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第14話 報告

 森を出ると、母親は本気で心配だったらしく、家の裏手でずっと待ってくれていた。コッソリ付いて来なかっただけ、母も成長したのかな!?


 待ってくれていた母にお礼を言って、お昼を食べてから冒険者ギルドへ行く事にした。


 今回は特にチンピライベントもなく無事にギルドまで到着した。昼と言う事もあり、冒険者はみんな冒険に出ているのか、人影は少ない。


 少し昼を過ぎたけど、他にあの依頼を受けられる人は、ほぼいないとの事だったから問題はないだろう。


 ……そう思っていた時期が俺にもありました。


「ええ!? 他の人が受けちゃったんですか!?」


「はい、ちょっと前に他の支部の特例で冒険者になった子が来て、あの依頼を受けてしまったの」


 ギルドに着いて、犬耳の受付嬢マリーナさんのところに行くと、そんな事を言われた。


「ギルドとして依頼の内容に助言する事はできても、条件さえ満たしていたら依頼を受ける事を拒否する事は出来ないのよ。ごめんなさいね」


 あれ? どこかでそんなフラグ立てたっけ? ……ま、まあ予想の範囲内だし? 全然問題ないし? あ、マリーナさんの犬耳かわいいな。


 俺が現実逃避していると、マリーナさんがおいでおいでするので近づく。受付嬢をやっているだけあって、マリーナさんはかなり美人だ。ちょっと照れるな。


「でも大丈夫よ。巫女様はリョーマさん以外の人が受けても、面接で断るって言われていたし、貴方も依頼を受けて神殿に行けばいいの。本来なら依頼を受けた子が帰ってきてから、募集し直しになるけど、今回は結果が分かってるしね?」


 そんな事を小声で俺に教えてくれた。ああ、そう言えばそうだった。それじゃあ実質、指名依頼と変わらないなぁ。何事にも抜け道はあるって事なのかな?


「そうですね! じゃあ、常設依頼の報告だけしたら依頼を受けて神殿に向かいますね」


「あら、もう森に行って来たのね? 薬草かしら? どこに持ってるの?」


 あっ、カバンか何かに入れて来た方が良かったかな? 【収納】から出したら、騒ぎになるかな? 俺が迷っているとマリーナさんがまた小声で話しかけてきた。


「あ、そう言えばリョーマさんは【収納】スキル持ちだったわね? 支部長から聞いているわ。

 ここだと少し目立つかも知れないから、奥に行きましょうか。昼だから人は少ないけど、敢えて悪目立ちする必要もないからね」


 そう言うと、マリーナさんは受付のカウンターを休憩していた別の子に託して、俺を奥の部屋に連れて行くのだった。


 ☆


「これで全部になります」


「……」


 通された部屋の机の上に、採取と言う名の【収納】をした薬草類を積み上げる。傷薬草と呼ばれる一般的な薬草に始まり、少しレアな薬草まで、所狭しと机からはみ出さんばかりに乗っている。


 マリーナさんは途中までニコニコと見ていたけど、段々と顔が引きつって来て、今はただ呆然としている。


「おーい、マリーナさーん?」


「はっ! ああ、ごめんね。あまりに大量の薬草だったので驚いて……。

 これを午前中だけで集めたの? しかも、物凄く状態が良くない!?」


 何本か薬草を持ち上げつつ、マリーナさんがそう言った。まあ、傷付かないように【収納】しただけだからね。ほぼ生えていた状態のまま、根までキレイに採れている。


「この根の部分なんて、上手く採れる人が少なくてとても貴重なのよ! どんな採り方をしたらこんなにキレイに採取できるの!?」


 マリーナさん呆然からの大興奮だ。シッポが千切れるんじゃないかと、心配になるほど揺れている。


「え、えっと、【収納】で、パパッと……」


「そうよねー。そう簡単に教えてくれないわよねー……。

 えっ? 言っちゃうの!? しかも【収納】!? そんな話聞いたことないわ!」


 あ、簡単に教えちゃダメなのかな? 冒険者それぞれのノウハウみたいな? それよりそろそろマリーナさんのシッポが本当に切れそうだ。


「は、はい。薬草に触れて、根まで一緒に【収納】するイメージをしたら、こうなりました……」


「そ、そうなのね……。【収納】を持つ冒険者は多くないから、知られていないだけかも知れないけど、あまり他言しない方が良いかもね?

