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しんどい興信所の超常探偵  作者: 赤羽道夫
約束の地に行く方法
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謎の少女

 気持ちを切り替えるべくデスクに向かって大股で歩いていると、すでに出勤していた三条愛美が声をかけてきた。

「おはようございます、先野さん。女子高生にまとわりつかれてるんですって? ダメですよ、未成年に手をだしちゃ」

 どうやら原田がもう三条にしゃべったらしい。口調から、真面目に忠告しているわけではないのはわかったが、先野は憮然と振り返る。

「ハラショーめ、いいかげんなことを吹いてまわりやがって」

「どういうことなんです? 先野さんが女の子に言い寄られるワケないのに。あしたは雪かしら」

「人の恥部をはっきり言ってくれるじゃねぇか。おれにもさっぱりわからない。ハラショーから聞くまでそのの名前も知らなかった。いったいどうなってんだか……」

 本心を吐露した。人をからかって面白がっているだけのタチの悪い所行だと片づけたいところではあるが。

「いっそのこと、あの女子高生がだれか調べてみたらどうですか?」

「そういや、高校生なのか?」

「それも含めて調査するってのは?」

「今は本業の調査活動中だ。余計なことをしている暇はない」

「あら、そうですか」

「なんか、おれが年中ヒマをこいてるような口振りだな。ま、余裕があるのはたしかだが……ともかく、今の案件のカタがついてからだ」

 先野は会話を打ち切り、自分のデスクの引き出しから「山田村リスト」をとりだし、しばし眺める。そして、きょうどこを回るかを決めると、事務的の壁の「社用車使用一覧」のホワイトボードに名前と行き先と使用時間などを書き込み、磁石フックにかけてあるキーをとる。トヨタ・プリウス。

「じゃ、行ってくる」

 いつもの白のスーツのまま、事務所を出ていった。



 が、その日も空振りであった。

 県内の候補地は調査し終え、近隣の県まで調査した。だが五カ所も当たってみた結果は成果なし。疲れ果てて事務所に帰ってきた頃には夜になっていた。明日はもっと遠い候補地へ出向くことになると思うといささか気が重い。

 事務所の近く、会社が借りている駐車場にプリウスを入れようとし、思いがけないものを見て反射的にブレーキを踏んだ。車体がガクンと揺れて停止した。

(なんだ?)

 疲労のために幻覚でも見たか、と思って目を見開いてヘッドライトで照らされた駐車スペースを凝視した。

 うずくまっていた人影が動いて立ち上がる。ミヤコだった。

 先野はドアをあけてクルマを降りる。

「なにをやってんだ、こんなところで?」

 びっくりである。日はとうに暮れ、時刻は八時をすぎようとしていた。まさかこんなところに人がいるとは思いもよらない。

「おかえり。捜し物は見つかった?」

「……………」

 先野はあきれてとっさに言葉も出てこない。

「ミヤコさん、といったっけ。ちょっと確認しておきたいんだが、今朝からずっとここにいたわけじゃないよな?」

「うん。ちゃんと家に帰ったよ」

「じゃあ、なんでこんな時分にこんなところにいるんだ?」

 ずっとここらへんにいるわけでないとホッとしたが、それでもこの行動は常識外れだ。

「いま、どこかの場所を捜してるんでしょ?」

 ──なんてこった。先野は夜空を仰ぐ。原田め、余計なことをしゃべりやがって。

「それには答えられない決まりになってるんだ。それよりおれの質問に答えてもらおうか」

「探偵さんを待っていたの」

「おれをか?」

「そう」

 ミヤコはうなずく。

 先野はずれたソフト帽を直す。ミヤコの考えを図りかねた。

「なんで?」

「わたしもそこへ行きたい」

「行ってどうする? きみになんの関係があるんだ?」

「連れてって」

「遊びじゃないんだぞ」

「遊びに行くわけじゃないよ」

「ともかく、これはこっちの仕事なんだ。連れて行くわけにはいかないよ。さ、そこをどいて。クルマが入庫いれられない」

「ぶう!」

 ミヤコは不服そうに頬を膨らます。まるで子供だ。いや、子供なのかもしれない。年齢は知らないが高校生だともいうし。聞いたりもしないが。

 先野は、ミヤコが駐車スペースから離れたのを確認してクルマを入庫させる。エンジンを止め、キーを持ってクルマを降りる。

「とにかく、今日はもう遅い。若い娘がこんなところにうろうろしてたら……おや?」

 つい今しがたまでいたはずのミヤコの姿がどこにもない。帰ってしまったのだろうか……。クルマの陰にでもいるのかと回ってみたが、どこかで見た覚えのありそうな野良ネコが一匹いただけだった。

「不思議な娘だな……」

 見返すネコの視線から目をそらし、先野は首を傾げてつぶやく。あしたもミヤコがどこからともなく現れそうな気がした。



「あっ、先野さん、お客さんが来てますよ」

 事務所に入るなり、原田将太が声をかけてきた。白の上下を着ているせいで、すぐにだれが帰ってきたかわかってしまうのだ。

「お客さん? こんな時間に?」

 ミヤコならさっき会ったばかりだから違うよな、と首をひねる。

「面談コーナーの三番です」

「そうか、わかった。すぐ行く。それはそうと、おまえ、部外者になんでもかんでもベラベラと……いや、それはあとでいいか。三番だったな」

 きびすを返し、先野は面談コーナーに移動する。事務所の横に併設されたパーテションで区切られた面談コーナーは、依頼者の相談を探偵が直接受けるための場所だ。一番から六番まであり、壁にそって並んでいた。それぞれにテーブルと四脚のイスが設置されていて、毎朝当番で社員が掃除していた。

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