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しんどい興信所の超常探偵  作者: 赤羽道夫
すごい霊媒師をさがして
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最強霊媒師の手がかり

 そこは人里離れた山の中であった。周囲は森で、県道からはずれた道は細く曲がりくねって、いったいどこへ続いているのやら……。見回すも、視界に人家はなく、すれ違う人もいない。サルにでも遭遇しそうな場所だった。

 特急列車に揺られること一時間半。そこからレンタカーを走らせること二時間。カレンダーでは春とはいえ、こんな標高の高い場所ではダウンジャケットが必要なぐらい寒い。

 先野光介が、わざわざこんな遠いところまでやってきたのには、もちろん理由がある。

 それは前日のことであった。

「たしかに幽霊を調伏しましたよ」

 不動産屋から紹介された詠川よみかわというその霊媒師(本名かどうかは不明)は、対面する先野に向かって、はっきりとそう言った。すっかり禿げ上がった頭のため実年齢以上に老けて見え、そのせいか修行僧のような、なんとなく信用できそうな印象を与えた。

 郊外の住宅地。こんな閑静な場所に霊媒師が住んでいるとは意外であったが、普段着で出てきた詠川は、まるで霊媒師であることを隠しているかのように思えた。

 メモを取る先野に、とあるマンションの一室で首吊り自殺した女の霊を成仏させた、と詠川は温和な表情でその当時のことを詳しく教えてくれた。

(これは期待できるぞ)

 そう思って先野が依頼者のことを話すと、霊媒師は急に押し黙り、

「そういうことでしたら、あの人を紹介しましょう」

 などと、どういうわけか、べつの霊媒師のことを話すのだった。その口調はへんに重苦しく、先野は疑問を口にした。

「他の霊媒師を紹介するなんて、いったいどういうことなんですか? あなたもちゃんとした霊媒師なんでしょう?」

 幽霊の調伏を話してくれたその様子は、経験した者でなければ語れない内容だった。少なくとも先野はそう感じた。

「たしかに、私は幽霊を成仏させました。しかし、おそらく、その程度の能力の霊媒師は求められてはいないでしょう。もっと高位の霊媒師でないと──」

「あなたでは力不足だとおっしゃるんですか……?」

「そうです……」

 詠川は重々しくうなずいた。専門家故、その言葉には信頼できるものがあった。

 先野は思案する。開いたシステム手帳をボールペンの先で何度かたたいた。そして迷った末、

「わかりました。あなたがそこまでおっしゃるのなら、そこを訪ねてみます」

「ただし、その霊媒師については、あまりおおっぴらにしないでほしい」

 が、紹介しておきながら、詠川は注文をつけた。先野が怪訝な目で、

「……? と、いいますと?」

「彼女は世捨て人のような生活をしています。その強い能力故、過去に差別的な扱いを受けたことがあるんです。ですから、依頼者にもそのことをじゅうぶんに説明してあげてください」

「わかりました……」

 自分たちとは違う、となると途端に攻撃してくるのが人間というものだ。理性でその性質を抑えられたらいいが、理解できないものをやたらと怖がって排除しようとしていきすぎた行動に出られたら、どうにもならない。

 先野はメモをとり、深くうなずいたのだった。

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