表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
64/149

第25話 先客

 地下室の扉から覗き込むと、質素なベッドで寝ている鈴木さんの横に、黒ずくめで小柄な男が立っていた。しかし、確かに部屋には鈴木さん1人分の気配しか感じられない。


 な……何を言っているか分からないかも知れないが、俺も全く状況が理解できない。……ん? 何かこの表現とてもデジャブなんだけど、何でだろう? ついこの間あったような。


 さて謎の人物だが、黒ずくめ……と言うより何だろう? 忍者みたいな恰好をしている。その装束から覗く顔はどうやら老人のようで、立派な白髭を蓄えていた。見た目はとても穏やかな好々爺だ。


 とりあえず、俺は【光魔法】で光学迷彩を施している上に、【気配遮断】【魔力遮断】スキルを発動し、更に『遮音』の魔法で音も消している。向こうにはばれていない。


「む? 何じゃ? ワシ以外にもお客さんかの?」


 ……はずなんだけど、あれ? ばれてる? そう言いながら、振り向くお爺ちゃん。


「ほう……。これは見事じゃ。

 確かにそこに居ることは分かるが、目では何も見えないの……」


 うん。ばれてるよね。そうだ、【鑑定】はできるんだろうか。と思って【鑑定】をしてみたが、普通に【鑑定】できた。気配がないだけで普通に【鑑定】はできるみたいだ。


 【鑑定】結果によると、このお爺ちゃんはキツネの獣人のようだ。耳は隠れてるので確認できないけど、きっとケモミミだろう。ケモミミお爺さんとか誰得!?


 そして、普通の獣人だけど特殊なスキルを持っている。【気配支配】なるレジェンドスキルだ。レジェンドスキルか……。


《レジェンドスキル【気配支配】を解析しました。自らの気配をゼロにするとともに、どれだけ遮断した気配も察知できます。使用方法によっては存在感もゼロにする事ができるようですが、現在はそこまで発動していないようです》


 あ、【サポーター】さんありがとうございます。いつの間にか解析までしてくれるようになってた。


 まあでも、ほぼほぼ想像通りのスキルのようだ。


「さて、どちら様かは分からぬが、姿を見せてくれないかの? ワシは争う気はないぞい」


 そう言われ、俺は部屋に入り、ドアを閉め、部屋全体に『遮音』をかけた。


 万が一戦闘になって上に気付かれたら面倒だからね。後、逃げられないようにドアを固定しておく。


 そこまでしたら、自分にかけていたスキルと魔法を解除する。


「どうも、初めましておじいさん。僕は怪しい者ではありません」


「まさか、子供じゃったとは……。しかし、お互い様じゃが、こんな時間にこんな所にいる時点で怪しい者じゃぞ?」


 確かに。さて、でもどうしたもんかな? 間違いなく、双方怪しさ大爆発だからな。とりあえず揺さぶりをかけてみるか。


「そうですよね。自分で言っておいて何ですが、怪しすぎますよね。

 ところで、どうしてお爺さんはこの人が7人の内の1人だと(・・・・・・・・・)気付いたんですか?」


 そう言いながら、寝ている鈴木さんを指さす。


「ふむ、合点がいったぞ。そう言う事か。お主もそうだ(・・・)と言う事じゃな」


 おっと、ちょっと揺さぶりをかけるだけのつもりだったのに、クリーンヒットかな。ま、こんな所でレジェンドスキルを持った人に出会う時点でほぼ間違いないんだろうけど。


「そんな感じです。正確にはちょっと違いますが、これは後で説明させてもらいますね」


「しかし、まさかこの歳になってから前世の記憶が戻るとは思わなんだ。

 そして、神と名乗るモノに頂いたコードネームは憤怒じゃ。ワシはとても温厚だと言うのにひどい話じゃろ?」


 あ、うん。やっぱりコードネームは七つの大罪なんですね。しかも適当に付けてるだけっぽい。リーナさんも全然傲慢って感じじゃない……ない? あれは演技だから、多分ないし? ね?


「それで最初の質問に戻るのですが、どうしてこの人が7人の内の1人だと気付いたんですか?」


「うむ、それはな。とある情報筋からとても珍しいスキルを持った者が軍に監禁されていると聞いたんじゃ。しかも名前がスズキと言うではないか? ほぼ間違いないと思い、こうして確認に来た訳じゃ。

 さすがに、この場で連れて行く事はできんが、後で裏から手を回そうと思っておった。

 して、逆にお主はどうして気付けたんじゃ?」


 まあ、ここは正直に答えても問題ないかな?


「僕の場合は、既に面識があるんです」


「ほう?」


「実はエナンの街から、学園に入るために王都へ移動してきたんですが、その途中で盗賊に捕らえられている鈴木さんを助けました。その時に一緒にいた兵士の方に保護されたので安心していたのですが……、まさか監禁されるとは」


 そこまで話をしたところで、お爺さんの目がクワっと開かれる。


「エナンの街じゃと? お主、名は何と言う?」


 急にどうしたんだろう?


「えっとリョーマ……、リョーマ・グレイブです」


「やはりそうか……」


 え? 俺って有名人?


「エナンの街の大神官グレイ・グレイブの息子じゃろう? そして神託の子じゃ」


 そこまで知ってるなんて、この爺さん何者なんだ……。


「あ、貴方は一体……」


「ふふふ、それは……秘密じゃ」


 人差し指を口の前に持ってきてそんな事を言うお爺さん。いや、どこの獣神官だよ! しかもリーナさんと元ネタ作品かぶってるし! 何? もしかして7人皆そっち路線でいくの?


「まあ、言ってみたかっただけじゃ。後で説明するわい。とりあえず今は、この場を離れようと思うんじゃが?」


 確かに、ここでいつまでも無駄話 (無駄ではないけど)してると、いつ屋敷の人に気付かれるとも限らないからな。


「お主は、ここにコヤツが監禁されていると知った上でここまで来たんじゃ。助ける術を持っているんじゃろ? だとしたら話は助けてからじゃ」


「確かに、仰る通りですね。

 どうします? 起こしてから連れて行きますか? それとも寝たままにします?」


「起こさずに連れて行けるのであれば、とりあえずそうして欲しいところじゃな。起きてから説明したら良いじゃろう」


 その言葉に、俺は無言で頷くと鈴木さんに『誘眠』の魔法を使い、更に深い眠りに誘う。


「これでちょっとやそっとでは起きないはずです。では連れ出す準備をしますね」


 そう言って【収納】から腕輪を出すと、鈴木さんの腕に嵌める。嵌めながら効果を説明すると、リーナさんと同じような反応をされた。やっぱり俺がおかしいのかな!?


 腕輪が無事に効果を発揮している事をお爺さんに確認したら、次は【光魔法】で光学迷彩を施すと更に『浮遊』の魔法をかける。これで頑張って運ばなくても、浮いた鈴木さんを押すだけの簡単なお仕事に早変わりだ。


 こうして俺たちは無事に、カメル伯爵の屋敷を抜け出したのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