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しんどい興信所の超常探偵  作者: 赤羽道夫
見る夢は異世界かもしれない
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謎の男

 郊外にある国道沿いのリサイクルショップの駐車場に入った。

 この周辺では比較的規模の大きな店で、取り扱っている商品も多岐にわたっている。一階は本や音楽・映像ソフト、二階がカメラやAV機器や楽器、三階がブランド品や貴金属とフロア別に取り扱う商品が分かれていた。

 クルマを降りると、わたしは店内の一階の受付カウンターに行き、青いエプロンをした背の高い若い店員に写真を見せる。

「あの……この店に、こういうものはありますか?」

 店員は写真をじっと見つめと、

「ああ、これは、グランドマスターのメダルですね……。これは人気があって、なかなか入荷しないでしょうねぇ。滅多に手に入らないですから、この店にも今のところ、ないです。すみません」

「そんなに値打ちがあるもんなんですか……」

「はい、小学生の間では爆発的な人気アイテムなんですよ」

 全然知らなかった。うちには子供もいないし、知らなくても当たり前なのだろうけど。

「よく、当店うちにも問い合わせが入りますよ。

「そうなんですか……。ちなみに、これを買おうとすると、どれぐらいの値がはるんですか?」

「まぁ……いろんな種類があるので、モノにもよるんですが、シルバースターだと、ネットで十万円の価格がついたというのもありましたね。さすがに当店うちではそんな法外な値段はつけませんが、それでも数万円はしますよ」

「はあ……」

 ちょっとついていけない世界だった。小学生だけじゃないだろう、それにハマっているのは。どう考えても転売屋の餌食になっている。割りを食うのは、本当に欲しがっている子供たちだ。カネに醜い大人の影が見えて、呆れてしまう。

「どうもありがとうございました」

「いえ、またどうぞ」

 あれば現物を見せてもらおうと思っていたし、キープしてほしいと頼まれたが、ないとなれば、もうここに用はない。

 LINEで夫に結果を知らせると、わたしは引き上げようとした。

 が、ついでに店内を見て回ろうと思いなおした。客もそれほど大勢いるわけでもなし、ウインドウショッピングをするつもりで、どんなものが売られているのか見たっていいだろう。

 階段で二階に移動した。高価たかそうな一眼レフや、マニアックなオーディオ機器、業務用のスピーカー、もう生産終了してしまっている規格のメディア再生装置……。それらがガラスケースの中に大事そうに入れられていた。

 夫が見たら欲しがりそうなものばかりだ。わたしも少しばかり夫の趣味を見て知ってはいるものの、それほど知識はなく、聞かせてくれる音楽や、見せてもらった映像を通して触れるだけだ。どちらかといえば男性の趣味だろう。

 さらに三階にまで足をのばした。

 三階はブランド品や貴金属がおかれている。わたしもすごく興味がある。が、もちろん、そんなにほいほい買うほど無節操ではない。

 ガラスケースに収まるバッグやアクセサリーはすべて中古品で、元は誰かが所有していたが事情があって手放したものだ。前の持ち主はどんな思いでこれを手放したのだろうかと、新品よりは格安だとはいえそれなりの値札をつけられた商品を眺めつつ、ひとつひとつに愛憎あふれるドラマがあったのかもしれないなどと妄想してしまう。

 つい時間を忘れて眺めていると、ふと、一人の客が目に入った。その男性は白いスーツを着ており、場違いな雰囲気が強烈に漂っていたので目についたのだ。

 しかしちらりと見ただけで、わたしはすぐに視線をはずした。本人が欲しいのではなくプレゼントとして物色しているのかと思ったが、中古品を贈り物にするのもへんかな、と思ったが、他人事なので深くは考えない。

「ここは、あなたの世界ではない……本来の世界へ移行しなければならない」

 すると、そんな声が耳に届いた。

 えっ?──顔を上げると、一瞬前までそこにいたはずの客の姿がなかった。

「気のせい……?」

 今の言葉は、あの男性客が発したのだと思ったけれど……。

 でも、なに? あなたの世界ではない?

 はっきりと聞こえたその意味がよくわからない。意味はわからなかったが、その声はずっと耳に残って、わたしの心は落ち着かなかった。単なる気のせいにしたかった。



 翌日、事件は無事解決した。

 詐欺にあったお金は取り戻すことができた。

 他の詐欺事件とは犯人が別で、騙し取ったカネは仮想通貨に化けていた。仮想通過の値が上がったところでもう一度現金化するつもりだったのだという。仮想通貨なら何倍にも膨らむ可能性があるし、マネーロンダリングにもなる。どこまで強欲なのかと呆れるが、仮想通貨が急騰しなければ塩漬けのまま置かれるから、取り戻すことは可能となる。

 じゃあ、あのレアアイテムのメダルは、なんの関係があったのかというと、いくつかある可能性をつぶすための調査ということらしい。もしかしたら、メダルに数千万の値をつけて取引するとか……いや、それはないか。

 夫の頭脳でどんな思考が機能はたらいているのか、わたしにはよくわからないが、ともかく、事件は解決した。

 ついでながら、他の詐欺師も警察によって検挙された。

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