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幕間 とある少女の事情

 私の名は、正確には私の前世(・・)の名前は瑠璃(るり)、気が付いたらこの世界の王族に転生していた。


 前世では体が弱く、常に入退院を繰り返す生活をしていた。生まれた時に病院の先生から「長く生きられても10歳までです」と宣告されていたらしい。


 それを考えたら15歳まで生きたんだから、我ながら頑張ったと思う。


 もちろん先に逝ってしまい、両親にはとても申し訳ない事をしたと思っている。しかし、こればかりはどうしようもない。私は運命だったのだと自分の死を受け入れた。


 母が最期に私にかけてくれた言葉は「そんな体に産んでごめんなさい」だった。逆に私は「こんな体で生まれてきてごめんなさい」と答え、それが最期の言葉だったと記憶している。


 ☆


 次に気付いた時は、転生して既に7年経っていた。


 王城で暮らしてはいたが、妾の子であり、兄弟達からは疎まれ、いじめられている。死んだ方がマシだと思う日々が続く。そんな状況だった。


 そして記憶を取り戻したその日は、学園で2人の姉に捕まり中庭にある池に沈められた。遂に死ぬのかな? そう思いつつそのまま意識を失った私は、次の瞬間真っ黒な(・・・・)空間に佇んでいた。


 それと同時に、前世の記憶も思い出した。ああ、前世は15歳、今世はその半分以下の7歳で死んじゃった?


 そんな事を考えていたら、目の前に急に人が現れた。黒いモヤのようなモノに覆われていて外見は分からないけど、雰囲気は男の人のようだ。黒い空間に黒いモヤで何故認識出来るのかは謎だけど。


「やあ、はじめまして。ボクは神様だよ」


 状況が良く理解できない。何故私の目の前に神様を名乗る男(声が中性的で断定はできないけど)が居るんだろう?


「君はファンタジー小説が大好きだろう?」


 全く持って状況が理解できない。何故ここでファンタジー小説の話が出てくるんだろう? まあ、確かに前世で病気がちだった私は本を読むのが趣味で、その中でもファンタジーが大好きだった。


「ふふ、そうだろうそうだろう。ボクの話が通じそうで死にそうな魂を選んだからね。そうじゃないと困るよ」


 死にそう(・・・・)って事は死んでは居ないって事なのかな。前向きに捉える事にしよう。


「そうそう、君はまだ死んではいないよ? ちょっとお願いしたい事があって、ここに呼んだんだ」


 ところでさっきから、この人は私の心を読んでいる気がするなあ。


「ふふ、ボクは神様だからね。人の心くらいは読めるさ。

 それで、お願いなんだけと、聞いてくれるかな? もちろんタダとは言わないよ?」


 お願いの内容にもよるけど、人には出来る事と出来ない事がある。前世と今世でイヤと言うほど学んだ事だ。


「何もキミ1人でやってもらおうなんて思っていないよ。他に6人、合計7人にお願いするつもりさ」


「とりあえず、話だけでも聞かせて貰っていいですか?」


 あ、声を出せた。普通に会話もできるんだ。


「これを聞いたら引き返せないよ。とりあえずは無し。ボクのお願いを聞いて帰るか、このまま溺れ死ぬか、2つに1つだ」


 何だ、結局選択肢は無いんじゃない。


 いつもそう。私には選択の余地なんてない。前世では病気になす術もなく殺され、今世では兄弟に……。


「そうだね。じゃあ、キミの2回の人生で初めての選択だ。生きるか死ぬか、好きな方を選びな」


 次に死ねば、また記憶を取り戻すなんてある訳ない。そうなったら、兄弟達に今日までの報いを受けて貰うこともできない。私がどんな思いでこの7年生きてきたか、知って貰うまでは……


「……死ねない! 私は死なない! あの兄弟達を見返してやるまで、絶対に死なない!」


「よし、契約成立だ。それじゃ、お願いを言う前に、見返りの説明だ。

 キミにはレジェンドスキルを1つ、それと好きなレア以下のスキルを何個か上げよう」


 レジェンドスキル……。今世の私の記憶によると、それぞれが世界で1人か2人しか持っていないような、超レアなスキルだ。


「どんなスキルになるのかはキミ次第ではあるけど、紛いなりにもレジェンドスキルだ。使い物にならない、何て事は無いと思うよ?」


「ええ、ありがとうございます。それでお願いと言うのは……?」


「そうだね。レアスキルは後で決めて貰うとして、ボクのお願いの話をしようか。

 ボクのお願いはシンプルだよ。魔王が目覚める前に、魔王を滅ぼして欲しい。

 魔王がとある封印されたダンジョンに眠っているんだ。その封印を解き、最下層に居る魔王を倒して欲しい。

 その魔王は近い将来、力を蓄えて地上に攻めてくる。だけど、ボクは地上に干渉はできないんだ」


 自称神様からのお願いなだけあって、内容はかなりヘビーだった……。


「自称ってヒドイなあ。とにかく、他の6人と協力してダンジョンの封印を解くんだ。

 封印を解く方法は禁則事項にあたるから話せない。

 だから、7人それぞれにキーワードを教える。そして7人揃った時に、ダンジョンの封印は解かれるって事だ。面白いだろ?」


「何となく理解しました。他のメンバーも私と同じように前世の記憶を持っているのですか?」


「うん、良いね。やっぱり話が通じそうなのを選んで良かった。

 全員が前世の記憶を持った転生者じゃないよ。中にはキミの前世の世界からの転移者も居る。

 全員、キミが居るデグモ王国の王都に行くように指示を出すつもりだから、キミはそのまま待っていたらいいよ。5年以内には揃うと思う」


 5年って思ったよりスパンの長い話だ。まあ、神様だから時間感覚も違うのかな。


 ☆


 ───こんな感じで、私はレジェンドスキル【魔法創造】と他に魔法系のスキルを手に入れた。


 そして、兄弟達を見返してやる為に、このスキルを磨き上げる事にした。


 私が考えた方法は至ってシンプル。冒険者になり力を付ける事だ。


 この職業、周りに舐められるわけにはいかない。まず言葉遣いを変えて強い口調にしてみた。丁寧な言葉遣いだと冒険者は舐められそうだから。


 まだ足りない。


 これだけじゃあダメだから、態度も昔読んでいたファンタジー小説の主人公みたいにしてみた。自分でもちょっと嫌になるくらい横暴な態度だ。


 でも、まだ足りない。


 2年かけてレベルを上げ、冒険者ランクもBになった。有名にもなったし、少しは兄弟達も私の事を見直してくれるかと思ったけど、そうでも無かった。


 まだまだ足りない。


 どうしたら、あの憎らしい兄弟達を見返してやれるだろうか?


 そんな事を考えながら、年末年始の長期休暇で訪れた地、エナンの街で私は運命の出会いを果たした。


 まだ5歳なのに、私を遥かに上回る実力。5歳とは思えない達観した言動。正直、直ぐに私は彼のトリコになった。恋愛感情云々ではなく、人としてだ。この時はまだ……。


 更に森でゴブリンキングに襲われた時は、もうダメかと思ったところで助けられた。前世も含めて恋愛経験ゼロの私も流石にキュンと来た。


 そして、多分この子は転生者だ。7人の内の1人だろう。私のお仲間なら、きっと王都に来てくれるはずだ。


 何か、兄弟を見返す事なんてどうでも良くなってきたな。


 今はただ、この子が王都に来る日が待ち遠しい。

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