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「そういやさっきから気になってたんすけど、その、共通の趣味ってなんなんすか?」
「……笑わないですか?」
「多分」
俺が問いかけると、急に先輩は辺りを気にし始めた。あんまり知られたくない趣味なのかな?
既に教室内には俺と司、そして大宮先輩の三人しか残っていない。声を潜める必要すらない気がするけど……先輩は言いにくそうに呟いた。
「…………実は、僕……戦隊ヒーローが好きで、その……」
……ああ、なるほど。先輩はいわゆる“オタク”なんだな。不良がからかったりしていた理由が何となく分かったよ。先輩はいわゆるオタクの格好っていうの? そういうのじゃないというか、むしろ見た目は爽やかそうに見えるからいいんだけど、正直偏見を持たれやすい趣味の一種ではあるよな。
それは分かったんだけどさ……司、その“真琴よりは健全だ”って顔はやめろ。
「しかし、戦隊ヒーローっすか、俺は“六道戦隊サンサーラ”しか知らないっすね」
「それも高良 京さんが出てたとか?」
「うるせえな。そうだよ!」
先輩の緊張を少しでも解せたら、という意味も兼ねて。俺は自分が最近唯一見た作品を話題に出してみる。
「“六道戦隊サンサーラ”! あれ、僕も一番好きなんです! 歴代戦隊の中で唯一、主人公が黒幕だっていう異色の話!」
「そうそう、最終的にはヒロインでもあるブルーの京さんと一騎打ちして正義の心を取り戻すんすよ! いやああの時の京さんは可愛かった」
「そうですね! あの清廉で、それでいて闇を抱えた難しい役どころは彼女にしかできなかったと僕も思います!」
狙い通り、を通り越してこれは大成功なんじゃないか?
さすがに先輩はかなり詳しい。おまけに京さんの魅力まで理解してくれているなんて、先輩はなんていい人なんだ。
「……ああ、しまった……。僕、京さんがプリントされた限定テレカを持っていたんですけどね……不良グループに財布ごと盗られた時に、捨てられてしまって……真琴君に見せてあげたかったです……」
「何てこと!? くそ! 物の価値が分からないヤンキーめ! 俺が壊滅させてや……」
……ふと、俺は腕に張り付いた重みを思い出す。
「あ、ごめん。つい」
俺は探偵部じゃない。あくまで“見守ってやろう”と思ってたのに、すっかり話に夢中になってしまったよ。話にまったくついていけていない様子の司が悲し気に俺を見つめてきやがる。
いや悪かったって、話を戻すから。そんな顔するな。
「六道……ってことは、ロクドウさんも戦隊が好きなんですね」
「多分、一番好きな作品なんでしょうね。とはいっても、多分まだ駆け出しなんでしょうけど」
「僕が最初にやり取りしたのはサイトの掲示板だったって言ったでしょう? その最初の書き込みは“薬師ブルーが出てきたのってなんてタイトル?”っていう、いわゆる興味を持ち始めた初心者の質問でしたから」
“ロクドウ”というハンドルネーム、その由来は何となく見えてきたな。
「家族の事とか、そういう話はしたことないですか?」
「少しだけ。……ロクドウさんは母方祖母が外国人だとは言っていたけど、どこの国かは聞かなかったです。両親が共働きで、年の近いお兄さんがいると言っていました」
「中学生の兄貴なら、高校生である可能性もあるな」
「ああ、そういえば兄弟とても仲が良いって言っていましたから……お兄さんの影響で同じ趣味に来た可能性もありますね」
うーん、少しだけ人物像は見えてきた気がするけど、この先どうやって調査すればいいんだろう。まさか県内の中学校しらみつぶしに探す……なんてわけにもいかないだろうし。
って、危ない危ない。うっかり流されるところだった。
なんで俺が調査に加わろうとしてるんだよ!
「……明日は部活をさせてくれ」
“手伝ってくれるよね”なんて小動物みたいな目で見ても駄目だからな!
「――なんだ、その幽霊でも見たような顔は」
「あ、いや……なんていうか。帰ってこれて良かった、な?」
「……いくら警察が無能だとしても私のような善良な市民を誤認逮捕するはずが無いだろう」
「善良?」
翌日。俺の後ろの席には、いつものように登校してきた水野の姿があった。
先生が言った通り、“あくまで参考人として話を聞いている段階”というのは間違いないようだ。
「……そういや、お前なんで警察を毛嫌いしてるわけ?」
「真琴には関係の無い事だ」
「ああ、そうっすか……」
……だけど、その横顔にはいつものふてぶてしさが無い気がする。まるで出所のしれない“不安”を抱えこんでいるかのような……。
「……私は今日も放課後、警察署に呼ばれている。依頼を受けたそうだが関わっている余裕がなさそうだからな、しばらく任せるぞ」
――仕方ないな。水野の様子は確かに気になるけど、まさか警察署に付き添うワケにもいかない。今俺にできることは……って危ないっての!! 全然仕方なくないから!?
「……いや俺探偵部じゃねえって! 今日は! 部活に行く!!」




