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第16話 従魔ミルク

「とても良い匂いなのー! それ欲しいのー!」


 何と、階段から現れたのはかわいい小さな妖精さんだった。クリーム色の髪を三つ編みにしていて、背中には半透明の羽が生えている。


 その妖精さんが、叫びながら凄い勢いで飛んでくる。凄いというか、めちゃくちゃ早い。


「な、な、なに!?」


 俺は思わずそう叫びながらも、【鑑定】を試みる。


・基本情報

 種族:妖精

 名前:ミルク

 ランク:不明

 年齢:15歳

 レベル:102

 状態:3次従魔(→2次:アドラン →1次:ポチ →マスター:リョーマ)

 

 ん? んんん? 異常にレベルが高いけど、それよりも従魔? マスター:リョーマ!?


 そう言えば、この子とは何か繋がりを感じるような。これは、もしかして近くにポチも居たりするのかな!?


「ストップ! 止まって!」


「何なの? ミルクはこの匂いが気になるの! 急には止まれないの!」


 何て言いながら、ミルクはピタリと止まる。


「とか言いつつ、止まってるみたいだけど?」


「あれ? 本当なの。体が勝手に止まっちゃったの。

 何故か貴方の言うことには従わないといけない気がするの。

 ……あれ? 貴方は……」


 どうやら、俺と同じく、繋がりに気付いたようだ。


「僕はリョーマ。初めまして。キミのマスターだよ」


「えっ? え? ええええ? ボスがずっと探している、マスターリョーマ!?」


「ボスってポチの事かな? そうだよ。僕がリョーマだ」


「ミクルはミルクなの! 初めましてなの!」


 そう言いながら、ミルクは俺に突っ込んできた。俺は胸の前で受け止める。


「知ってるよ。名前を付けたのは僕だからね」


「貴方がマスターリョーマなら話が早いの! そこの良い匂いのお菓子が欲しいの!」


 え? 感動の出会いはもう終わり? 妖精ってお菓子好きなの?


「あ、うん。食べながらお話しようか……」


「うわーい! やったーなの!」



 俺はミルク用の小さいコップを作り、俺と同じくホットミルクを入れミルクの前に置く。ミルクにホットミルク……。紛らわしいな!


「それで、どうしてこんなところに1人で居たの? ポチは一緒じゃないの?」


 俺は逸る気持ちを抑えながら、ミルクに質問する。ポチも近くに居たらどうしよう。心の準備が……。


「えっと、それはね……」


 ミルクは、ずっとこことは違う? ダンジョンに居た事、ポチ達とは別行動をしていた事、急に出来た空間の割れ目に吸い込まれた事、【予感】スキルに誘われてここまで来た事を教えてくれた。


「なるほど……。それじゃあミルクは1人なんだね。他の皆はまだそのダンジョンに居るんだね」


「多分そうなの。それより、このクッキー? おかわりなの! こんなに美味しい物は初めて食べたの!」


 大量のクッキーを置いていたはずなのに、話を聞いている間に全部食べてしまったらしい。いや、体の大きさを考えるとおかしいでしょう! 仕方ないのでさっき作りすぎて【収納】に仕舞ったクッキーを出して、ミルクの前に置く。


「マスターリョーマ、ありがとうなの!」


「ところで、今までは何を食べてたの? ずっとダンジョンに居たんでしょ?」


「そうなの。ミルクは生まれてからずっとダンジョンに居たの。他の皆もそうなの。

 従魔契約をするまでは、生まれた階層から出ることはできなかったけど、従魔契約をしたら階層の移動ができるようになったの。マスターリョーマには本当に感謝しているの!」


 うーん。毎回マスターマスターって言われるのは何か、くすぐったいな。


「うん。ありがとう。僕も君たちが従魔になってくれて本当に嬉しいよ。それと僕の事はマスターじゃなくって、リョーマって呼んでくれたら嬉しいな」


「分かったの! 今からリョーマって呼ぶの!

 それでね。従魔契約してからは、別に何も食べなくても魔力があれば大丈夫になったの。上位者からの魔力供給がある限り大丈夫なの。

 他のみんなもそうなの。でも食べなくても大丈夫なだけで、食べるのは楽しいからたまには食べてたの!」


「なるほどね。大所帯になって、食べ物とかどうしてるか心配だったけど、そういう事だったのか」


 魔力供給か……。俺は回復力が圧倒的に多いから、気付いていなかっただけど常時消費されているのかな?


《その通りです。常時消費されていますが、消費以上の速度で回復しているため、日常生活に支障はありません》


 あ、またまたありがとうございます。【アナウンス】の進化が止まらない。


《説明が遅くなりましたが、先ほどの黒い空間で【アナウンス】が【サポーター】へ進化しました。事実を淡々と説明するスキルから、助言ができるスキルへ進化しています》


 え? マジすか! 俺は慌ててステータスを確認するが、確かに【アナウンス】がなくなって、【サポーター】と言うレジェンドスキルになっている。自称神様からのプレゼントだろうか? 何か気持ち悪いな……。


《問題ありません。あの空間には人の潜在能力を刺激する効果があるらしく。私は自発的に進化しました》


 スキルが自発的に進化って。【サポーター】さんヤバすぎます! 師匠がレジェンドスキルを取得したのも、あの空間の効果だったんだろうか?


「リョーマ、どうしたの?」


 気が付いたら、しばらく会話が止まったからか、ミルクが心配そうに俺をのぞき込んでいた。


「ああ、ごめんごめん。ちょっとスキルの確認をしていたんだ」


「そう? それでね。ミルクはこれからどうしたらいいと思うの?」


「正直、もとの場所に帰るのは難しいと思う」


 多分だけど、自称神様が俺に干渉した影響で空間に割れ目ができて、そこにたまたまミルクが巻き込まれたんだろう。


「……だから、ミルクには僕と一緒に来て欲しいんだ。ダメかな?」


 俺がそう言うと、ミルクはパーッと顔を輝かせる。


「良いの? リョーマに付いて行っていいの!?」


「もちろんだよ。ミルクは僕の従魔でしょ? 従魔の面倒をみるのもマスターの役目だからね」


「やったー! 毎日あの美味しいお菓子が食べられるの!」


 ええ、そっちですか……。俺と居れて嬉しいとかじゃないのか。


「でもミルクだけ、リョーマと一緒とか……他のみんなに申し訳ないの」


「そんな事ないよ。今すぐは無理だけど、僕は絶対にみんなを迎えに行く! ミルクだけちょっとそれが早まっただけなんだ。だから気にしないで付いてくるといいよ」


「ありがとうなの。リョーマは優しいの!」


 まあ、でもまずはこのダンジョンを脱出しないといけないんだけどね。

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