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私立・神楽椿学園探偵部の事件ノート  作者: サトル
3.神楽椿学園帰りに寄り道を
29/71

3-8


「――おー。待っとったで、おじょーちゃん」


 十八時過ぎの王司駅。会社員や学生さんが家路を急ぐように改札を通り過ぎていく中。

 通りかかった一人の少女を沙綾さんが呼び止めた。


「あ、失礼。……私たち、怪しいものではありません。……こちらの、アレンさんについて、少しお話をお伺いしたくって」


 真琴さんの背中に隠れていたアレンさんが顔を覗かせるなり“この子!”と声を上げる。

 静かに歩み寄った先――小学生か中学生くらいと思しき小柄な少女は、不思議そうにあたりを見渡してはその長い黒髪を風にそよがせていました。


「……すげえ、風見が言った通りだ」


 私は随分と複雑に考え過ぎてしまったようで時間を費やしてしまいました。ですが、何とか間に合ったようです。ほっと胸をなでおろしました。


 ――駅員さんの証言、“電車を降り改札を出ていった姿だけを見た”という証言を手に、私は二つの可能性を広げました。


 まず第一の仮説。少女がこの辺りにお住まいであるとするなら。

 証言を下さった駅員さんが勤務に就くより前。つまり始発直後の時間帯か昨日の夜に“電車を使ってどこかへ出かけた帰りだ”という事になります。

 しかし、経済的に自立しえない子供が“何の用事もなくふらっと出かける”とは考えにくい。ましてや平日。義務教育たる少女は学校を休んでいるはずです。買い物、通院、お使い……何かしらの用事があったはず。


 この少女は電車を降りた時点で財布と思しきもの以外、何も所持していなかった。お使いや親類の家などに泊まった帰りとも考えうるでしょうが……とすれば服装はお使いに適さない。

 そもそも、外泊には手荷物が無さ過ぎる。仮に病院や行政的な施設などへ行った帰りと仮定しても――


 仮に始発で向かったと仮定して、彼女は十三時から十四時の間にここへ戻ってきています。

 移動時間を含めない滞在時間は九時間。そう捉えると長時間滞在したように思えますが……。

 この王司駅周辺にも総合病院はあります。ですがあえて電車を利用してまで向かうとすればそれは専門的な治療を施す施設等ということになるでしょう。


 大体の病院・行政の施設というのは受付開始が八時から九時となっています。つまり逆算すると彼女は“片道四時間弱の距離にある施設へ向かった”ということになる。

 片道四時間弱、当然帰りも同じくらいの時間を費やす計算となるのですから――十三時過ぎに帰ってきたということは彼女は十時にはもう用事を済ませていたということ。


 総合病院の類へ行った事のある方なら想像つくかと思いますが、大抵の施設においてたったの二時間で用事が済むというのはまずありえない事でしょう。


 ――だから、私はこう考えたのです。


 “少女は電車を使ってどこかから帰ってきたのではなく、電車を使ってわざわざここまでやってきたと考えるのが一番自然だ”と。


 手荷物の少なさから推察するに、おそらくは上記のような通院や専門的な施設が目的。この町にわざわざ訪れるということは――おっと、これ以上の詮索は悪趣味でもありますね。


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