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しんどい興信所の超常探偵  作者: 赤羽道夫
誰にも言えない秘密の隠し子?
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作られた真実

 ゲリラ豪雨のため電車が運行停止になり、先野光介は事務所に帰るのが遅くなってしまった。

 だがそのおかげで有用な情報を手に入れることができた。

 喫茶店で足止めを食らっていたところ、ネット経由でデータベースをあさっていた横塚はノートパソコンを見つめて突然叫んだのだった。

「どうしたんだ?」

「見つけたぞ! 隠し子の証言だ!」

「なんだと?」

「おかしいな。こんな文書に気づかなかったなんて……。だが、まぁいい。とにかくこれを見てくれ」

 横塚がノートパソコンの画面を先野に向けてくる。記事になる前の取材メモの一覧が表示され、そのなかのひとつに、TYの隠し子の存在をにおわすものがあった。

「これはウラをとらなかったのか?」

「記事になっていないところをみると、ウラがとれなかったのだろう。あるいは圧力がかかったか……」

「圧力って……そんなもんに屈するのか?」

「可能性の問題さ。ないとは言い切れん。しかし、十二年も前の取材メモだからな。今からウラを取ろうっても、難しいかもしれん」

「ついででもいい。なにかわかったら教えてくれ」

 先野はいつになく興奮した。



 五日後──。

 先野は調査報告書を書き上げた。横塚が聞き回ったところ、ある有用な証言を得ることができた……そうである。なにせずいぶんと昔の話ということで、母子にまでたどりつくことはできなかったが、年齢的なことを考慮すると、山丸剛毅の異母妹である可能性は高い、という。

 その情報をもとに、先野は三条とともに天川ライムに会って直接問いただした。ライムは認めた。

 書いた報告書を依頼者のマネージャに見せ、あとはTY本人に確認してもらうしかないですね、と先野は話を締めくくった。

 興信所「新・土井エージェント」の面談ブースで、依頼者は驚きを隠せない。

「その話、もちろん口外しませんよね?」

 TYに隠し子がいた、という事実である。山丸剛毅が会っていたのが異母妹と知って、別の意味でスキャンダルに発展しないかと危惧するのも当然だろう。

「それは約束しますよ。依頼者の情報はどんなことがあっても口外しません。信用なさって結構です」

 先野は断言する。探偵なるもの、口が固くなくては務まらない。

「生活費についてはTYさんが面倒を見てくれているせいで困窮せずにすんでいるのが救いでしょうね。ともかく、調査は致しました。それでどうされるかは、お客様次第です」

「そ……そうですな……」

 空調が利いているにも関わらず額に汗の玉を浮かべているマネージャは、

「ちょっと社内で検討することにします」

 と、難しそうな表情で。

「それがよろしゅうございましょう」

 どこか面白がっているような先野の口調である。

 依頼者が帰ると、同席していた三条は初めて口を開いた。

「先野さん、今回の案件、どう見ますか?」

「どうって……?」

「なんだか都合が良すぎるように思いませんか?」

「そうか?」

 先野は、山丸剛毅の密会相手が実父の隠し子だという推理が当たって気分がいいせいか、不自然だとは思わないらしい。

 ライムの母とも面会していた。ライムの母親だと名乗る女と会ったとき、これも魔法で出現させたのだろうかと、三条は相手の顔を無遠慮にジロジロと見てしまった。この案件に関してはなにもかも信じられない気持ちだった。

「久々にすっきりした気分だぜ」

 すがすがしい表情の先野の横で、三条はかぶりを振る。

「三条さん、今日はなんかへんだよ。こんなに証拠がそろってて、なにを疑うんだい?」

 そのとおりだ。疑念の余地はどこにもない。先野の態度は当然だと言えた。もし自分が先野の立場なら、きっと同じような報告をしただろう。

 先野は原田翔太に声をかける。

「ハラショー、昼飯に行こうぜ。きょうは奢ってやる」

 地図を広げて調べ物をしていた後輩は、

「あざーすっ、ゴチになります!」

 勢いよく席を立つ。

「三条さんも来るかい?」

「いえ、わたしはいつもお弁当を作ってきているので」

「あ……そうだったな。わりぃ」

「いえいえ、気にしないでください」

 事務所を出ていく二人の男を見送って、三条は肩をすくめる。

 窓の外は快晴で雲一つない。今日も暑そうだった。



【誰にも言えない秘密の隠し子?】(了)

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