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しんどい興信所の超常探偵  作者: 赤羽道夫
カネの成る木をもつ女
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ストーカー 誰かに監視されているように感じる日々

ここ最近、何者かの視線を感じる。


蒼宮麗亜あおみや れいあは、不安に思い、探偵にストーカーの調査を依頼する。


ボディガードを任された興信所の探偵、先野光介たち3人が張り込むのだが、ストーカーらしき人物は現れない。

最初から彼女の妄想ではないかと疑いながら調査を続けると……。


 ここのところ、誰かの視線を感じる。

 最初、それは気のせいではないかと思っていた。

 高齢の資産家の愛人として寵愛をうけていたが、その彼も昨年末に亡くなり、蒼宮麗亜あおみやれいあは新しい恋を探していた。どこかに金持ちの男はいないだろうか──。

 エステ通いで美貌を保つのに余念のない牝豹のような麗亜に引き寄せられる男は多かったが、いくら人恋しくても金持ち以外はお断りだった。

 そんなとき、カレが現れた。いくつもの会社を経営しているという事業家で(当人の弁)、多少風変わりなところはあるが(五万円のお小遣いを全部五百円玉でくれたり)、金持ちというのは得てして変わり者が多く、麗亜はいちいち気にしなかった。

 ところが、その新しいカレとつきあい始めたのと時を同じくして、ときどき何者かの視線を感じるようになった。しかし、振り向くと誰もいない。

 街角で視線を集めることはしばしばあったが、それはいつも瞬間的なものであり、長時間──といっても数分であるが──続くことはない。だがここのところ感じるのは、まるで誰かにつけられているような、そんな粘りつくような視線なのだ。

 けれどもストーカーというには具体的な対象が見えない。

 カレには相談しなかった。余計な心配はかけたくなかった。これがきっかけで別れを切り出されたらコトだと思ったから。

 気持ちの悪い数日が経過した、そんなある日──。

 デパートでの買い物を終えて、地下の駐車場におりたときだった。

 デパートのVIPカードで買ったシャネルの化粧品を入れたペーパーバッグを下げて、資産家に生前に買ってもらった黒のジャガーのドアを開けようとして、それに気づいた。

 リアウインドーの端に、黒い小さな物体がくっついていた。虫かなと思ってよく見ると、金属製の人工物だった。

 まさか、GPS?

 指でつまんでよく観察する。GPSかどうかは判断できなかったが、見覚えのない機器に背筋がぞっとした。

 その足で最寄りの警察署に駆け込んだ。

 署の面談コーナーで応じてくれたのは、二人の巡査だった。一人は若い男性で、もう一人は中年の婦人警官だった。

 女同士なら理解してくれるだろうと思ったが、それは甘かった。

「でも、どんな人かはわからないんでしょう?」

 婦人警官の眼鏡の奥の目が氷のように冷たかった。

「詳しく調べてみましたが、これはただのマグネットでした。なぜクルマに取り付けられたのかはわかりませんが、実害はありません。ただの子供のイタズラでしょう」

 若い男性巡査もめんどくさそうな感情を隠そうともしない。自分は他にも仕事を多く抱えていて忙しいのだ、こんな些時にはかかわっていられない──と言いたいのが透けて見えた。

 麗亜は根気よく説明するが、説明すればするほど論理性に欠け、感情を理解してもらえなかった。

 妄想ではないか、自意識過剰だ、と警察は結論した。

 証拠不十分。警察は、この段階では危険性は少ないと判断し、動かなかった。

 持っていき場のない憤りを抱えたまま、麗亜は警察署を後にした。

 ──絶対に気のせいなんかじゃない!

 ストーカーが誰かはわからなかったが、そう確信していた。

「わたしは狙われている。こんなにも美しいわたしなのだから、狙われるのもあり得るだろう」

 警察は動かないし、このままでは気が狂ってしまう。

 麗亜は不吉な予感がして仕方がなかった。


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