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「え、あ、ちょっと……じゃあ、じゃあどうするんだよ」
「どうもしないが?」
「はい?」
海江田先生も呆然としている。そりゃそうだ。ここまでずっとああだこうだと推論を叩きつけられていたんだ。いっそ“犯人はお前だ!”って言ってもらいたいだろうよ。
言い切ってもらってから身の振り方とか考えたいものだろう。
「私はもう満足したし、後の事はどうでもいい」
「はい? いや……こういうのって事件の動機とか、警察に突き出すとか――」
「――ああ、真琴はそう思うタイプか。私は、申し訳ないが興味がないタイプでな」
「タイプの問題かこれ……?」
“こいつ、めんどくさいな”って言いたげに水野が俺の顔を見上げている。
いやいや、おかしいのはお前だろう!?
水野がとっている行動は、例えるとするなら“試験勉強をしてテストを受け、結果を見ずに帰る”ようなものだ。テスト範囲を把握し、勉強をして回答まで出しているというのに、答え合わせをする気がないのか?
“テストを受けたいだけだった”とか言う人間の方が少数派だろう!?
「完膚なきまでに論破し、警察に突き出したとしても……反省しないやつは繰り返す。逆に警察から逃げ隠れても罪にその身を焼かれ後悔し続ける者もいる。私は真実の先には興味がないんだ。どうせ人は変わらないのだから」
「水野……」
ため息を落としている水野に、それ以上返す言葉が見つからないでいた。
だって、こいつは先ほどの海江田先生のように嘘や建前を口にしていない。
――“人は変わらない”と水野は本気でそう思っている。心からどうでもいいと思っているんだ。
本当に我欲の為、“謎解きと推理ショーをやりたい”という願望を叶えたかっただけ。
「……海江田先生、多分、これは僕の想像ですけど……小川先生は、目覚められても、貴方の名前を出さないと思います」
「……」
一仕事終えた、もう満足したといわんばかりに背伸びをしながら屋上を後にしていく水野を俺は追いかける。
すれ違いざま――居心地の悪い沈黙を破るようにして綾城が口を開いた。
そういえばお前もいたんだったな……。
「真琴がさっき言ってた。……海江田先生は“一度だけ嘘をついた”って」
「……」
「泣いて……“死なないで”って言ったあの言葉は本当だったんですよね? ……本当は、殺すつもりなかったんじゃないですか? 死ななくて、良かったじゃないですか。事情は知らないけど、きっといつかは許してもらえ……」
「司! ……そういうのはいらない。あとは海江田が考えること。真琴も帰るぞ」
ほんっとうに水野が帰っていく。マジであいつ、持論を海江田先生に押し付けただけじゃねえか。
自分は探偵だ、なんて言っていたけど……こんな探偵がいてたまるか。
海江田先生は水野や綾城に何も言おうとしなかった。
ただ、去り行く俺達をじっと見つめているようだった。




