第11話 5匹目
本日は前に2話投稿しています。ご注意下さい。
ギルドカードが完成したところで、タイミングを見計ったかのようにシーラ様と両親、それに支部長のアルフさんが応接室にやってきた。
「どうやら、無事に登録できたようですね。どれどれ、カードを見せてもらえますか?
……レベル22? ステータスが相当高そうな感じでしたので、もう少しレベルも高いかと思っていましたが、ステータスが高いのは、何かしら特殊なスキルですかね?
まあ、神託でも女神様から詮索はするなと言われていますので、深くは聞きません。冒険者はレベル以外は親しい仲間達以外には能力を隠すものです」
なるほど、シーラ様から冒険者の心得を聞くとは思わなかったけど、そう言うものなのか。
「ふふっ、私こう見えても若い頃に冒険者もやっていたんですよ? 巫女になったのは100歳を超えてからです」
俺のギルドカードを見ながら、そんな話をしていたら【アナウンス】が頭の中に響いてきた。
《従魔ポチが取得した経験値の一部を獲得しました。
レベルが上がりました。
レベルが上がりました。
レベルが124になりました。
【ポーカーフェイス】のレベルが6に上がりました》
それと同時に、ギルドカードの数字が24になる。あ、急にレベルが上がってシーンとしてしまった。
昨日、一気に2レベル上がってから【アナウンス】が大人しいと思っていたら、これまた一気に来たな……。
《従魔ポチが取得した経験値の一部を獲得しました。
レベルが上がりました。
レベルが125になりました。
【ポーカーフェイス】のレベルが7に上がりました》
更に追い討ちがきた。ギルドカードの数字が25になった。静まりかえる室内。俺はレベルが上がった【ポーカーフェイス】を常時発動中だ。
「「「「…………」」」」
沈黙が痛いよ。
「リョーマ君。レベルアップおめでとうございます?」
シーラ様に祝福を頂く。
「あ、ありがとうございます?」
もう、お互い疑問形である。
《従魔ポチが取得した経験値の一部を獲得しました。
レベルが上がりました。
レベルが126になりました》
そしてギルドカードは26となる。また沈黙が部屋を支配する。
「えっと……、ギルドカードのレベルって自動更新なんですね?」
「あ、ああ、カードの登録者が持つと自動的に最新情報に更新される仕組みだ。凄いだろう?」
沈黙に耐えきれず、苦し紛れに俺が発言すると、支部長が答えてくれた。
「凄いですね。どんなテクノロジーが使われているんですかね?」
「何でも大昔の賢者が開発したって話だが、仕組みはブラックボックスだ。ギルドカードを作る事ができる魔道具だけ大量に遺されている」
どこの世界、どこの時代にも、天才っているんだなぁ。今回は裏目に出てるけど。
自分で魔物を狩らなくてもレベルが上がるのが見られてしまった。
「確かリョーマ君は生まれながら【テイマー】スキルを授かったのですよね?
【テイマー】スキルで従魔になった魔物からは経験値を取得できますが、微々たるもののはずです。レベル22が少しの間に26になるほどの経験値となると、従魔は一体何を倒したのでしょうか……? いえ、そもそも従魔契約なんていつの間に?」
正確にはレベル122が126なんだけど。後、【テイマー】スキルは従魔から1%×スキルレベルの経験値が譲渡される。レベルが低いと微々たる量なのだ。
さて、どこまで話したらいいかな。全部話すと大事になりそうなんだよね。今更な気もしなくもないけど。
そもそも支部長もいるこの場で話しても、大丈夫なんだろうか?
俺がシーラ様を見ると、無言で頷かれた。このまま話せって事かな?
「えっと……、まずお察しの通り、先程のレベルアップは従魔からの経験値譲渡によるものです。生まれながらにして、僕は1匹の従魔と契約した状態でした」
よし、ここまでは嘘は吐いていない。良くファンタジー物の小説とかでは、嘘発見の魔道具みたいな物が出てくるから、出来るだけ嘘は吐かないようにしておきたい。
「成る程、それでリョーマは今まで魔物を倒したりした事ないのに、レベルが22もあったのね?」
「いやいや、それでもこの短時間でレベルが4も上がる何てありえないだろ? 従魔はどんな化け物と戦ってるんだって話だ」
ええ、アルフさん。ごもっともです。寧ろ、俺の方がポチは何と戦ってたのか知りたいです。たった数分でレベル122から126、昨日から言えば120から126か……、そんなに経験値が貰える敵って何なんだ!?
