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しんどい興信所の超常探偵  作者: 赤羽道夫
見る夢は異世界かもしれない
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詐欺事件の真相を追って

 目が覚めたとき、窓の外はすでに明るくなっていた。枕元の時計を見ると、もう七時をすぎていた。アラームが鳴ったのに、寝ぼけて止めてしまったのかな。

 起きる直前まで夢を見ていた。でもどんな夢だったか覚えていない。

 わたしの夫で私立探偵である先野光介が殺人事件の真犯人を見事に言い当て(まさかあの女が殺し屋の手先だったとは)、警察の事情聴取から逮捕に至ったのが先月のことだった……そのことに、なにかがひっかかった。

 さきほどまで見ていた夢に関連するような気がして。もちろん、ただの夢だとうっちゃってもかわないのだろうが、なにか重要なことを忘れているような気がしてならない。

 夢と関連があるような気もするのだが、どんな夢を見ていたのかまったく思い出せない。夢を瞬間的に忘れてしまうのはよくあることだが、そんな歯痒い気持ちのまま横を見ると、ベッドで眠っている夫がいた。

 特殊詐欺事件を調べていて、昨夜は遅くに帰ってきた。疲れているのだろうからと、わたしは夫を起こさないよう静かにベッドを出る。

 着替えてキッチンに入って朝食作りにとりかかった。

 味噌汁にアジの干物を焼いて、温泉玉子も。

 詐欺事件の犯人がどこに隠れているのか警察も追っているが、まだ居場所が特定されていなかった。同様の手口を使って詐欺をはたらくグループがいると踏んで捜査しているらしいが、それとは別に被害者からはぜひお金を取り返してほしいと依頼されて、警察にも足を運んだりしていた。

 詐欺事件でお金が返ってくることは皆無だ。なぜなら、もうすでに盗られたお金は使われてしまっているから。たとえそれが何千万円であっても、借金の返済とかできれいになくなっているだろう。

 でも夫は依頼を受けた。ということは、お金を取り返せる見通しがある──のだろう。

 となると、すでに犯人の行動がある程度予想できているのかもしれない。そこは教えてはくれないが、確実な仕事をモットーとする夫が引き受けたからには難事件だと思える案件でも、なにかしらの見通しがたっているのだろうと思う。なにしろ、評判高い名探偵なのだから……。

(名探偵……)

 まただ……。夫が腕利きの探偵で、難事件に取り組んでいることに、どうしてこんな違和感を覚えるのだろう……?

 わたしは眩暈めまいに似た感覚を味わうが、気のせいだと振り払う。

 朝食ができあがるころ、夫がダイニングに現れた。すでに身支度は整えている。グレーのワイシャツにネクタイはストライプ。

「おはよう」

 でも、あくびをひとつ。寝が足りない様子で、夫はテーブルに置かれた新聞を手に取る。

「おはよう。今日はゆっくりなの?」

「ああ、新聞に目を通す時間はあるよ」

 新聞を広げ、記事に目を通す。

 その間、わたしはできあがった朝食を配膳する。味噌汁の香が立ち上った。

 夫は読んでいた新聞をたたみ、

「それじゃ、いただきます」

 用意した朝食に手をつける。

 わたしがテーブルにつくと、

「いきなりだけど、今日、行ってきてほしいところがあるんだ」

 夫は味噌汁の椀を片手に、話を切り出した。

「どこへ? なにをしに?」

 夫の仕事の手伝いをすることに、わたしは誇らしかった。名探偵の助手なのだ。大事な仕事で、やりがいがある。

 夫は朝食を残さず食べ終えると、一枚のメモを差し出してきた。

「ここだよ」

 地図が印刷されていて、ボールペンで赤い丸印が入っていた。

「このリサイクルショップに行って、これが店頭に置かれていなかを見てきてほしいんだ。もしあったら、キープしてきてほしい。そのとき断られるかもしれないけど、そのときはすぐに知らせて」

「はい……」

 メモとは別に出された写真を見ると、写っているのはメダルのようだったが、なんかよくわからない。記念硬貨? 外国のコイン?

「これ……なにか重要なものなんですか?」

「念のために行ってもらうだけで、たぶん、置いてないと思うんだけど」

「そうなの……。でも念のためと言っても、あなたが行けというのだから、行ってくるわ」

「うん。悪いけど、頼むよ」

 じゃあ、行ってくる、と言って、夫は外出していった。どこでなにをしてくるのか、わたしには想像もつかないけれど、なにも心配はしていない。なにしろ名探偵なのだから。

(名探偵……)

 夫を送り出し、家の中にひとりになって、わたしはまたも違和感にさいなまれる。部屋が急に自分の家ではない、他所の家のなかにいるような……。

 疲れているのかな、と思ったけれども、疲れる理由がなかった。

 わたしは、ともかく、頼まれたことをやるために、家事(朝食の後片づけや洗濯)を手早くすませ、メモにあったリサイクルショップに行ってみることにした。

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