表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
しんどい興信所の超常探偵  作者: 赤羽道夫
花嫁の夢を見ていた
80/231

手がかりを探して

 失踪したその女──桃崎杏南ももさきあんなの行方を捜す。

 人捜しはよくある依頼であった。

 調査は、まずは依頼者の自宅に行き、手がかりを見つけるところから始まる。不明者が残したさまざまなものから足跡をたどるのである。

 依頼を受けるとき、担当する探偵が一人であったり二人であったり、あるいは三人の場合もあるが、それは依頼内容や調査期間の長さによる。

 今回は先野光介ひとりであった。

 翌日、依頼者の都合に合わせた時刻に訪問した。資産家だけあって、敷地面積三百坪、二階建ての、テレビのバラエティ番組で紹介されそうな豪邸で、依頼者の宗中総一は桃崎杏南の持ち物を探し出してきてくれた。

 先野の予想どおり、さまざまなものがあった。化粧品や衣類や小物、買い物のときのレシートなどなど……。警察に捜索願を出してもなかなか見つからないのは、こういった「家宅捜査」ができないからなのだ。その点探偵なら、もっと親身に力になれた。

 絵画や磁器などの高価そうな調度品がこれ見よがしに置かれた応接室で、先野はそれらの品々を検分する。

「杏南と同居していれば、もっといろんなものがあるはずなんでしょうけれど……」

 ひとしきり調べ終わったが、個人を特定できそうなものが出てこなかったことに、宗中は申し訳なさそうに表情を曇らせた。

 確かにそうであった。白いクロスのかかったテーブルの上に置かれた彼女のものと思われる品々は、点数が少ないうえに、保険の通知はがきや各種請求書など、個人特定につながりそうな、いっしょに暮らしていればありそうなものはまったくなかった。宗中とのデート中に買ったものもあるが、それは調査対象外だ。

 しゃがみこんで検分していた先野は立ち上がると、顎を右手で撫でてそれらを見下ろす。同居していなかったとはいえ、結婚の約束までこぎつけたのだから、それなりに私物が残っているはずだと踏んだのだが。

「桃崎さんの自宅へは行かれたんですよね?」

 不意にそう問う。

「はい、もぬけの殻でした……」

 まるで彼女がこの世から消滅してしまったかのように、宗中は背を曲げて肩を落としている。今回のことは精神的に相当こたえている様子であった。結婚を決意して先妻と離婚までしたのにすべてがご破算になってしまい、子供に恵まれなかったこともあって広い家がいっそう空しく感じられて。

「引っ越しされてしまっていた、ということですよね……」

 先野は、引っ越ししたから別れることになったのかな、と思う。なんらかの事情で遠方、たとえば外国とかに引っ越さなくてはならなくなり、そしてなんらかの事情でそれを伝えることができず、別れ話も切り出せなくて──。

(いったい彼女になにがあったというのだろう?)

「そこへ行ってみます」

「えっ、でも……もうなにも残ってないですし……」

「まぁ、まかせてください。私は探偵です」

 先野は誇らしげに胸を張った。名探偵でありたい、という表れであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