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しんどい興信所の超常探偵  作者: 赤羽道夫
カネの成る木をもつ女
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ボディガードは気が乗らない 調査期間は半月

 ストーカーがいるという前提で、二十四時間の監視体制をとるとなれば、先野光介と三条愛美だけでは足りない。そこでもう1人、原田という探偵が調査に加わった。

 期間は最大半月。ストーカー行為の証拠を押さえて警察に通報する、というのが一般的だ。だいたい半月あれば解決した。

 しかし先野はほとんどやる気が起きない。結果が見えているから。それでも仕事である以上はやらなければならず、チープな葛藤にブルーな気分だった。



 一日目。

 先野は蒼宮麗亜のマンションを、彼女立ち合いのもとで盗聴器、隠しカメラの捜索を三十分ほどした。三十階建てタワーマンションの十二階にある麗亜の部屋は、高級品がさりげなく散見されたがきちんと片づけられており、捜索しやすかった。だが予想通り怪しいものは発見できなかった。

 その後は、蒼宮麗亜のボディガードとして、彼女の行動に密着する。その日の午前中はスポーツジムで汗を流す予定だ。

 彼女自らが運転するジャガーを社用車である白の軽自動車で追いかけた。ちなみにこの社用車には、架空の会社のデカールがいくつもトランクに入れられていて、それを車体にとっかえひっかえ貼り付けて尾行用のカムフラージュとした。今はなにもつけていない。

 ボディガードなら、浮気調査のように調査対象に気づかれずに尾行する、というわけではないから大胆に行動できたが、かといって依頼者にぴったりと寄り添って……ということもできなかった。プライベートは尊重しなければならないのだ。

 JRの駅の近くにある、プールも備えた規模の大きいスポーツジム。

 鮮やかなハンドルさばきで狭い駐車場にジャガーを入れると、麗亜は駐車にてこずる先野を待つことなくビルへと入ってゆく。先野があとからスポーツジムの受付に着いたときには、麗亜はもう更衣室に移動していて姿が見えなかった。

 先野はジムの奥までは入らない。

 ターゲットを張り込むときはジムの入口からさほど離れていない、それでいて人がそこにいても不自然に見えない場所で見張るのが普通だが、今日はジムのロビーで堂々とベンチにすわり、そこで麗亜が出てくるまで待つ。帰るときには声をかけてくれるので、よそ見をしていても平気だ。

 だからといって居眠りはできない。

 ストーカーが近づいてこないか、目を光らせていなくてはならないのだ。

 ただ、最初から「ストーカーなんかいないだろう」と思っているから、今ひとつ身が入らない。それでも仕事は仕事である。ストーカーなどいない、ということを証明するためにも真面目に取り組む。

 スポーツジムに出入りする客に不審な人物がいないかどうか、男女・年齢に関係なく、気取られないよう自然な様子で観察する。

 しかし平日の午前中では、スポーツジムに来る客はそれほど多くない。

 二時間がすぎて麗亜がでてくるまで、ジムに出入りした客は十人に満たなかった。その中にストーカーだと疑わしい人物はいなかった。普通の客だ。スポーツジムに通うくらいなのだから、筋肉質で、さわやかな、あるいはいかつい顔をした男や、贅肉を削ぎ落とした肉食獣を思わせるシャープな体型の女など。もっとも、年齢層は若干高めだ。働き盛り(という言葉は先野は好かなかったが)の若者は、こんな時間に暇していない。

 シャワーをあびてさっぱりした麗亜は、ロビーのベンチで待つ先野の横に腰をおろした。石鹸の匂いがした。

「それらしき人はいたかしら?」

 先野のほうを向かずに、小声で尋ねた。

 いや、と先野も短く返答する。

「いなかったですね」

「わたしも気配を感じなかったわ」

 麗亜はスポーツドリンクの缶をあけ、少しずつ飲んでいく。

「ジムの次の予定はなんですか?」

「もちろん、昼食ですわ」

 時刻は午後一時をすぎていた。先野はうなずいた。


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