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しんどい興信所の超常探偵  作者: 赤羽道夫
すごい霊媒師をさがして
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怪しげな依頼者

ちゃんとした霊媒師を探してほしい。


その依頼を受けて、興信所「新・土井エージェント」の探偵、先野光介さきのこうすけ原田翔太はらだしょうたは街に散った。


基準のわからないまま探し回る二人……。


そして、あちこち捜しまわった末に、ついにそれらしい人物に行き当たるが……。事態はとんでもない展開を迎える。


 ──ちゃんとした霊媒師を見つけてほしい。

 という依頼であった。

 霊媒師なんて、そんな怪しげな能力を持つ人間が、果たして存在しているのかどうか、先野光介さきのこうすけは正直なところ知らない。が、

「わかりました、お任せください」

 システム手帳を閉じると、力強く返答した。

 ちゃんとした霊媒師と出会えずに困っている、と訴える依頼者の女は、先野のその言葉を聞いて、ありがとうございます、と頭を下げた。

 さもあろう、と先野は得心する。目に見える資格とは違い、個々の能力にはあるすぎるほどの差があるだろう。それこそインチキなやからもいるだろうし、詐欺師もいるかもしれない。

 霊媒師の看板を掲げている有象無象の中にいったいどれだけの「本物」が混じっているのか、それこそ玉石混交で、たどり着くのは容易ではあるまい。もっとも、容易に探し当てられるのなら、わざわざ探偵に依頼したりはしない。

 喪服のような黒いトップスを着た、三十代前半の女は、どこか異様な目つきで先野を見つめ、

「お願い、します……」

 震え声で言った。

 この女こそ霊媒師ではなかろうかと思えてしまいかねない妖しげなオーラが、最初から最後まで消えなかった。

 先野といっしょに話を聞いていた、後輩探偵の原田翔太ハラショーがその雰囲気に飲まれていた。いつもは明るい青年が、借りてきた猫のように静か──いや、蛇に睨まれたカエルのように萎縮している。

 しかし、胸をたたいて引き受けたものの、そもそも、「ちゃんとした霊媒師」が見つけられるのかどうか、先野はまったく自信も見通しもない。それでも、会社として話を聞いた以上、探偵は動かなければならないのだ。それが仕事というものだ。



 とはいえ、隣接する面談コーナーから事務所内の自分のデスクに戻ってきた先野は、イスに体を深く沈めて盛大なため息をつく。いつもより精神的に疲れてしまっていて、すぐに行動する気が起きない。原田にいたっては机に突っ伏している。

 その様子に、先野の同僚で、社内からも優秀との誉れ高い探偵・三条愛美さんじょうまなみが、そばを通りかかった際に声をかけてきた。今も、いくつか複数の浮気調査の案件を抱えていて、その証拠をつかむための調査計画をたてていたところだった。効率よくターゲットを監視していかないと、無駄足を踏むことになるからである。

 ちょっと紅茶で一息つこうと席をたったところで、

「あらあら、いつもクールに決めている先野さんが、どうしました? 上下の白のスーツが心なしかくすんで見えますよ」

 気遣う、というより、口調にどこかトゲが含まれているように感じられた。

「おれが受けたのがどんな案件だったか、知ってて言ってるだろ?」

 白のソフト帽をずらして見上げる先野。事務所内では白のスーツで通すのがこの男の入社以来のこだわりだった。イタい外見なので、誰もその理由をあえて問わない。

 興信所に入ってきた依頼は、まず社内で受けるかどうかを審査する。社会的に受けられない案件、たとえば犯罪に関わりそうだと判断される場合などは、その段階でお断りする。受けられる案件が決まると、次はどの探偵に担当してもらうかを決定する。そのときに依頼内容が漏れ出てしまうこともあった。

「こういう難しそうな案件こそ、先野さんのやる気がでるんじゃなくて?」

「今回は嫌味に聞こえるぜ。探偵を使うとなれば、かなりの費用が発生する。その費用を払ってでも、となれば、よほどのことなんだろうけど、こういうものに大金をかけてしまう神経ってのは、理解はできるが共感はできねぇな」

「藁にもすがる思いなんでしょうね」

 三条は肩をすくめる。

「興信所に駆け込む人はみんなそうさ。──さて」

 先野はイスに座りなおし、机の上のノートパソコンを開ける。

「仕事にとりかかるとしよう」

「がんばりましょう」

「言われるまでもないぜ」

 一週間ぶりにメインで回ってきた仕事だった。どうあっても依頼を成し遂げたいと意気込む先野であった。

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