第10話 6番目
「その禁則事項? に当たらない、支障のない範囲でお話頂けますか?」
「そうね、話せる事は多くないけど、さっきも言った様に私の他に6人、合計で7人居るはずよ。
もう居るのか、これから来るのかは分からないわ。私が黒い空間に呼ばれた時に5年くらいかけて集まるって話だったからね」
因みに【嘘発見】のスキルも取得してレベル10だが、今のところ師匠は嘘を吐いていない。
5年かけて集まるって事は、逆に後1~2年は集まらないって事か。早くポチに会いたいのに、多分集まらないと何も起きないんだろうな。何となくそんな気がする。
「なるほど、何故その空間に呼ばれたのかは……、禁則事項なんですね」
俺が尋ねる途中で首を振られてしまった。
「後はさっきも言った様に、レジェンドスキルを1つ貰ったわ。ランダムだったけど、知っての通り【魔法創造】ね。それと細々としたスキルも何個か。細々とは言っても、一般人からしたら十分に強力だけどね。
多分、他のメンバーも同じじゃないかしら? 何かしらのレジェンドスキルを持っていると思うわ。
私が話せるのはこれくらいね」
盗賊にこき使われていた鈴木さんも、レジェンドスキルを持っていた。例の、スキルが発動出来なくなるスキルだ。高確率で鈴木さんは7人の内の1人だろう。ここにきて、さらに別口というのも考えにくい。
「ありがとうございます。
では、僕の情報もお話しますね……」
俺は鈴木さんに付いて知っている範囲で話す。護衛依頼中に出会った事、サラリーマン風の格好をしていて、盗賊の奴隷になっていた事、強力なレジェンドスキルを有していた事などだ。
「なるほどね。サラリーマンの鈴木さんね。異世界転移で森に来て、運悪く盗賊に捕まったのかしら? ご愁傷様ね……。
それで、王都に護送されるのよね?」
「ええ、そのような話になっていましたが、僕のスキルによると、昨日王都に着いた様です。
王都の地図と照らし合わせると……ちょっと待って下さいね」
そう言いつつ【収納】から王都の地図を取り出す。
「えっと、この辺りだから……、今は南門近くの兵舎で保護されているみたいですね」
「分かったわ。ありがとう。
私も保護できる様に動いてみるわ。
と言うか、王都に来たことまで分かるとか、相変わらずチートね……」
「僕が助けた手前、特殊なスキルに目を付けられて軟禁とかされたらどうしようかと思ってたんです。師匠が動いてくれるなら心強いです」
《従魔ポチが取得した経験値の一部を獲得しました。
レベルが上がりました。
レベルが140になりました》
師匠と話をしていると、またレベルが上がった。実は実力テストの間も何度か送られてきていた。1日に複数レベル上がるのは1年ぶりだ。一体ポチは何と戦ってるんだろうか。
「あら? どうしたの? 何かあった?」
俺が悩んでたら師匠に心配されてしまった。俺は即座に【ポーカーフェイス】を発動させる。
「いえ、何もないですよ。ちょっと師匠が会ったと言う神様について考えていたんです」
「ああ、自称神様だけど、本当のところはどうなのかしらね?
