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――昔から“何を考えているのか分からない”と言われ続けていた。
綺麗な、人形のような顔だと最初は可愛がられる。だけど、表情を作る事が苦手な僕は大人が求める反応を何一つ返せなかった。
笑っているつもりでも笑えていないらしくて。
“無愛想な子供だ”と。
痛い、苦しい、辛いと思っても顔をしかめられず“血も涙もないのか”と――
“私がいなくなっても、君は悲しいとも思ってくれないんだね”
――違う、と言えたら良かったのに。僕はあの頃から何も変わっていない。無力に怯えるだけだ。
だけど、もし変われるのなら――
「――“どうして彼にこだわるのか”だと?」
――一九九×年、四月。新しい学び舎にも随分と慣れ始めた頃。僕は恐る恐る、意を決して気になっていたことを聞いてみた。
「単純な事だよ。司も接してみて気付いただろう、あれは私が持ち合わせていない感覚の持ち主だからだ」
あ、申し遅れました。今回は僕――綾城 司が筆を取っています。急にしゃしゃり出てくるなよって言わないでください本当は文字を書く手が震えているくらいなんです。許してください。
僕が問いかけると、じろり、と睨むように視線を投げた華澄がため息を落とした。
「恐らくempathか――“ハイリー・センシティブ・パーソン”という人一倍感覚が敏感な性質の持ち主なのだろう。……私は医者ではないから診断は出来ないし、興味もないが」
朝の教室にはまだ真琴本人の姿はない。それを確認するように教室を見渡すと、華澄はぼそりと呟いた。
エンパス、という言葉は聞いたことがなかったけど、“HSP”という言葉は知っている。確か、人の感情がまるで自分のものであるかのように感じてしまう性質の事。
察しがよすぎるが故に人の感情に影響を受けがちで、うつ病や依存症に陥りやすい繊細さを持つ人だとも聞く。
「必要なのは結果だけだ。現に真琴は相手の感情と言動、表情との間に生ずる“歪み”を見抜く。当人は感覚だけで生きているような単細胞のようだから……その力を活用するためには犯人どもの油断を誘ったりとお膳立ても必要となるが」
相変わらず、華澄は残酷なまでに冷徹だ。多分彼女は真琴君の痛みを思いやるつもりはないし、彼がうつ病にでもなったらさっさと捨ててしまうつもりなんだろう。
「お膳立てには司の存在が最適なのだよ」
僕も同じ場所にいる。僕も価値が無くなれば捨てられるだろう。
「頼んだよ、司。“聞き役”たるお前がいれば、私の目的、悲願だって――」




