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私立・神楽椿学園探偵部の事件ノート  作者: サトル
6.神楽椿学園探偵部と鳴かないカナリア
52/71

6-1★挿絵アリ

「――もう大丈夫なのか?」

「うん。元々検査での入院みたいなもんだったし」


 拝啓、私たちは今病院に来ております。ここは市内でも特に大きい総合病院――この日、私と真琴さんは脳神経外科の入院病棟に来ておりました。といっても不幸事ではございません。


「しかし、災難でございましたね」


 そう。以前に私たちが検挙致しました模倣の殺人鬼。例の一件にて被害に遭いかけてしまわれた少女、空木(ウツロギ) (ミオ)さんが退院なされる日なのでございます。


 事件の翌日には意識を取り戻され、目立った外傷も無かったご様子。ですが、頭を打っている可能性があり、見えない障害が残ったり心的ストレスを負った可能性を加味した結果……数週間の検査入院を余儀なくされたのです。


「もう全然大丈夫だっていうのに、中々退院させてくれないんだもん。ほんと参ったよ」

「そう言うなって。脳に異常とかあったら怖いじゃん」


挿絵(By みてみん)


 澪さんが大荷物を抱えようとすれば、すかさず取り上げてみせたり……真琴さんはまるで子の面倒を見る母のように甲斐甲斐しく接しており、なんだか微笑ましくも思います。


「――あ、そうだった。帰る前に受付に寄ってかないといけないんだ。せっかくだから真琴、そのまま荷物持ってて。私ちょっと行ってくる」

「いいよこれくらい。俺も一緒に行……」


 とはいえ、甲斐甲斐しさも時にお節介へと変化してしまうものといえるのでしょうか……。

 真琴さんは言いかけた言葉を飲み込んでしまいました。対する澪さんの表情から何かを察したのでしょう。


「……私がご一緒いたしましょうか?」


 子細を読み取る能力など持ち合わせておりませんが、何となく理解は及びます。それはおそらく“性差的な配慮を願いたい”という意図。

 簡潔に申しますと、今の真琴さんは“女子トイレまで付いて行こうとしてしまった”ような状態とでも申しましょうか。

 試しに私が同行を提案してみますと、澪さんは“一人でも大丈夫なんだけど”と呟きつつも拒否は致しませんでした。……まあ、おおよそ的中したとみていいのでしょう。


「――楓李(フウリ)はさ、私が真琴と仲良くしていても大丈夫な人?」


 受付で書類を受け取り、真琴さんが一人待つロビーへと向かう途中。澪さんは私に問いかけました。


「真琴は私に構いすぎる。だから……もし楓李が真琴の事好きなんだったら、私の事嫌なんじゃないかなって」

「あら……」


 遠慮がちな口ぶりで紡がれた言葉。どうやら澪さんは“私が嫉妬しているんじゃないか”という事を気にしていらっしゃったご様子です。

 まあ確かに、真琴さんの甲斐甲斐しさは分かりやすい“好意”でしょう。傍目に見ている分には微笑ましい光景であるのでしょうが、それが意中の相手が成す事であったとしたら微笑んでなどいられない……。


「真琴さんは素敵な友人の一人ですわ。……私には、幼少の頃より片思いの相手がおりますの。だから、そんな心配は不要ですわ」

「そっか」


 澪さんはにっこりと笑います。

 太陽を浴び、彼女の白い髪はまるで透き通るように光を反射させています。……こうしてみると、やはり真っ白い髪というのは目立ちますね。と、言っても金と赤のグラデーションの某方と比べるには申し訳がないほどに澪さんは真っ当な方でございます。

 人を見た目で判断してはいけないといういい例でしょう……


「そういう澪さんは真琴さんの事は――」

「へいへいそこのお嬢さん方! かっわいいねえ! その美貌を世の中のために活かしてみない? 秒で“万”儲けちゃわない?」


 ……いえ、やはり“人は見かけ”という判断基準を尊重すべきでしょうね。

 先んじて廊下へと足を向けた私の行く手を阻んだその男性は、お数珠をギラギラとさせたようなブレスレットを揺らしながら私の顔すぐそばの壁に手を張ります。

 髪色は黒なのですがパーマのかかった髪に整髪料の類をまとっているのでしょうか?

 香水のような匂いと、ラメが随所に光る黒スーツが五感に危険を知らせてきておりました。


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