「それは僕にも分からないんです。生まれてから従魔に会った事は無いですし、どこに居るのかも分かりません。
ただ一つ言えるのは、僕が冒険者になりたいと言っていたのは、この従魔を探しに行きたいからです」
このくらいまでなら、話しておけば、逆に旅に出やすくなるかな?
「お前が物心ついた時から、冒険者になりたいと言っていた理由がそれか。それで納得がいったぞ。
女神様からスキルだけでなく、従魔も授かって生まれてきた訳か。素晴らしい!
そう言う事なら、この父は応援しよう。まだ見ぬ恋人に会いに行くようなものだよな? 男のロマンだ」
うん、恋人かどうかは分からないけど、会いたいし、止められても会いに行くつもりだ。
でも、パパン肯定的で良かったよ。
「但し、さすがに今すぐとはいかないぞ? 最低でも12歳。学校を卒業してからだ」
まあ、そうですよね。5歳が一人旅とか、いくら異世界でもあり得ないか。
学校の話は、母にも聞いた事があるけど、このまま話を逸らしてしまおう! 俺の秘密は出来るだけスルー大作戦。
「学校……ですか?」
「ああ、来年からお前も学校に通う年だろう? この街の学校は6歳から12歳までで、一般常識や最低限の知識、それに最低限の戦い方を教えてくれる。
その先、才能と金のあるものは王都の専門的な学校に進んでいくが、お前はそのまま冒険者になるといい」
来年って、今日は正月だから丁度一年後か。この国の学校は1月始まりなんだよね。
「そうね、学校で最低限の知識を身につけ、その間にここを拠点に冒険者としての知識も身に付ける。そこまでしたら、母さんも少し安心だわ」
母からもこう言われると、もう12歳までの学生ルートは確定かな? 最低あと7年はポチを探しに行けないのか……。まあ、その間は冒険者をしながら近場を探せばいいか。
「さて、リョーマ君。それで、何故あんなに短時間でレベルが上がったのか、ですが……」
あ、華麗にスルー大作戦失敗!?
「深くは追求するなと女神様からの神託にもありますので、これ以上は聞きません。リョーマ君が話したいと思った時に、話せる範囲で教えて下さい」
シーラ様良い人だ! まあ、女神の巫女様が神託に逆らうわけにもいかないか。その言葉で他の3人も納得してくれたみたいだ。
「さて、かなり横道に逸れた訳だが、本題にもどそう。依頼についてだ」
支部長がそう言った時だった。
《従魔ポチを通じて、種族アークデーモンが従魔契約を申込みました。
承認しますか?》
……。
ポチは悪魔と戦ってた事が判明した。
「ん? どうした? 顔色が悪いが大丈夫か?」
【ポーカーフェイス】さん出番です。
「あ、大丈夫です。話を続けて下さい」
支部長に先を促し、その間に従魔契約を承認する。
《アークデーモンを従魔ポチを通じて、従魔にしました。
名前を付けて下さい。
尚、現時点の名前はパープルです》
えっ!? 元々名前の付いている魔物は初めてだ。さすが悪魔って事なんだろうか?
同じ名前ってのも芸がないから、何か考えないとな。
……よし!
《アークデーモンを従魔ポチを通じて、アクモンと命名しました。
これにより、従魔アクモンは従魔ポチの配下となり、取得した経験値の一部が従魔ポチにも譲渡されます》
悪魔のアクとデーモンのモンを取った完璧な名前だ! アークとも掛かっている。きっと満足してくれているだろう。アクモンゲットだぜ!
久々にポチ直轄の配下ができたな。これでポチの直轄は5匹か。帰ったらメモっておかないと。従魔が増えて、名前を付けるのも、覚えるのも大変だ。
「おい、リョーマ、聞いてるか?」
あ、すみません。聞いていませんでした。




