第42話 王女ミーナの演説
俺たちは全員で王城前の広場に向かった。今回の首謀者であるミーナ王女が演説をすると聞いたからだ。
演説を行うと御触れが出されたのが1時間ほど前。その内容は1時間後にミーナ王女が演説を行うと言うものだった。つまり、そろそろ演説が始まる時間である。
俺とジョージ、そして鈴木さんはそのまま参加しているが、王様を始め、リーナさん、シーラ様、太郎さん、レミと念のためソラも【光魔法】で透明にしている。
ゼムスさんは自前のスキルで気配を絶っている。相変わらず、スキルを使われるとどこにいるのかサッパリ分からないけど、幸い? 従魔のパートナーと言う事で、どんなに気配を絶っていても【マップ】に表示されるので問題はない。
「出て来たわ。あれがミーナ姉さんよ」
背後からリーナさんの声が聞こえる。姿を消してるんだし、【念話】の方が良いんじゃないかとも思ったけど、俺以外のミーナ王女を知らないメンバーにも伝える為だろう。
そう言われて演説が行われるというステージを見ると、豪華なドレスを着た女性が2人の黒髪の男女を連れて出て来たところだった。
リーナさんとは腹違いの兄弟との事だけど、何と言うか……。リーナさんは天才美少女を自称していただけあってお世辞なしにかわいい。だけど、このミーナ王女は……。お世辞にもかわいいとは言えないかな。あとちょっと体形が……。
「前はもう少しスマートだったんだけどね。この1年でどこかから美味しいお菓子がいっぱい出回ってね。それの虜になっちゃったらしいの。……リョーマ、グッジョブ」
透明で見えないけど、きっとリーナさんは良い笑顔でサムズアップしているんじゃないだろうか?
そして、それ以上に気になるのが黒髪の男女だ。どうみても日本人。ここまでは想定内だ。だけど、首に巻いているアクセサリ。あれは上手く隠してるつもりなんだけど、どうみても……。
「これは、勇者の2人は奴隷の首輪を付けられておるな。完全にミーナ王女の傀儡ということじゃな」
ですよね。装飾等を施してそれっぽく見せてはいるけど、あのイヤな感じ。どう見ても奴隷の首輪だ。
「あ、危なかったです。僕も誘拐されずに王城に残っていたら首輪を付けられていたって事でしょうか!?」
「そうじゃな。無害だと思われて付けられなかった可能性もあるが、十中八九は付けられてたじゃろう」
あと、その後ろにも豪華な服を着た人が2人いるが、この2人は同じくリーナさんの兄弟だろう。今回の件の犯人は3人って話だったし。
「おっと、演説が始まるようじゃ」
ゼムスさんのその言葉を聞き、俺はミーナ王女を注目する。
「親愛なる国民の皆様。お集まり頂きありがとうございます。
今回、皆様にお伝えしたい事があり、この場を設けさせて頂きました」
そこまで言うとミーナ王女は一呼吸置き、広場を見渡す。
「……実は、私の父。つまりは国王が誘拐されました」
おっと、まさかのストレート。ド直球で民に報告するの? 良いの?
辺りを見渡すと、さっきまで静かに聞いていた人たちがザワザワし始めている。ですよね!?
「お静かに! 国王は病に侵されており、生死の境を彷徨っていました。そして命が尽きようとしていたその時、忽然と姿を消したのです」
意外にも、嘘は付いていない。今の所だけど……。あ、いや、病じゃなくて毒に侵されていたから若干違うか。
「そして、私はこちらに居られる勇者様方に調査をお願いしたのです」
そこで勇者の2人が紹介され、前にでる。ここから勇者が説明する……のかとも思ったけど、そのままミーナ王女が演説を続けるようだ。
「勇者様方の調査によると、国王を攫ったのは魔王の手の者です。
そう、ここ数百年話題にも上っていなかった魔王が現れたのです!
今起こっている魔物の狂暴化、これも魔王の策略なのです!」
うん。きな臭くなってきた。周りの人達はまたザワザワし始める。そうだよね。急に魔王とか言われたらザワザワもするよね。
「しかし! しかし! 心配は要りません!
こちらには女神様が遣わして下さった勇者様がいらっしゃるのです!」
ここで勇者の2人が更に1歩前にでて手を振る。
「勇者様が居たら大丈夫だ!」
「そうだそうだ! 勇者様万歳!」
「ミーナ様万歳!」
「「「うおーー! 勇者様ーー! ミーナ様ーー!!」」」
何て言うか、如何にもサクラだと思われる数人がそう叫ぶ。これで、国難から救った自分が次期王、女王の座に就く。そんな筋書きなのかな? ……穴だらけの筋書きだけど。と言うか、これは……。
「何か、私たちがやろうとしている作戦をお膳立てしてくれてるようにしか見えないわね」
ですよね? ただのバカなのか、こちらの情報が洩れているのか……。間違いなく前者なんだけど。
「お静かに! そう。勇者様の力を持ってしたら、すぐにでも魔王を撃ち払い国王も救出されるでしょう!
何も心配要りません! 皆様はいつも通り生活して頂いていたら構いません!」
それなら下手に民衆に不安を与えるような事はせず、解決してから演説したら良いのでは? 王女様のアピールの為だけの演説だと、分かる人には分かってしまうだろうに……。本当に残念な王女様だ。
「そして、もう1つ報告があります」
ん? もう1つ? 何だろう。
「実は王族が次々と王と同じ病により、床に臥せっています。これも今考えると魔王の仕業だと思われます」
うわ、派手に始めたんだな。後でポーションばらまかなきゃ。
「この後ろに控えている2人と私。未だに動けるのはこの3人だけです。
女神様により勇者を遣わされた私たちにはきっと女神様の加護があり、魔王の呪いを寄せ付けないのでしょう!
そう。私たち3人は女神様に選ばれたのです!」
「「「うおおー! ミーナ様!! 女神ミーナ様!!」」」
「「「「「ミーナ様! ミーナ様!」」」」」
何か、そろそろサクラがうざい。と言うか、サクラ以外にも伝染してミーナ様コールが起こっている。
「チッ! 女神様の名を語るとは、何事ですか! この場で断罪を……!」
ちょ、シーラ様が切れそうだ。舌打ちするシーラ様とか初めてみたよ! 透明で見えないけど!
周りが騒がしくなってて良かった。
「お、落ち着いて下さいシーラ様。大丈夫、今は言わせておいて下さい。後で必ず後悔させてやりますので」
「はっ! ごめんなさい。ちょっと頭に血が上ってました」
何とかシーラ様を抑えると、ミーナ王女の演説は締めにさしかかる。
「お静かに!! それですので、これからは私たち3人が陣頭指揮を執ります。
軍部も私たちの指示に従って頂きます」
ああ、この演説は民衆向けのアピール以上に、軍部を取り込むための演説だった訳だ。
そして後ろの方で「ミーナ様、万歳!」とか騒いでるのを聞きながら、俺たちは作戦を詰める為にその場を後にしたのだった。
実は首謀者と勇者がそろってたんだから、この場でサクッと終わらせても良かったんだけど、ちょっと思うところがあったので止めておいたのは皆には内緒だ。




