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しんどい興信所の超常探偵  作者: 赤羽道夫
約束の地に行く方法
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闇のなかの真実

 報告書を片手に、先野は窓村邸を訪れていた。

 前回と同じ居間に通され、夫人と長男次男、弁護士を前に、帽子をとって一礼する。やはり、というか、三男の優元は欠席していた。

「どうも、今回はごくろうさまでした」

 長男・竜栄がねぎらう。

「恐れ入ります。さっそくですが、これが今回の報告書です」

 A4の綴じられた冊子を黒檀のテーブルにそっとおいた。竜栄が手に取る。

「舞瀬村の廃校になった小学校の運動場を、何人かよって共同所有しておりました。共同所有された方々は全員亡くなられておりましたが、遺族が相続しておりまして、合意があれば売却も可能ですが、評価額は、おそらく数十万といったところでしょう」

 大した価値もないとわかって、一同はため息を押し殺す。

「父はどうしてこんな無価値な土地を優元にやるって言い残したんだ?」

 法務局でとってきた登記簿の写しを確認しながら、竜栄は腑に落ちない。

「そこまでは当方といたましても……」

「いや、いい。土地の所在がわかったんだ、それでじゅうぶんだ。どうも、お手数をかけたね」

「いえ、仕事ですから」

「そういえば、暗号みたいなのがあったでしょう。あれの意味はわかったんですか?」

「いえ、わかりませんでした」

「親父は半分ボケてたんだよ」

 次男・剛覇は辛辣だった。身内ながら容赦がない。

「おれはもうどうでもいい。売っても数十万だなんて、手続きに動くだけ損ってもんだ。優元が好きなようにすればいいさ」

「その土地の扱いについては、私が責任をもって対処します」

 弁護士の蜜山が胸を張る。おそらく窓村グループの顧問弁護士としてかなりの顧問料をもらっているのだろう。その報酬に見合う働きをしないと首を切られるだろうからと、張り切っているようである。

「そういえば、優元さんは、今日はおいでではないんで?」

 先野は聞いてみた。知ってはいないだろうな、と思いながら。

「連絡がないんです。もともと変わり者だから。気まぐれなんですよ」

 竜栄は、優元のことを内心、面白くないと思っているのだろう。口調にトゲがある。巨大グループを背負う重みとは縁のない弟に対するひがみが見えた気がした。

「そうですか……。では、私はこれで──」

 先野は立ち上がる。もう、用は済んだ。

「本当にどうもご苦労さまでした」

 玄関まで見送りに来てくれたのは、夫人だけだった。



 路上駐車していたクルマの助手席に乗り込んだ。運転席では三条愛美が待っていた。

「きみの言ったとおりに説明しておいた」

「お疲れさまでした」

「余計なことは一切言わず、それで納得してくれたよ」

「よかったですね。一件落着です」

「まぁ、依頼についてはそうだが……」

 先野は奥歯にものがはさまったような、どうにも割り切れない思いで気持ちが悪かった。

「きみの見たことは、どう解釈すればいいのだろうなぁ…」

 シートベルトを装着する。

「おれも目の前で二人が消えてしまうところを見ているのに」

「出発しますよ」

 三条は先野の気持ちに取り合わない。

「きっとなにかのトリックがあるはずなんだ。そのタネがわからないだけで──」

 ウインカーを出して、ゆっくりとアクセルを踏み込む三条は、

「トリックがわかったら教えてください」

「クールなやつだな。あんな体験をして、よく落ち着いていられるもんだ」

「先野さんこそ、らしくないですよ。いつも冷静沈着が先野さんのスタイルなんでしょ?」

「そのつもりだが、今度ばかりは動揺するぜ。にしても、あの二人、あのあとどうなったんだろうな……」

「穏やかな感じではなかったですから、心配ですよね」

 異世界でどんな攻防が展開されたのか、三条は想像するしかない。優元とミヤコは個人的な関係を超え、互いに背後になにか大きなものを背負っているような気もする。もうそうなると、第三者が首をつっこむレベルの話ではない。だが願わくば、平和的解決がなされるように──。

 三条は、助手席で難しい表情で考え込んでいる先野にチラッと視線を送るとクスッと小さく微笑み、会社に向けてクルマを走らせる。次の依頼が待っていた。



【約束の地へ行く方法】(了)


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