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2-10★挿絵アリ
「後、八人」
ああ、今日もまたお洋服が汚れてしまった。
白シャツなんて着てくるから赤が目立つんだよ。あの人はきっとまた笑うだろう。
でもね。元はと言えば貴方が“白が似合うね”なんていうから……。だから私が勘違いしてしまうんだ。
この世に罪が存在するとしたら、それは“貴方の笑顔”――
「洗って落ちますかね、これ」
春だというのに、まだ夜は肌寒い。桜の花びらがひらりと舞い降りて、私が裂いたその傷を庇うように横たわる裸体に張り付いた。
“仕上げ”をしている間に私の手も、“人だったモノ”もすっかり冷え切ってしまった。
冷えた体を温めるならば、ホットコーヒーが一番。
だけど、他人の体液なんかにまみれてしまったこの手指ではカップが持ちにくくてしょうがない。
赤黒い糸のようなものが絡みついたゼリー状の“何か”がぬるりと指の間をすり抜けて落ちて行った。
いや、そもそもこの格好でうろついていたらきっとあの人に怒られてしまう。
「帰ろう」
帰って、乱れた髪と汚れた体を綺麗にして。
服を着替えたら、あの人の笑顔に会いにいこう。




