第26話 ダイダ防衛戦
魔物の数とレベル帯を報告すると、レオンさんの顔がみるみる青ざめて行く。
紛いなりにも獅子なんだから、もっと堂々としていて欲しい。と思うのは酷だろうか?
「ありえない、ありえない。何だその魔物のレベルは……。
いや、まあ、確かに報告にあった情報からするとレベル50~60は想定していたさ。そのレベルでも手に負えないが……。
しかし、最大レベル100弱だと!? 国の終わり、いや世界の終わりじゃないか!」
レオンさんは興奮しているのか、徐々に声が大きくなって行く。
「大丈夫です。レベル50以上の魔物は僕たちが対応します。残る冒険者と兵士の方でレベル40台の魔物をお願いします」
内訳としては、約200匹の魔物の内、およそ半分がレベル50以上だ。
「いやいやいや、いくら君がSランク冒険者でAランク冒険者のリーナ殿がフォローするとは言え、ありえないだろう!
レベル50以上の魔物100匹だぞ? Sランクでもレベル50なんて1匹で限界じゃないのか!?」
むしろ、俺とリーナさん、ジョージとカガルムで時間はかかるけど、全ての魔物も殲滅できると思う。ただ、それだと他の冒険者の不平不満が出るだろうから、少しは回してあげないとね。
ジョージはまだレベル50前後の魔物の相手が精一杯だろうけど、リーナさんはレベル90位まで対応可能だろう。もう少し時間があれば、もっとレベルを上げられたんだけどね、ら
カガルムに関しては何の心配もしていない。レベル100弱の魔物なら瞬殺してくれる可能性もある。
「レベル50くらいなら、ジョージ1人でも対応できますよ。問題ありません。
それより問題は兵士とBランク以下の冒険者の方々です。レベル40の魔物に複数人で対応したとして勝てると思いますか?」
「うーむ。問題ないと言われてもなぁ。どちらにしろ今からだと住人の避難も間に合わんし、君に賭けるしかないか……。
そして、レベル40の魔物だとBランクの冒険者をリーダーにして10人を1チームとして編成して何とかなるかどうか……。微妙なところだな」
うん、そうだよね。どうしたものかな。あ、そうだ。
「とりあえず冒険者の方々がケガをしても直ぐに戦線復帰できるように、このポーションをどうぞ」
俺はさっきウースさんに渡した物と同じ#ポーション__・__#を数ダース出すとレオンさんに渡す。
「ああ、物資の提供は助か……、ちょっと待て!
何だこれは! このポーションの色、まさか……」
さすがにギルド長にもなると知ってるか。はい、エリクサーです。
「それは手作りなのでちょっと色が変わってしまった、タダのポーションです。良いですね。タダのポーションです」
大事な事なので2回言っておいた。
「あ、ああ、コレはタダのポーション。コレはタダのポーション」
俺の気迫に押されたのか、レオンさんは壊れたレコードのようにタダのポーションを繰り返している。
後は、即席だけどステータスアップの装飾品でも作って渡そうか。
【万物創造】で各種ステータスアップと自動回復する腕輪を大量生産して行く。能力と生産性を重視したので効果は数日で切れるけど、今回の対応には十分だろう。
とりあえず100個。どんどんと完成していく腕輪にレオンさんは開いた口が塞がらないようだ。
「コレを冒険者の人たちに配布して下さい。残念ながら付与した効果は数日で切れてしまいますので、効果が切れたら普通のアクセサリーとして使ってもらって良いですよ」
「待て待て、これ材質は何だ? 俺にはミスリルの腕輪に見えるんだが? 普通のアクセサリーとしても価値は相当の物だぞ!?」
あれ、やりすぎちゃった?
「リョーマはホントに後先を考えないわね。
でも、今は緊急事態よ。今回の緊急依頼に参加した冒険者の報酬がわりにでも使って貰えば良いんじゃない?」
「むう、まあリーナ殿かそう言うなら、そうしよう。
その分、リョーマ君に支払う報酬は少し上乗せさせて貰うよ。……無事に街が守り抜けたら、だけどね」
レオンさんはまだ心配しているらしい。さっきの腕輪と、万一の時のエリクサーがあれば多分B、Cランクの冒険者でレベル40台の魔物は対応可能だろう。
後は俺たちでどれだけ大物を退治できるか。どれだけ、と言うかどれだけ早く、かな?
☆
今、俺とリーナさん、そしてカガルムは今街の西門を出て少し行ったところにいる。
あの後、ちょっとレオンさんと打ち合わせした後、俺たちは先にこちらに移動したのだ。
ジョージは万が一があると危険なので後方部隊、つまりレベル40台の魔物対応のチームに置いてきた。
「リーナさん、全部倒す必要はないですからね。
ただレベル50以上の魔物は通さないように気を付けて行きましょう」
「ええ、分かったわ。私もまだレベル90以上の魔物は不安だから、そこはリョーマとカガルムに任せるわ」
「ええ、僕はレベル80以上の魔物を中心に数を減らしますね。カガルムは俺たちが撃ち漏らした魔物を適度に間引いてくれ」
ガルム隊はそれぞれ【鑑定】の魔道具が装備されているので、魔物のレベルを把握しながら、上手くやってくれるはずだ。
カガルムにそう指示を出すと、俺は正面を見据える。
獣系と虫系の魔物を中心に総勢200匹近くがひしめいている。
空がかなり明るくなってきて、魔物達は今にも街に殺到しそうな感じで臨戦態勢だ。
「それじゃあ、サクッと終わらせちゃいましょうか」
「とりあえず、レーザー打っとくわね」
そう言うと、リーナさんはこの1年で進化した極太レーザーを放つ。
今ので軽く5~6匹の魔物が蒸発したんですけど。あれ、これ俺もいらない感じ?




