6-10
“彼”が出てくるのを待っていたらすっかり日が暮れてしまった。
ビル街の一角、目立たないようにしながら待ち構えるのは中々に難易度が高いんだよね。この辺りには野良猫や不良達も多いし。
「――あれ? 何か忘れ物でもしたのかい?」
ようやく出てきた彼はきょとんとしている。周りには誰もいないようだ。他の劇団員達を先に帰らせて、一人で何か仕事をしていたという事かな。……“座長”って言うのも大変なお仕事なんだね。
「あ……がっ」
……まあ、大変なお仕事であろうとこっちには関係のないことなんだけど。
胸に飛び込み抱き着くような格好を取ると、首に紐を巻き付けて全体重を乗せる。
段々この作業にも慣れてきた。最初は吐しゃ物シャワーとか浴びて散々だったけど、今はそんなヘマもしない。
そうしているうち、だんだんと息遣いが荒くなってきたのが分かる。――ごめんね、貴方の人生はここで終わるんだ。
「どう、し……」
「どうして? ……ああ、そうか。僕の顔なんて見たことないよね。ずっと軟禁されていたから」
貴方に罪があるのかないのかなんて私には関係のないこと。そうだね……しいて言えば“あの村”に生まれた事が罪といえるのかもしれないね。
「僕の名前は“雷鳥沢 漣”……って言ったらピンと来て……ないね」
ナイフを取り出すと、いつものように切り取る。このナイフはちょっと触っただけで自分の指まで切れちゃう良い刃先だから、取り扱いには注意。
「一人が勝手に死んでてくれたのは助かるんだけど。これであと四人か。……まあ、焦らず行こう」
静寂の中、遠くから女性の声が聞こえた気がした。
早く帰ろう。まだ私にはやる事がある。殺さなきゃいけない人達がいるのだから。




