優しい彼は少し変わり者でも
興信所からの報告を受けて、理山早奈は決断する。
──特定の浮気相手はいないのなら、結婚してもいいかもしれない。
女遊びをしているんじゃない、輸入雑貨を取り扱っているからマーケティングが必要なんだ、という彼の言葉を信じたい。ともかく、カレはわたしには誠実に接してくれている。
同棲を決意し、新しく部屋を借りた。二人で住める3DKのハイツ。
同棲が始まっても、パロッティーニの態度に変化はなかった。やはり早奈だけを大事にしてくれていたし、そこは疑いようがない。
だがパロッティーニは、態度も変わらなかったが生活スタイルも変わらなかった。日中にデートぐらいできるんじゃないか、と期待はしていた。ところが、カレが土日でも日中は出ていかない理由がわかった。
一般の企業に勤める早奈は昼間は勤めに出ていて夜に帰宅するが、パロッティーニ裕也はその逆だ。海外との取引をするため昼夜逆転の生活。ただ、外出することもなく家でネットでの仕事をしているので、顔を合わせないことはない。
ひとり朝食を終えて、早奈は寝室に目を向ける。そこにあるベッドは早奈のもってきた1台だけ。今も、パロッティーニはベッドの横に置いてある箱のなかで眠っている。
どうしてこんな棺桶みたいなところで眠るの? と尋ねると、昔からここで寝るのが落ち着くのだと言うので、「変わった人だな」とは思ったものの、それ以上はなにも言わず好きなようにさせている。
早奈は化粧を終え、スーツに着替えて、出勤の準備がととのう。
「じゃ、行ってきます」
箱の中で青白い顔で眠っているパロッティーニの頬にキスをすると、今夜の晩ごはんは餃子を作ろうかな、と早奈は思う。マーケティングだといって毎晩女の子に会ってから帰ってくるので、早奈が帰宅してから晩ご飯を作って食事が遅くなっても一晩中起きているパロッティーニには問題ないとのこと。
わたしはニンニクが苦手なので、ニンニク抜きの餃子ね。ニンニク抜きでもおいしく作れる自信はあるから。
とりあえず早奈は、今は幸せだった。
【恋人は夜にいきる男】(了)




