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「なあなあ、また昨日も被害者出たらしいぜ」
「また? 先週もだったよなあ。最近多くね?」
どうも皆さんこんにちは。こんばんは? ……まあどっちでもいいか。
季節は初夏。俺は勉強に部活動にと忙しい日々を送っている。
ああ、ええと紹介が遅れた。今回はまたも俺、燈村 真琴が書き止めていきます。
なんか、探偵部の部長、水野の命令だとかなんとかで……俺と綾城、あと風見の三人で順番に書記を務める事になったらしい。っていうか俺探偵部じゃないから本当はこのローテーションに組み込まれているのおかしいんだけどな。
「おい聞いたかよ、昨日殺されたやつ、桑港高校のバレー部だってよ、三年」
「桑港って、真琴の彼女がいるとこだっけ」
「……彼女じゃない!」
俺は探偵部には入っていない。陸上部に所属している。
クラスが違うやつもいるけど、同じ一年の部員には仲のいい奴らも出来た。書いたら怒られそうな話題が大半の馬鹿な奴ら。……だけど、こんな中でも例の殺人鬼――“平成のゾディアック・キラー”の噂は常に話題の中心だ。
俺が入学して早三か月程が立つ。この間だけでも既に五、六人の犠牲者が出ている。近所の中学校の生徒が学校帰りに……とか、桑港高校のバレー部員――俺の幼馴染、沙綾が通う学校の上級生とか身近な人も犠牲になっているんだとか。
「こら一年! 喋ってる暇あったら仕事しろ!」
「いってえ」
……おっかない先輩の怒号が聞こえ、頭のてっぺんに激痛が走った。
そうそう……そうでした。部活終わりに用具を片付けてグラウンドを整備するのが俺達一年生の仕事。散らかしたまま喋ってた俺達への指導というやつだな……。
片付けと整備を終え、俺たちは部室へと戻る。別に体操着のまま帰っても構わないわけだけどいずれにせよ荷物は取りに戻る必要があるんだ。
「――風見。こんな時間まで居残りか?」
他の部活生もとうに帰ってしまった夕暮れ時。他の陸上部員の後を追い部室へと続く人気のない道を歩く。ふと俺は見覚えのある後ろ姿を見かけ、声をかけた。
「ああ、真琴さん。ええ、今日は部活の方で」
振り向いたと同時に、ふわふわとした背中まである長い髪が女子らしい良い匂いを振りまく。
彼女の名前は風見 楓李……あの奇特な女が立ち上げた奇特な部活、探偵部の部員の一人。
「部活……ってことはあいつが」
反射的に周囲を見渡す。先を歩いていた陸上部のやつら以外に辺りに人の気配はない。
だが、あの部長……顔を見るたびに入部を推し進めてくる厄介者、水野の事だ。今もどこかに潜んで隙を狙っているのではないか。そんな恐怖に襲われたんだ。
「部長たちは拠点の方で別の調査をしておりますわ」
そんな俺の気持ちを察してか、風見が微笑んでいる。こういう口元を押さえる女子らしい笑い方……なんというか、疲れとか水野由来のストレスから癒される感じがするな。
部室に置いていた荷物を回収すると、俺は校門前へと急ぐ。律儀に待っていてくれる風見の事を一秒も待たせたくはないからな。
先日の喫茶・カルムでの一件もそうだったけど、水野の風見への当たりが強いような気がするわけで……。
探偵部の事情とかそういった事に関わるつもりはないが、水野がまた問題を押し付けてしまっているのではないかと風見の事が心配になったんだ。
「調査って?」
「はい。実は初の依頼が入りまして。……と、言っても依頼人は顧問の春宮先生なのですが」
春宮先生って、確かあの若い女の先生だっけか。担任とかじゃないけど、日本史を担当していることもあって、俺達のクラスで授業をすることもある。穏やかできれいな先生だ。結婚しているらしいけど。
大人しそうにも見える先生だ。探偵部の顧問になると風の噂で聞いた時には脅されたり、パシられたりしやしないかと心配をしていたけど意外と乗り気なんだろうか。
ちょっと想像していたのと違う先生のギャップに戸惑いを覚える俺の傍ら。風見はその依頼内容を説明し始めた。




