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売り払って次を探そう

 収納のスキルを持っていることは隠しておいた方が良いと、ナタリーさんからは言われていたけれど、この場にいる人ならば口止めもできるだろうと考えた。


「今からお見せするものは他言無用に願いたいのですが、約束していただけますか?」


 皆が頷いて肯定したことを確認し、空間収納(ストレージ)から昨日買った長剣(ロングソード)を取り出してテーブルに置く。


「実は鑑定スキルと、小さいながらも空間収納(ストレージ)が使えるんです。目を付けられないよう、あまり公にするなと師匠から言われていて、見なかったことにしてくださいね。で、本題です。実はこの長剣(ロングソード)を銀貨12枚で買ったのですが、私にはどうも使いこなせないようで買取を希望しているのです。もしよろしければ品質鑑定と仲介をギルドにしていただき、気に入っていただければモーリンさんに買っていただけないかと」

「この剣を銀貨12枚で?」

「はい、12枚で」


 店の儲けをどのくらい取っているのか分からないものの、おそらく12枚以上の価値は保証してくれるだろうと思って出したのだけれど、どうやら目論見は成功したようだ。

 対してモーリンさんは、ヘイルさんの質問を逆に取ったようで困った顔をしてしまう。


「これを銀貨12枚で投げ売るような馬鹿の店は?」

「ガンツ武具店ですよ。品質が安定していないようで、掘り出し物を選りすぐった結果です。ヘイルさんならどう見ますか」

「即買う。もう少し高くても買うだろう」

「だそうですが、モーリンさんは如何ですか? 手に取ってもらってかまいませんよ」


 少し躊躇したものの手に取って鞘から半分ほど剣を抜き、綺麗に研がれた刃を見て一気に抜き切った。大根でもあれば試し切りでもしてはと思ったけれど、そもそも包丁などとは刃の厚みも長さも違うので比較のしようもない。

 されど、刀身をジッと見ているマーリンさんの表情が晴れてきたので感触は悪くなさそうだ。


「これを銀貨12枚で売ってもらったら、ユーミさんは損をしちゃわない?」

「大丈夫ですよ。また探せばいいしね。そもそも長剣が使えないことは分かったうえに、次に別の得物を探すための資金ができて、逆に嬉しいかな」

「なら、買わせていただきます」


 その場でカティアさんが用意したお金が、そのまま私の懐に入るのは変な感じがしたものの、モーリンさんの腰には長剣(ロングソード)が下がっているので問題はない。どうも、手ぶらで来てお金を貰った感じがしっくりこない。

 ついでなので、短剣(マンゴーシュ)も査定してもらおうかな。


「ヘイズさん。短剣(これ)はいくらだったでしょう」

「うーん。大銀貨1枚と言いたいところだが、さっきの剣と同じ店なら安いか? 銀貨8枚なら飛びついただろう」

「7枚でした」

「馬鹿だ。在り得ない! いや、これから覗きに行ってくるかぁ?」


 私のスキル真贋がかなりの高性能なのは分かった。また時間が有ったらいろいろなお店を見て回ろうと思う。出来れば程度の良い弓が欲しいけれど、今の弓でも問題があるわけではないので急がなくてもいいだろう。


 一通りの手続きが終わってギルドを後にした。

 カティアさんから「3人でパーティーを組んだら?」なんて提案されたけれど、丁重にお断りをした。私の秘密がバレるのは好ましいことではないし、彼女らと行動したとしても戦闘スタイルが違いすぎると思ったからだ。モーリンたちもそこは気になったようで、乗り気にはならなかったみたいだったのもあって、もうしばらくはソロで活動していくことになる。

 ゴブリンの魔石は1個で銀貨4枚とウサギよりも安かったけれど、持って帰る手間や売れる部位の多さが違うので仕方ないと納得する。


 こちらの弓は、日本で見慣れたそれとは明らかに違うところがある。高校には弓道部があって、身長よりも長い弓を持っているのを偶に見かけていた。テレビで見るそれも長いものだったので長いのが当たり前だと思っていたのだけれど、こちらでは短い物しか見かけない。

 オリンピックの放送で見たアーチェリーよりも短いものが、もしかするとこの世界の標準仕様なのだろうかと考えてしまう。まぁ森の中に入ってみれば、和弓みたいな長いものなど持っては歩けないことも理解はしているのだけれど。

 ゴブリンに射た矢は、頭蓋に突き刺さったことで即死させることが叶った。結果に自分を褒めたい気持ちは有るものの、さすがに力んで引きすぎたせいか弓に大きな負担をかけていた。2射目には微かに異音が聞こえたことからも、さすがに安物の弓では力を存分に振るえないのだと気付かされた。

 例えに使ってはかわいそうだけれど、モーリンの二の舞いは御免だ。


 そもそも弓を主装備として使用している冒険者が極少数なのか、武具屋を覗いても弓を扱っている店自体が少ない。魔法が後衛の主戦力になるこの世界では、飛び道具は狩人くらいにしか重宝されないのかもしれない。

 ジョブを与えてくれた神様には申し訳ないけれど、剣士系のジョブを与えてくれれば良かったのにと愚痴ってしまいたくなった。



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