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私立・神楽椿学園探偵部の事件ノート  作者: サトル
7.神楽椿学園は曇りのち雨
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7-3

その人と出会ったのはインターネット上の掲示板。僕は趣味の情報収集の為にとあるホームページに顔を出していた。ある日、情報を求める投稿が目に留まって、ちょうど僕が良く知る内容であったからそれに返信して。そこからその人との交流が始まったんです。


「話すうちに、趣味だけじゃなくって……それ以外にも結構共通点が多いなって盛り上がって。……彼とメールするようになって、“好きなものは好きでいいんだ”って思えるようになりました」


 ――良い事は重なるものらしい。メール友達が出来たちょうど同じ頃、先輩は件の不良たちから絡まれることもなくなっていったそうだ。あらかた、他に良い“カモ”が見つかったとか、警察にしょっ引かれたとか……つまり偶然が重なっただけなんだろうけど。

 “おかげでこうして学校にも通えるようになった”と、先輩は弱々しくも笑っていた。



「ただの偶然なんでしょうけど、僕にはなんだか“その人”が僕に幸運をもたらしてくれたような気がしたんです。それで、その……少しだけ余裕が出来ましたから、“会ってみたい”って打診してみたんです」


 彼は僕と同じクォーターで、中学生の男の子。学校では大人しい性格で、よくからかわれるみたいで……友達もいないみたい。それだけじゃなくって、どうやら同じ県内に住んでいるらしいとまでは分かったんだけど……。


「お金は僕が出す、同じ県内なら近所まで行けると思うからって言ってみたんだけど、会うことは出来ないって」


 ――彼は言っていました。“現実の俺は不細工で、性格だって悪い。会ったらきっと幻滅するから”……だから、会えないと。


「でも、僕は関係ないと思っています。年齢も、見た目も。表に貼り付けた性格だって、裏を見ないと分からないから。人は心と心で繋がる生き物です。だから……」


 ……なるほどな。ようやく依頼内容が分かった。


「もし、会えたら僕は言いたいんです。僕と友達になってくださいって」


 大宮先輩の依頼、それは“顔も知らないメル友を見つけ出してほしい”という事。今までみたいな、幽霊だとか事故だとか呪いといった物騒な気配はどこにもない。

 とはいえ、これはこれで難しそうじゃないか?


 言っとくけど俺は探偵部じゃない。部長の水野が不在だろうと風見が不在だろうと関係ないからな。この依頼を受けるか、受けないかは司次第だろう。俺は判断を見届けるだけだ。


「……」

「だ、か、ら……もうちょっと大きな声で喋れ。“もう少し、分かる範囲で構わねえから相手の特徴とか教えてもらってもいいか”って」


 声の大きさは相変わらずだけど、司の目に迷いは無い様子だった。

 “困っている人を助けたい”んだと。……ほんと、そういうカッコイイセリフは自分の口で言えるようになってほしいもんだよ。


「受けてくれるんですね、ありがとうございます!」

「あ……えと、でも、当面の間は僕しか動けないと思うので、絶対見つける、とか言えないんですけど……」


 ――水野だったらたんまりと金を取りそうではあったけど、どうやら司は無償で依頼を受ける、というか“相談に乗る”という事にしたみたいだ。

 まあつまり“依頼を達成出来なかったとしても不問にしてほしい”という、消極的な司らしい“保険”みたいなものなのだろう。


「――差しさわりのない範囲で構わないからメール本文を見せてもらうことは出来るか? ……て、こいつが」


 目で訴えかけてくる司の言葉を解読して、大宮先輩に伝える。……ちくしょう、こいつ完全に俺を頼ってやがるぞ。


「ああ、どうぞ……その人とはハンドルネームでやり取りしてて。その人は“ロクドウ”……で、僕は“ダイグウ”」

「……ダイグウ? なにその妖怪みたいな名前」

「え、ああ……ほら、僕の苗字、“大宮”を訓読みにするとダイグウって読めるでしょう?」

「ああ」

 

 俺も良く知らなかったんだけど、“ハンドルネーム”というのはインターネット上でやり取りする時に使う偽名のようなものらしい。自分が呼ばれたいあだ名だとか、好きなものから肖ったりするんだとか。

 相手の名前は“ロクドウ”――これだけだと、何から名前を取ったのか。そもそも意味がある名前なのかすら分からないな。


「さっきも話したように、“ロクドウ”は県内の公立中学校に通っている二年生の男の子らしいです。具体的な地域名は分からないけど、前に僕が王司(オウジ)駅近辺で撮った風景写真を送ったらピンときたみたいだから……この辺りにも来た事があるのは間違いないと思います」


 メールの何通かに目を通していく。本文中には絵文字も多用されているみたいだけど、全体的に大人しそうな、どことなく礼儀正しささえ垣間見える。少なくとも沙綾のような馬鹿丸だ……もとい、はっちゃけた人間ではなさそうだと感じた。

 隣で同じく目を通していた司はというとその送信時刻を確認している様子だ。

 ――どうやら、ロクドウ側から送信されているメールはどれもほぼ同じ。朝の八時頃と、夕方十六時頃のようだ。……不登校って言ってたから、不規則な感じになるものかと思ったけど意外と規則正しい生活を送っているんだろうか?


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