第14話 そして伝説へ(最終回じゃないよ)
「いやっほーい!」
自称神様の空間に招待されたお陰で、レジェンドスキルを手に入れたジョージのテンションがマックスだ。
「それで、ジョージはどんなスキルを手に入れたんだ?」
「おう、やったぞ! ついに戦闘向きのスキルだ!
【最善選択】のスキルがリョーマに付いて行けって言ったのはこの為かもか知れないな!」
戦闘向きのレジェンドスキルか、凄そうだな。
「おお、良かったね。それでスキル名は?」
「【酔拳】だ!」
お、おお? 拳法がレジェンドスキル? いや、それよりも。
「ジョージ未成年だから、お酒飲めないんじゃない?」
「ばっか! 酒を飲めば飲むほど強くなるのは映画の中だけだ。実際の酔拳は酔ったような動きで戦う拳法だぞ」
「へぇ、そうだったのか。知らなかったよ。
寧ろよく知ってたね」
俺は映画の中の酔拳しか知らないから、てっきり本当に酔って戦う拳法だと思ってた。
「私も酔って戦うのが酔拳だと思ってたわ。
でも、酔拳がレジェンドスキルってどう言う事かしら?」
やっぱり同じ疑問を持つよね?
「えっと、分かりません」
ジョージには酔拳が使えることは分かるけど、何故これがレジェンドスキルなのかは分からないみたいだ。
「ジョージ、よかったらそのスキル解析しようか?」
「えっ? お前そんな事もできるのか?」
「うん、【サポーター】さんって言うレジェンドスキルでね。色々とサポートしてくれるんだけど、スキルの解析とかもできるんだよ」
「ホント、何でもありだな」
何かまた白い目で見られてる気がする。うん、きっと気のせい。
「まあ、とにかく解析できるなら、是非お願いしたいな」
「うん、任せて」
じゃあ、【サポーター】さん、よろしくお願いします。任せてと言っといて【サポーター】さんに丸投げってのもどうなのかな。
《私は貴方のスキルですから、私がやった事は貴方がやったと同義です》
うーん、そんな物なのかな?
《それでは、レジェンドスキル【酔拳】を解析します。暫くお待ち下さい》
「おっ、【鑑定】された!」
そう、【鑑定】持ちには【鑑定】した事がバレるのがネックなんだよね。
《解析が完了しました。……結果をお聞きになりますか?》
ん? 何か【サポーター】さんがあまり乗り気じゃないような? でも、教えてもらおう。
《レジェンドスキル【酔拳】ですが、以前はランクの低いスキルでした。
しかし今日では、使用者もいなくなり、伝説的な拳法として噂だけが伝わっているようです。
つまり、存在が伝説な普通のスキルです》
ジョージ……。どんな引きをしてるんだ。何て伝えれば良いんだ。
「どうだ? 分かったか?」
そんなキラキラな目で見ないでくれ。真実を伝え難いじゃないかっ!
「あ、う、うん。えっとね……。
昔々、伝説の人が編み出した拳法で、今は使う者が居ない幻のスキルらしいよ」
うん、そこまで間違った事は言ってないぞ。
「なるほど、伝説の人が編み出した幻のスキルか!
それは強そうだ!」
「まあ、強いかどうかは使うジョージ次第なんじゃないかな?」
「そうか。よし、俺頑張るわ!」
そう、後世に名を残す伝説の酔拳使い誕生の瞬間であった? うん、話を逸らそう。
「それで、リーナさんはどうですか?」
「私? 私は暫くヒミツ。有用なスキルな事は間違い無いわ。
近いうちにあっと驚かせてあげる。あっ、【鑑定】は禁止よ」
ヒミツなのか、残念。でも、近いうちに分かるならいいかな。
「それで、そう言うリョーマはどうなの?」
そうだ、肝心の自分のスキルを確認してなかった。
「リョーマ! 難しい話してるのところ悪いけど、とりあえずおやつが食べたいの!」
俺に飛び込んできたまま腕の中にいたミルクが、そんな事を言い出した。
「ごめん、ごめん。後でって言ったまま忘れてたよ。
ミルクも色々頑張ってくれたんだ。ご褒美をあげないとね。
リーナさん、とりあえず続きは座ってお菓子を食べながらにしましょう」
俺はそう言うと【収納】からイスとテーブル、そしてお菓子とティーセットを取り出す。
「俺はもうツッコまないぞ」
ジョージが何か言ってるけど気にしない。
「うー、やっぱりリョーマのお菓子は美味しいの!」
「さて、俺が取得したスキルでしたね」
さあ、確認しよう。
「えっと、【そして伝説へ】?」
「何で疑問系なのよ。でも不思議な名前のスキルね」
ホント、名前からは効果が全く想像できない。
《既に解析は完了しています。結果を報告します》
さすがです【サポーター】さん。よろしくお願いします。
《任意の保有スキルを一時的に進化させる事ができます。スキルレベルが上がるに連れて、進化の度合いが変化します。最大レベルまで上げると、どんなスキルも伝説化します》
なにそれチート。いや、俺が自分で言うのも何だけど、チートですよね。
「えっと効果はですね……」
【サポーター】さんの解析結果をみんなに伝える。
「チートここに極まれりだな。何だよ、つまりどんなスキルもレジェンドスキルに昇華させる事ができるってことか?」
「多分そう言う事だと思う。まあ、まだスキルレベルが低いからそこまで使えないとは思うけど、将来化ける大器晩成型のスキルかな?」
《スキルレベル1でもノーマルスキルをレアスキルに進化させる事が可能です》
ノーマルスキルがレアスキルに進化か……。まあさすがにそれだけだと今更感がある……のは、俺の感覚がマヒしてるんだろうか? でもノーマルの【生活魔法】がレアスキルに進化したらどうなるのかはちょっと気になるから、また今度試してみよう。
「ところで、ここであまりのんびりしてる時間もないと思うんだけど、大丈夫?」
ああ、そうか魔物が変異してるのはこのダンジョンだけじゃないんだった。今朝のダイダの村の件もあるし、最低でもここから馬車で1日程度の場所までは魔物が変異していてもおかしくない。全世界で……とは考えたくないけど。
「そうですね。そろそろダンジョンを出て街の外の様子も確認しないといけないですね。
リーナさんはミルクと王城ですか?」
「ええ、私は少し作戦を練ってから王城へ侵入するわ。ガルムも1体貸して貰えるかしら?」
自分の実家なのに侵入って。まあ、姿を隠して行くんだろうから侵入なのかな?
「ええ、勇者の力は未知数ですからね。ガルムも連れて行って下さい。
ではとりあえずダンジョンから出ましょうか」
こうして、俺たちはダンジョンから脱出した。
「おお、実はお主に緊急で依頼したい事が出来て、待っておったんじゃ」
そして、ダンジョンから出るなり、待っていたゼムスさんにそう言われたのだった。




