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私立・神楽椿学園探偵部の事件ノート  作者: サトル
7.神楽椿学園は曇りのち雨
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7-5☆挿絵アリ


「――ああ、いらっしゃい」


 俺は流されない男。今日はちゃんと部活に行けた。

 ……と、言いきれたらかっこいいんだけどな。部活終わり、その足でこうして――司と大宮先輩がいる“喫茶・カルム”に足を向けているあたり、俺は片足半分くらい流されてしまっている気がする。


「この前は兄さんがごめんね。迷惑かけたみたいで」

「あ、いえ……」


 急いで来たんでしょ、と雲雀(ヒバリ)さんはまるで俺の心を見透かしたみたいに涼しい顔でお冷をテーブルに置く。

 そういえば、とこの前花鶏さんから聞かされた“雲雀さんの過去”を思い返してしまう……。そういえば雲雀さんって顔の半分を前髪で隠してる格好だけど、それって傷跡を……いいや、触れない事がせめてもの礼儀ってやつだろうな。


「ちょうど良かったね、恵ちゃんも今来たところなんだ」


 コップ一杯の水を飲みほしていると、不意に入口の扉が開いた。この店はそれなりに繁盛してるようだし、一般のお客さんでもやってきたのだろう……そう思い、気にも留めなかった俺の予想を裏切って一人の少女が隣の席に腰かけた。

 ――この子は確か、水瀬 恵と言ったっけ。いつぞや、アレンさんがインターネット上の掲示板で“殺害予告”された一件の時に探し出した、幼い少女だった。


「ああ、俺が呼んでおいたんだよ」

「雲雀さんが? なんで?」


 俺はじっくり話したこともないわけだけど……確かこの子はこの辺りに住んでいるんじゃなくって、電車でここまで来ていたような気が。


「……私、近隣の同世代が気軽に繋がれる、いわゆる“交流サイト”を運営してて。お探しの方は、確か中学生でしたよね。……で、クォーター……もしかすると、校内で少々目立つ存在なのかもしれない。だったら、書き込みを探れば学校が特定できるかもしれないという事で」


 ああ、そういえば。アレンさんの一件の時もこの子はホームページ上の書き込みをたぐってここまでやってきたんだっけか。多少はインターネットに詳しいみたい、とは思ったけど……まさかサイト運営、つまりホームページを自分で作るまでだとは。

 今回の依頼の事を耳にした雲雀さんがわざわざ協力を仰いで、それで呼び出した……って事みたいだな。


「ほ、ホームページってそんなさらっと、小学生が作れるもんなの、か……?」

「まあ、大人になっても作れない人は作れませんし、私より年下でも作れる人は居ます。そういうものでしょう」

「…………あ、そう」


 俺の言わんとしたことが伝わってしまっていたようだ。“子ども扱いには飽き飽きだ”と言いたげに恵は眉をひそめている。だけど、仕方ない、と思うんだ……。俺の図体がでかいせいもあるかもしれないけど、この子、背丈だって俺の半分あるかどうかってくらい小さいんだもん。


「運営している掲示板では、“恋バナ”、“部活動”、“雑談”、“愚痴”……などと言ったページをそれぞれ設けています。しらみつぶしにはなってしまうけど、それぞれで検索をかけていけば多角的に探ることも出来るかも」

「……すごいでしょ。俺も連絡を取り合ってて知ったんだけど。最近は学校にもパソコンが導入され始めてるらしくってね。そこで独学で学んでるんだって」


挿絵(By みてみん)


 “うちの喫茶店のホームページもお願いしたんだよ”なんて、雲雀さんはのほほんと笑っている。

 最近の小学生もおそるべし……。


「データ量が膨大なので、少し時間をもらいます。まあ、今週末までに結果はお伝えしますよ。それと……大宮さん、でしたっけ」

「は、はい?」

「後で私のメールアドレスをお伝えしますので、お相手の新しい情報が入ったら教えてください。出来るだけ情報を引き出して……できれば、よりお相手の素性に近い、精度の高い情報を」


 司が呆気にとられた顔で恵を眺めている。そりゃそうなるわな。高学年とはいえ、まだ小学生なのに仕事ができそうだもん。


「まずは晃太君が自身のプライベートの事を伝えてみると良いかもね」


 “情報を聞き出すにはどうしたらいいだろう”と、思案する先輩の元へ雲雀さんが歩み寄るとそうアドバイスを送る。


「……“へんほーせい(辺報性)の原理”?」


 司は俺の服の袖を引くと目で訴える。

 多くの人は相手からしてもらった事について、“きちんと報い返さなければ”と思ってしまうらしい。例えるならバレンタインにチョコをくれた相手に対してお礼を返さなければいけないと思う、義務感にも似たあの心理……だそうだ。


「だから、自分の事を話せば相手も相応の情報を返してくるかもしれない、って事ですね……。なんだか、操ろうとしてるみたいで気が引けますが……」

「メールは、面と向かっての会話とは違って“ちょっと考えて文章を送る事が出来る”もの。……だから、“自分にとって都合の悪い情報を消して”送っている可能性だってあるんです。だから情報の精度を上げるために必要な事なんです」

「わ、分かった……頑張ってみます」


 情報を聞き出そうとしている、と悟られてしまうと否応なしに人は警戒心を抱き、かたくなになってしまうものだ。司が小声でそう付け足す。

 誰だって自分の事を探られてる、なんて思ったらいい気はしないもんな。



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