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私立・神楽椿学園探偵部の事件ノート  作者: サトル
7.神楽椿学園は曇りのち雨
67/71

7-6


「――恵さん、どうですか?」

「全然です。……どの掲示板にも、それらしい人物に関する書き込みはありません」


 数日後。俺が部活を終えたその足でカルムへ向かうと、そこには既に恵の姿があった。

 調査の結果はあまり芳しくないものだったらしい。恵を見つめている大宮先輩の表情は暗かった。


「……いえ、よく考えたら無茶な相談でしたよね。……他の部員さんもずっと他の依頼で動いてある中で、人員を割かせてしまってごめんなさい」


 先輩自身、この数日色々とメールを送り探ってみたらしい。だけど、増えていくのは“新作の情報”だとか、出演者だとか……プライベートに踏み込んだ内容はほとんど聞けなかったようだ。

 顔写真の一枚でもあれば話は全然違ったんだろうけど……。まあ、見知らぬ同性に自分の顔写真を送りたいとは思わねえよな。自分の顔に自信がない、って言ってるやつはなおさらだよ。

 いよいよもって手詰まりだ。


「諦める前に、最後に……“罠”でも仕掛けてみませんか?」


 肩を落としていた先輩の姿をしばし眺めていた恵がふと、沈黙を破った。

 罠……ゴキブリホイホイみたいな……あ、多分違うらしい。司が“違うと思うよ”ってアイコンタクトを送ってきている。


「大宮さん、近いうちに近辺で行きたいイベントとかないですか? できれば、あまりお金がかからないような誰でも観覧できるイベント」

「え、ええと……そうですね、だったら。ちょうど今週末……隣の区に新しく商業施設がオープンするでしょう? ……そこで“ヒーロー大集合ショー”が開催されると聞いています、けど」


 ――ああ、そういえば沙綾のやつも言ってたような。“あの有名ブランドが県内初出店するんやで!”だとかなんとか。それがその商業施設って事か。……ん? まさか、罠ってことは。


「まず。大宮さんはどうしても外せない用事があっていくことが出来ないとでも伝えてください。その上で“行くなら写真や動画を送ってほしい”とでもお願いするんです」

「そうか、そうすればロクドウさんをおびき寄せる事が出来る!」


 これまでメールのやり取りを重ねてきているのならば、先輩がそのイベントに行きたかったということは容易に想像できるだろう。もし本当に居住地域が近いんだとしたら、ロクドウも行く可能性は大いにある。

 同じ趣味である、という事を利用した罠って事だな。


「今時、特撮が好きな中学生なんてありふれているでしょう。その中からロクドウさんを見つけ出すことは容易ではないかもしれませんが……」

「やる価値はあるな!」


 司はコクコクと頷いている。可能性は決して高くはない、だけどやってみても損じゃないって事だな。


「私はまだ調べたい事がありますので当日もここに残りますけど、皆さんは例の商業施設に行き、ロクドウさんを探してみてください」

「……携帯電話、あるいはデジカメを手にした中学生くらいの男の子、だね」

「ええ。……大宮さんはあくまで“そこにいない体で”メールを送ってみてもいいかもしれません。返信するそぶりが見えたら、より確実に特定できうるでしょうから」


 恵を中心に話はどんどんとまとまっていく。例の商業施設は電車で行ける場所にオープンするらしい。イベントは今週の土曜、日曜の十三時、十五時の二回開催されるため、そのどれかに誘いだすようだ。そして、司と大宮先輩、そして俺と……あっ!


「しまった、今週末?」

「はい。今週の土日ですが……どうかしましたか?」


 ……そういえば今週末は“面会”があるかもしれないんだった。母さんとあれからその話をしていないから、結局予定が流れたのかどうかすら確認していない。当たり前みたいに自分をメンバーにカウントしてしまったけど。


「あ、いや……予定が入るかもしれなくって……」

「“真琴がそんなまさか”って顔やめろ。……こっちの家庭の事情というのか、色々あんの」


 当然のように俺をメンバーにカウントしていた様子の司が、“裏切られた”って顔を向けてきている。お前は俺のなんなんだ。


「――おっと、もう暗くなってきたね。先日の事件もあったばかりだ、皆も遅くならないうちに帰った方がいいね」

「そうですね、私も帰らないと」


 仕方ない、俺の方からも母親に話して予定をずらしてもらうとして。……雲雀さんの声に気付き、ふと窓の外へ目をやると辺りはすっかり薄暗くなってしまっていた。


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