第31話 竜馬(りゅうま)
なんでレミが水戸のご老公を知ってるんだろう? いや、何となくは分かる。かなりの確率で転生者なんだろう。
だけど、ここはツッコむべきか……。
「聖女様、私は先ほど神官長から紹介されましたジョージです。
一つ聞いていいですか?」
俺が悩んでいたら、ジョージがレミに質問を始めた。
「リョーマの友達のジョージさんだね。どうしたの?」
「間違っていたら本当にすみません。
聖女様、もしかして転生者ですか?」
おっと、俺が悩んでたのは何だったのか。ジョージ君ストレート。
「えっ……。あっ、水戸のご老公って言っちゃった!」
レミは無意識だったらしい。そして転生者については否定もなし。
「と言うか、ジョージさんもそれを知っているって事は転生者? と言うか、鈴木さんと太郎さんは間違いなく転移者だよね……」
あー。そうだよね。鈴木さんと太郎さんは見るからに日本人だからね。名前も見た目も。うん。もう全部説明しよう。
「えっと、僕が説明していいですか?」
「ああ、そうじゃな。リョーマ頼めるかの?」
俺が説明を申し出ると、ゼムスさんが代表してそう答えてくれた。
「それでは。レミ、驚かないで欲しいのですが、ここに居るゼムスさん、リーナさん、ジョージ、それと僕は転生者です。鈴木さんと太郎さんはお察しの通り転移者です」
「えっ! リョーマも!? と言うか、そちら側全員!?」
さすがにみんな転移者や転生者だとは思っていなかったらしく、かなり驚いた様子だ。シーラ様とソラも驚いている。
「それで、レミも転生者なんですよね?」
「……うん、そうだよ。私は先月記憶が戻ったばかりだけどね。
それとさっきは国の危機を救う為に王都に来たって言ったけど、本当は嘘なの」
本当は嘘とは中々に哲学だね。ポチの口癖なのだ。
「実は個人的な【神託】を頂いてね。前世の恩人が王都に居るって。だから探しに来たの」
へぇ。転生者や転移者は結構珍しいらしいから、恩人はもしかしたらこの中に居るのかもね。年齢から考えたらゼムスさんか鈴木さんかな?
「そうだったんですね。
えっと、とりあえず先にこちらの状況を説明しましょうか?」
「うん。お願い」
その答えを聞き、俺は異邦人について自称神様の話も含めて説明する。
「なるほど。ここに居ない、勇者として召喚された2人を合わせて7人を異邦人って呼んでるんだね。
そしてリョーマはそれとは関係ない転生者だと」
「はい、その通りです。僕は7年ほど前に転生しました。事故で死んでしまって、こちらの世界に転生する事になったんです」
「7年前……。事故……。リョーマ……。……竜馬さん?」
え? 今レミはリョーマじゃなくて、竜馬って言った?
「え? 聖女様なんでリョーマの前世の名前を?」
そこでジョージがまたツッコむ。そう言えば、ジョージには女神様が俺の名前を間違えたって話して大笑いされたんだった。
「えっ! リョーマ、本当に竜馬さんなの? え? え?」
何かレミが混乱している。
「レミ、どうしたんですか? 何で僕の前世の名前を知ってたんですか?」
「本当に竜馬さん? 女の子を助けてトラックにはねられてしんじゃった竜馬さん? ポチちゃんの飼い主の竜馬さん?」
ポチまで知ってるなんて……。まさか?
「そ、その通りですが……。なぜそこまで知ってるんですか?」
何となく想定はしているものの、一応聞いてみる。
「私がその女の子だからだよ! 良かった! こんなに早く会えるなんて思っても無かったよ!!」
レミはそう言うと、俺に体当たりしてくる。いや、体当たりじゃない。思いっきり抱き着いて来た。やっぱり、俺が助けた女の子だった。
「良かった! 良かった! ずっと、ずっと心残りだったの。
事故で意識がないまま亡くなってしまった竜馬さんと、事故でそのまま死んでしまったポチちゃんにお礼が言えなくて。もちろん、墓前では何回もお礼を言ったよ。でもきっとそれは届いていない気がしてたの」
あ、うん。まあ、死んですぐ転生したから、お墓の前でお礼を言われても届かないよね。
いやいや、問題はそこじゃない。
「で、でも。それだとおかしくないですか? 記憶が戻ったのは最近でも、レミがこの世界に転生したのは僕より前ですよね?」
どうみてもレミの方が歳上だ。時系列が合わない。
「それはね。竜馬さんとポチちゃんにお礼を言う為に、女神様に時間を戻してもらったからなの。私は貴方に助けられてから30歳くらいまで生きたみたいなんだけど、過労で死んじゃって……。
あ、生きたみたいってのは前世の記憶が全部戻った訳じゃ無いからだよ。時間を戻した代償らしく、竜馬さんの事は覚えてるけど、他は結構曖昧なんだ」
怒涛の勢いで語られるレミの事情。でも、どうしてお礼を言うのに時間を戻す必要があったんだろう?
「あー、何で時間を戻してもらったのか? ……なんでだっけ? その辺りも記憶が曖昧なんだよね」
覚えてないのか。残念だ。
「とりあえずレミ。そろそろ離してもらっていいですか?」
ずっとレミに抱き着かれたままだったけど、さすがにそろそろ苦しいので離してもらう。
「あっ、ごめんね。でも本当に会えて良かった。これできちんとお礼が言えるよ。
竜馬さん。あの時は命を懸けて助けてくれて、本当にありがとう。お陰で、私は30歳まで生きる事ができました。折角助けてもらったのに30歳で死んじゃってなんか申し訳ないけどね」
「いえ、僕も助けた女の子がこんなところまでお礼に来てくれるなんて、思ってもいませんでした。嬉しいです。
ポチも喜ぶと思いますよ」
「そうだ! ポチちゃんは? 一緒じゃないの?」
そうそう、女の子を助けたのは俺と言うか、ポチだからね。ポチにもちゃんとお礼を言いたいんだろう。
「ポチは……封印されたダンジョンの奥です。僕もまだこの世界に来てからポチに会えていないんです」
「封印されたダンジョンって、さっきの話にあった異邦人が7人そろったら解放できるっていう、あのダンジョン?」
「ええ、そうよ。だから私たちは、残りの2人。勇者の2人を確保しないといけないの。
さっきの話に戻すけど、姉たちの悪行を裁き、勇者を確保する。その為には聖女であるレミの力が必要よ」
「なるほど、そう言う事なら、尚更だね。私が神殿を代表してミーナ王女の悪事を暴く。任せて頂戴!」
レミのやる気が更にアップしたみたいだ。
「まさか聖女殿まで転生者だったとは驚きじゃったが、やる事は変わらんな。続きを詰めようかの」
そして、その日は遅くまで作戦会議が続くのだった。




