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第5話 王都

 盗賊の襲撃から2日、馬車は既に王都目前で、そろそろ王都が見えるところまで来ていた。


 盗賊の襲撃で、仕事としてはほぼ達成されてはいるが、依頼内容は一応王都までの護衛となっている為、そのまま馬車で移動をしている。ゴメスさんは王都で報告やら何やら、事後処理もあるらしい。


 また、保護されたスズキさんについては、兵士たちに連れられて別途王都へ護送されるとの事だ。王都に着いたら、暫くは俺も忙しいだろうから、落ち着いてから探し出して色々と話を聞かないといけない。女神様が言っていた転移・転生者の1人かもしれないからね。


「リョーマさん、見えてきましたよ。アレがこの国の王都です」


 丘を登り切ったところで視界が開け、デグモ国の王都が見えてくる。なだらかな丘陵地帯の合間の比較的平らな土地に大きな街が造られていた。


 円形の城壁に囲まれていて、外周だけでなく内部に幾重にも城壁がある。外へ外へと度重なる王都拡張をした結果、このような形の都市となったらしい。そして中央には、一際大きな建物、王城がある。


 最外周の城壁の外には、エナンの街と同じように農作地が広がっており、その合間を縫うように何本かの街道が門から外へ向かい伸びている。今、俺たちが進んでいるのが主要街道ではあるが、それ以外にも様々な都市に向かう街道が整備されているのだ。


 そして、王都で何より気になるのは、街の中にダンジョンがある事だ。一番内側にある城壁の外側にダンジョンが存在しているらしく、王都は昔ダンジョンを中心に栄えた街だったとの話だ。今はもう廃れてしまっているとの事だが、一度行ってみたい。


「本当にありがとうございました。兵士の消耗もゼロで、盗賊達も殺さず捕らえたお陰で、アジトを聞き出して潰す事もできそうです」


「こちらこそ、ありがとうございました。色々と良い経験になりました」


 1番の収穫は転移者と思われるスズキさんの発見だけどね。


「俺とウースは結局、何もしてないからな。こんなんで依頼達成になって良いのか」


「大丈夫ですよ。普通の(・・・)護衛依頼だったら、魔物や盗賊に襲われず移動だけなんて、良くあることじゃないですか? 問題有りませんよ。

 ちょっと今回のケースが特殊だっただけです」


「スラッシュさん達は魔物の警戒とかやってくれたじゃないですか。僕なんて基本的にゴメスさんの隣に座っていただけですよ。

 途中で護衛依頼の基本とかも教えて頂けて僕も有意義でしたし」


 魔物の探知と、近づいてくる魔物をピンポイントで威嚇して追い払ってたけど、それは言わなくて良いだろう。


「そうか? そう言って貰えると助かるな」


 そんな話をしている間に王都の城壁がどんどん近づいて来た。大きな門の前には数十人程の列が出来ている。街に入るチェックかな? これに並ぶと少し時間がかかりそうだ。と思っていたら、


「ああ、私達は隣の兵士用の門から入りますよ。それくらいの優遇はさせて下さい」


 との事で、並ばずに通過することができた。王都に入ればそこで解散である。


「それでは、この度は本当にありがとうございました。これにて依頼は完了です。

 後日、追加報酬分もギルドに支払っておきますので、受け取りをお願いします」


「追加報酬ですか?」


「はい。盗賊は全員生け捕りにする事ができましたので、後ほど犯罪奴隷として売られる事になります。捕らえたのはリョーマさんですから、もちろんその売却益のほとんどはリョーマさんの物となります。

 それと、兵達がアジトを捜索するはずですが、情報を聞き出せた功績で更にプラスですかね? そこは戻ってから私が上司と交渉します」


 詳しく聞くと、護衛依頼中であっても、倒した魔物や盗賊の戦利品は依頼者ではなく、倒した冒険者の物になる契約が多いのだとか。今回も然りだ。


 依頼を受ける時に、そのあたりの説明は一切聞いて無かったからな……。次からはちゃんと依頼内容は確認しよう。


「それではゴメスさん。4日間ありがとうございました。スラッシュさんとウースさんも、またどこかでお会いしたらよろしくお願いしますね」


「ああ、俺たちは暫く王都で活動するつもりだ。お前さえ良ければ、また一緒に依頼を受けようぜ」


「はい、機会があればよろしくお願いします」


 こうして護衛依頼は無事に終了したのだった。



 ☆



 ゴメスさん達と別れた俺は、1人で大通りを歩いていた。ギルドへの報告はいつでも出来るので、まずは宿の確保だ。


 とは言っても、宿屋を探すわけではない。事前に入学手続きは済ませてあるので、学園の寮に入れるのだ。


 デグモ学園へ入るには2つの方法があり、まず1つが俺が取った方法。普通に高い入学金を支払う事だ。そしてもう1つは事前に実施される入試を受け、優秀な成績を取る事だ。こちらは入学金が免除される。


 前者は貴族や金持ちの子息用、後者は国として優秀な人材の発掘用だそうだ。俺は入試を受けに来る事が難しかったので、普通に入学金を支払った。


 また、事前に全新入生で実力テストがあるらしく、その結果で1年間のクラスが決定される。俺は数日余裕を持って移動したので、試験は3日後のはずだ。


《次の交差点を右です》


 事前に王都の地図を確認してあるので、【アナウンス】のナビに従い歩いていく。


 初めての王都は何もかもが新鮮だ。エナンの街も大きかったが、王都はそれに輪をかけて大きい。何個かの城門を越え、街の中心近くまで来たところで、学園が見えて来た。


 広大な敷地を有するデグモ学園は、街の中だと言うのに異彩を放っており、門の向こうにはお花畑が広がっていた。頭の中が、ではなく現実に。


 その向こうに校舎が見えている。とりあえず、エナンの神殿で学んだ通り、守衛さんのところで入門手続きだ。


 そんな事を考えながら歩いていると、後ろから何台かの馬車が俺を追い抜いていく。ああ、貴族の人たちは自分で歩かずに馬車で行くのか。


 俺も馬車で来た方が良かったかな? 一応、貴族と同等の扱いを受ける大神官の息子だし……。まあ、今更だけど。そう言えば、服装も冒険者の格好のままだったな。これも今更か。


「すみません。入学予定の者なのですが……」


 守衛まで辿り着いた俺は、門の横に立っていた兵士に話しかける。


「ああ、一般枠の子か? よく来たな。校舎の裏手に寮があるからそこに向かいな。道に迷ったら、誰かに聞けば教えてくれるだろう。

 新入生は一般枠に辛く当たる傾向があるから気を付けな。学年が上がると、お互い認め合ったりして無くなっていくけどな」


 俺は一般枠じゃないけど、格好が格好だからな。まあ、箱入り息子・箱入り娘が多くて、入学したての頃は庶民を見下したりしてるんだろうな。


 俺はそんな面倒な奴に絡まれるテンプレは発生しないでくれる事を祈りつつ、寮に向けて歩き始めたのだった。

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