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私立・神楽椿学園探偵部の事件ノート  作者: サトル
3.神楽椿学園帰りに寄り道を
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3-6☆挿絵アリ


 ――まずはアレンさんの足取りを順に追うことといたしましょう。


「……女の子? いや、来ていないと思うよ」


 最初に訪れたのは噴水広場から道路を挟んだ向かいにあるコンビニです。

 駅から見ると右斜め前あたりに位置するこの場所からならば、店内から駅を行きかう人々も見えます。


「レジにいたのはお兄さんだけ?」

「うん。平日はあんまりお客さんが来ないから原則一人で夕方まで。俺は昼の一時から夕方の五時」


 沙綾さんがレジにいらっしゃった店員の方に尋ねてくださいましたが……どうやら外れのよう。


「そっちの派手なお兄さんもだけど、いつもこの辺りを通りかかる人なら大体覚えてるけどね」


 嘘をついたり隠し事をする必要性は無いかとは思いましたが、念のため私は真琴さんのお顔を見上げてみます。ですが真琴さんは首を横に振ります。“本当の事を言っているようだ”と。

 やはり杞憂に終わったようですね。


「お騒がせしました、ありがとうございます」



 さて、コンビニの次は駅へと向かいます。

 レトロな雰囲気をそのままにどこか懐かしい色合いをした看板がさびた骨組みから吊り下げられている。一方で設備は相応に新しいもの。自動券売機が据えられた改札口には数名の駅員さんの姿が見えました。あの方に尋ねてみる事にしましょう。


「――十三時半から十四時の間に? ああ、そういえばそういう感じの子、通ったと思うわ。髪が綺麗だったから覚えてる」


 改札口を見張るような形で据え付けられた小部屋の脇に立っていた一人の駅員に尋ねてみると、彼女はああ、なんて手を叩きながら応じてくれました。

 まるで暗がりの中で一本、糸を手繰り寄せたかのような安堵に胸をなでおろします。

 どこから来たのかまでは分からない。ですが、“少女は電車を使ってここまでやってきた”という事実が一つ。

 ほんの僅かではありますが手がかりが一つ見えた瞬間でした。


「……その子、帰りも電車を利用したと思うんですけど、どの電車で帰ったか、とか覚えてませんか?」

「いや? 確か見かけたのはその一回だけだったと思うけど」

「……え?」


 続けて問いかけてみると、駅員の女性は首を傾げてしまいました。


「私はね、朝の八時から夕方の五時まで……改札の近くで仕事をしているの。乗客たちへの案内や切符の精算業務をね。だから、困ってる人がいないか、怪しい人がいないかって……通る人たちの顔はきちんと見ているのよ」


 念の為、私は真琴さんへと目配せをしてみます。もちろんその返事は“No”……つまり、彼女も嘘をついていないという事でしょう。これは先ほどのコンビニ店員さんにも言える事でしょうが、嘘をついているつもりがなくとも、ただ本当に覚えていないだけという可能性もわずかに残されてはいるでしょうが……。


挿絵(By みてみん)


「――で、どないしよ。また振り出しに戻ったやんな」


 気を取り直して一旦、駅前の噴水広場へと戻ってまいりました。ちょうど広場の中央では三本の水柱が夕日を浴びながら舞い踊っている様子。……確か、ここの噴水は十二時・十五時・十七時に稼働しているのでしたっけ。

 と、言う事は今はちょうど十七時という事……日が暮れてしまうと、ますます捜査が難航してしまう。時間はあまりないでしょう。


「いえ、少なからず前進はしていますわ。電車から降りる姿は目撃されている。だけど帰る姿は目撃されていない」


 駅員さんの証言が正しいとすれば、少なくとも少女が電車でここまでやってきた、という事だけは真実。


「……つまり、この辺りに住んでいらっしゃる可能性が高い」


 ですがまだ、手がかりが少ないのも事実……。


「私達よりも幼い、それでいて軽装の少女……小学生でしょうか? でも、だとすれば今日は平日。目撃された時刻はまだ学校にいるべき頃合い……」


 もう少し断定的な手がかりがあれば、あるいは――


「――うーん、こうしてる時間がもったいないんじゃねえか? 地道な感じになるけど、手当たり次第に聞き込みとかしたりしてさ」


 私が考え込んでいると、ふいに真琴さんの声が意識を削ぎました。無意識下で煮詰まってしまい始めていたのでしょうか。

 聞き込み……正直効率としてはよろしくありません。ですが、真琴さんの仰る事は愚策ではないでしょう。


「沙綾さんは港沿いの土産物屋さんを、真琴さんは反対側の商店街を当たってほしいのですが」


 断定するにはまだ情報が足りない。可能性が多すぎるのです。なら、まずは“その可能性をつぶしていく事”が先決。


「ハイハーイ、ボクはどこを当たればいいですか?」

「え、いや……アレンさんは一人で歩き回らないでほしい、ですね」

「じゃ、真琴君に守られてあげましょう!」

「いらねえ……」


 当たり前であるかのようにアレンさんが手を上げていらっしゃいましたが……。もとはと言えばこの方の命が狙われているのです。どうにも緊張感に欠けるというのか、本当に怯えていらっしゃるのか……?


 とにかく、私もこの辺りでもう少し手がかりを探す事としましょう。


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