……魔王を倒せとか胡散臭いったらないですわ」
ん? 魔王? 新しいキーワードが出てきたぞ。一瞬ロールプレイを忘れて丁寧な言葉になってたけど。
「魔王ですか!?」
「あれ、私……禁則事項のはずなのに口に出してた? ……無意識の発言なら問題ない? 独り言のような……。意外と穴がある……?」
師匠が悩み始めた。どうやら禁則事項に当たるのに口に出せたようだ。
「本人が意識していなければ大丈夫なのかしら? 意識してしまうと……、うん、口に出せないわね。紙に書くのも意識しないとダメだから無理なのよね。検証の余地があるわね。
どうにかリョーマに伝える方法がないか、私の方で探ってみるわ!」
今のところ、これ以上は情報を引き出せそうに無いようだ。けど、魔王か……。これまた話が大きくなってきたな。そう言えば俺が生まれた時の神託でも、魔王って単語が出てきてたな。あれは魔物の王という意味の魔王だったけど、今回の魔王は何だろう。
「今日のところは、私からできる話はこれくらいね。
……ん? お茶が冷めてしまったわね」
そう言いながら師匠はまたベルを鳴らすと、ウェイトレスさんがやってくる。ちなみに、この部屋は特殊な魔法がかけられていて、部屋の中の音が外に漏れることはない。但し、このベルの音のみ外へ響く仕組みらしい。
「おかわりをお願いできますかしら?」
「畏まりました。暫くお待ちください」
ウェイトレスさんは一礼すると部屋を出ていった。
「さて、リョーマはこの1年でまた強くなったのかしら? そのあたりの話を聞かせてくれる?
あ、その前にあっちね。白い空間に女神様だっけ? 私たちとは全然違う転生をしたようね」
うーむ、聞かれるとは思っていたけど、どこまで話すべきかな。巫女のシーラ様はもちろん、両親にも俺が転生者である事や、女神様に会った事などは話していない。
でも師匠は同じ転生者だし、敵対している訳でもない。権力者という意味では若干気になるが、権力を使って俺の力を求めてくるとも考えられない。そもそも前に会った時よりかなり丸くなっているような気がする。少しくらいは経緯を話しても問題はないだろうか。
「では、お茶が来たら少しお話させて頂きますね」
《従魔ポチを通じて、種族魔ドワーフが従魔契約を申し込みました。
承認しますか?》
「ふぁっ!?」
うわ、変な声がでた。魔ドワーフって何だ? そう言えば、かなり前に魔エルフってのも従魔にしたけど、それのドワーフ版かな……。
「な、何? どうしたの!?」
「い、いえ、何でも……あ、師匠は魔エルフとか魔ドワーフって知ってますか?」
「魔エルフ……、確か学園で習ったわね。
人族に対して魔人族って種族があるでしょ? それと同じようにエルフ族には魔エルフ族、ドワーフ族には魔ドワーフ族が居ると言われているわ。
ただ、魔人は普通に居るけど、魔エルフと魔ドワーフは歴史上に出てきたことはない、伝説の存在ね。普通のエルフやドワーフよりも精霊や妖精に近い存在だと言われているわ」
「な、なるほど。ありがとうございます。参考になります」
伝説の生き物ですか……。
1年ぶりのポチ直轄の従魔申請だし、承認しない訳にはいかないな。直属は6人目か。
《魔ドワーフを従魔ポチを通じて、従魔にしました。
名前を付けて下さい》
来た、俺の最大の試練。名付け。しかし、俺もこの1年で少しは進歩したんだ。安直にマドワフとか付けたりしないぞ。ドワーフと言ったら鍛冶、伝説の生き物との事だから、ケルト神話の鍛冶神の名前を頂いて……あれ? 名前何だったっけ?
「すみません師匠。ケルト神話の鍛冶を司る神の名前知ってます?」
「え、何? 急に……。うーん。さすがに知らないわね……。さっきからどうしたの?」
師匠も知らないか……。ゴブ何とかだったと思うけど……ダメだゴブリンが頭から離れない! 離れてゴブリーーン。
《魔ドワーフを従魔ポチを通じて、ゴブ・リーンと命名しました。
これにより、従魔ゴブ・リーンは従魔ポチの配下となり、取得した経験値の一部が従魔ポチにも譲渡されます》
あ、……やっちゃった。ゴブリンって強く念じすぎた。
ごめんなさい魔ドワーフさん。これから貴方はゴブ・リーンです。そして今思い出したけど、ケルト神話の鍛冶を司る神様はゴブニュでした。 (今更)
《従魔ゴブ・リーンのユニークスキル【スキル共有】により、レジェンドスキル【万物創造】を取得しました》
え? 何それ。