 もしかしたらリョーマさんにしか出来ない事かも。私は口が硬いから大丈夫だけど、誰にでも言っちゃダメよ?」


 自分で口が硬いって言う人ほど、口が軽いような気もするけど、マリーナさんなら大丈夫かな? 何となくそんな気がする。


「分かりました。今後は気を付けます。

 後、魔石も有るんですけど……」


「あら? 魔石も取って来たのね? ゴブリンかしら?」


 俺は【収納】から魔石を取り出して、マリーナさんに見せる。


「あれ? ゴブリンにしては大きくない? ゴブリンの魔石って豆粒程度よ?」


 俺の取り出した魔石は豆粒ではなく、クルミくらいはある。


「えっと、ゴブリンはゴブリンなんですけど……」


「けど?」


「ゴブリンジェネラルだそうです」


「……」


 あ、マリーナさんまた固まった。とりあえず再起動するのを待とう。


「ゴブリンジェネラルですって!? どこで出会ったの!?」


 あ、再起動した。


「あ、いや、ちょっと待ってて下さい!」


 そう言うと、凄い勢いでトビラを開けて走って行くマリーナさん。と言うか、よっぽど焦ってたのか、俺に対して丁寧な言葉になってたよ。


「支部長ー! 支部長ーー!」


 あ、支部長を呼びに行ったのか。俺はマリーナさんが開けっ放しにしていったトビラをそっと閉めて、しばらく待つ事にした。


 と思ったけど、30秒も経たない内に支部長を連れたマリーナさんが帰ってきた。


「なんだなんだ? 急に引っ張って来て。

 って何だこの薬草の山は!」


「あ、いえ、それはそれで問題ですが、それよりも今はあちらです」


 そう言ってマリーナさんは俺の持っていた魔石を指差す。


「ん? 魔石か? ……っ!? ゴブリンジェネラルだと!」


 あ、今少し間が合ったのは魔石を【鑑定】したのかな? 


「確かに、ゴブリンジェネラルの魔石なんですけど、お二人がそんなに狼狽するほどヤバいものなんですか?」


「あ、ああ、ちょっとヤバいかもな。ゴブリンがゴブリンジェネラルに進化してるって事は、結構大きなゴブリンの集落があるって事なんだ。

 ここ数年は発生の報告は無かったはずだが、コイツはどこで倒したんだ?」


 そう言いながら、アルフさんは森の地図を机に広げようとして……。置く場所がないですね。ごめんなさい。


 一度、薬草は【収納】して、再度地図を広げる。


「えっと、森に入ってこっちの方向に5km程行ったところですね」


「なるほどな。こっちの方は草が結構茂ってるから、あまり行く奴が居ないんだ。5kmとなると、サーシャ殿の監視網の外になるしな。そこでゴブリンが増えているとしたら、有り得ない話でもないな。

 領主に報告して、ギルドで調査団を送るしかないか。……面倒臭えな」


 そう言いながら、アルフさんは頭を掻き毟る。スキンヘッドだけど。面倒事を持ち込んですみません。


「それにしても、リョーマさん。いきなりゴブリンジェネラルを倒して来るなんて、やっぱり凄いんですね! 魔物ランクはC、冒険者ランクCのパーティー(・・・・・)が、何とか討伐できるレベルの魔物ですよ」


 ギルドでは、【鑑定】で見える魔物のランクに合わせて、冒険者ランクを設定しているらしい。自分のランクと同じランクの魔物を4人前後のパーティーで討伐できるくらいの戦闘力を求められるらしい。


 と言う事は、昨日ギルドの入口で俺に絡んできた人(名前は忘れた)が、もうすぐBのCランクって事だったから、あの人が4人居て何とか倒せるのがゴブリンジェネラルって事だ。あれ? それって凄いのかな? 凄くないのかな? あの人基準だと分からないや。


「とにかく、この件はギルドで預からせてもらう。危険な魔物の発見報告と討伐も依頼達成の中に入れておいてやろう。さっきの薬草と合わせてな」


「薬草と魔石は私が責任持って査定に回すから、夕方くらいにまた来てくれるかな? 全部買取でいいのよね?」


 とりあえず、そんな感じで話は収まりそうだったので、俺は薬草を査定に回して、依頼を受けて神殿に向かう事にしたのだった。

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