと思う。

 そして最大の関心人物が、マシバカオリ。

 祖母なき家に乗り込んできた親族には一人娘がいて、名を仙波香織(せんばかおり)と言う。この従姉、甘やかされて育った我儘お嬢様で年は私の2歳上であり、祖母が買い与えてくれた物をことごとくゴミ屑に変えてくれた暴君である。伯母の旧姓が真柴だったこともあって、かなり気になっている。


 今はまだ召喚された者たちは外出を許されてはいない。余計な情報を得ないように常に監視が付き、軍の宿舎内で生活させられているのだそうだ。そのまま前線に行ってくれると嬉しいのだけれど、そう思うのってフラグだったりするのだろうか。


 ナタリーさんの教え子は2人いるらしいけれど、不真面目で覚えが悪いと嘆いていた。私は毎日欠かさず練習しているので、できることも増えてきていて褒められた。攻撃系の魔法が壊滅的で落胆したこともあったけれど、発想の転換でクリアできたのはとっても嬉しい。

 錬金術って使える人が本当に限られているのだそうだ。それもあって、勉強しようと思ったら古い本を読むしかないのだけれど、私はいまだに文字が読めないままだった。冒険者をやっている限りは不便も無いけれど、知識を得るためには文字が読めた方が良いのだろうと考えることもある。ただ、今の生活は壊したくないので追々かな。

 それでも材料と明確なイメージがあれば、それなりの物を作り出すことができる。鉄と木と羽に魔力を込めれば矢を作り出すことが出来るようになって、そこに火系統の攻撃魔法を加えた所、(やじり)に効果を組み込むことが出来て、私なりの立派な攻撃魔法に早変わりしたってわけ。水に弱い相手には水系魔法を組み込めば良いし、事前に大量生産しておいて空間収納(ストレージ)に入れておけば無詠唱魔法と同等だ。


 新しい弓を手に入れられて、狩りがかなり楽になった。飛距離も精度も段違いなのだ。

 セットアップした次の日からソロで森に入ってはゴブリンを中心に魔物狩りを進めていて、ずいぶんと森の奥まで行動範囲を広げている。もちろんカティアさんには注意を受けているけれど、オークやゴブリンの亜種(剣や杖を持った個体)には気付かれない距離を保ってやり過ごしているので、危険度が上がった感じはしていない。

 1ヵ月経ってスキルに変化は無いものの、レベルはもうすぐ2桁に届きそうな勢いだった。

 レベルの上昇に合わせて体力はグンと上がっていて、走る速さも持久力も格段に向上している。おかげで森まであっと言う間に着いてしまうし、より多くの物を空間収納(ストレージ)に出し入れできるようになっていた。

 それで日に20~30の魔石を持って帰るものだから、疑惑の目が向けられてしまったのも頷ける。


「アナタに不正の疑惑が持ち上がっている。申し訳ないが、監査人の同行を認めてもらおうか」

「私は構いませんが、移動速度は落としませんよ。逃げたとか言われないレベルの人に、監査をお願いしたいのですが」


 《仙波真由美》(仮名:ユーミ) Lv9(3619/3844)

 【種 族】 人族(渡り人)

 【ジョブ】 錬金術師(アルケミスト) Lv3

       狙撃名手(シャープシューター) Lv5

 【ギフト】 能力隠遁(ステータス・フェイク)

 【スキル】 真贋、創製、収納、整理、保存、付与

       貫通、遠見、速射、必中、探知、経穴、俊足

 【魔特性】 火・水・土・無


 はたしてこのステータスが、冒険者レベルのどれに当てはまるのか疑問ではあるけれど、折角ならば高レベルのベテランに付き添ってもらいたい。ゴブリンの亜種や上位種も狩れると思うけれど、ソロでは冒険が出来ないのだからアドバイスが貰えると良いなと思う。


 当初はDランクの男性4人組が付く予定だったらしいけれど、男性だけのPT(パーティー)なんて襲ってくれと言っているようなもので拒否させてもらった。そもそもタンクのマッチョおじさんなんて、足手まとい以外の何者でもない。

 カティアさんにも入ってもらい、Cランク上位の【月の雫(ムーンドロップス)】が監査に付くことになった。剣士のスフィアさん、魔術師のマーリンさん、斥候のメルさんの3人パーティーで、スピード重視の戦闘スタイルだそうだ。

 それなら置いていくことは無い、と思う。




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